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腎臓がんの免疫機構に関する理解を深める(1)

新たな免疫療法や標的を特定するため、腎腫瘍の単一細胞(シングルセル)解析に焦点を当てた二つの研究論文

過去20年間で、免疫療法は、進行腎がんに対する主要な治療法となってきた。現在、この治療法は標準治療の一部となってるが、すべての患者に効果があるわけではなく、ほとんどすべての患者は、最初にどれだけ反応を示しても、時間の経過とともに治療抵抗性を増していく。腎がんの疾患進行や治療法への反応には、免疫システムが重要な役割を果たしている。そのため、この分野の基本的な課題は、この病気の根底にある「免疫回路」を理解することである。

ダナファーバーがん研究所と、マサチューセッツ工科大学およびハーバード大学のブロード研究所の研究者らは、Cancer Cell誌で公開された二つの新しい論文において、シングルセルRNAシーケンシング解析という新しい技術を用いて、免疫療法に反応して腎がんの微小環境が変化する様子を明確に描き出した。研究者らは、この研究によって新しい薬物療法での潜在的標的が示されると考えている。

「腎がん患者の治療には標準治療法がありますが、多くの患者が既存の治療法に反応しないため、新たな標的を発見する必要があります」とEliezer Van Allen医師は述べている。同氏は、ダナファーバーがん研究所の腫瘍内科医、ハーバード大学医学部内科学准教授、ブロード研究所のアソシエイトメンバー、2論文の一方の共同上席著者である。

「これらの姉妹論文は、進行腎腫瘍とその周囲の環境の生態に新たな光を当てるものです。このように理解が深まることで、研究者は新たな薬物治療の標的となり得るものを特定することができ、全体として、効果的な治療を受けられる患者の数を増やすことができるでしょう」とCatherine J. Wu医師は述べている。同氏は、ダナファーバーの幹細胞移植・細胞治療部門長、ハーバード医学部内科学教授、ブロード研究所所員、2論文の一方の共同上席著者である。

「患者の免疫システムは、がんの進行と免疫療法への反応の両方をコントロールする上で重要な役割を果たしています」とToni K. Choueiri医師は付け加えた。Choueiri氏は、ダナファーバーの泌尿器腫瘍ランク研究所所長、ブロード研究所アソシエイトメンバー、ハーバード大学医学部Jerome and Nancy Kohlberg教授、2論文の共同上席著者である。「なぜ治療に反応する腫瘍と反応しない腫瘍があるのかは、よくわかっていません。また、腎がんが免疫療法に抵抗性を示すようになる理由もわかっていません。この2論文は、細胞レベルだけでなく、それぞれの細胞のRNAまで掘り下げて、細胞レベルで何が起こっているのかをより鮮明に示すための大規模なチームの努力の結果です」と同氏は述べている。

免疫療法では、通常、患者に免疫チェックポイント阻害剤を投与する(多くの場合、VEGFチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)との併用)。この薬剤は、免疫システムの自己停止を阻止することで、他の不要な病原体と同様に腫瘍を攻撃できるように設計されている。しかし、免疫療法は淡明細胞型腎細胞がん(ccRCC)患者の約半数にしか効果がなく、ほとんどの患者が時間の経過とともに治療抵抗性を獲得する。

米国がん協会(AACR)によると、米国では毎年約76,000人が腎がんと診断され、それにより、年間13,000人以上が死亡している。

(2)へ続く

翻訳有田香名美

監修田中謙太郎(呼吸器内科、腫瘍内科、免疫/九州大学病院 呼吸器科)

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