術前ニボ+イピ併用が早期非小細胞肺がんの予後を改善

化学療法節約レジメンが第2相試験の主要評価項目を達成

ステージ1~3の非小細胞肺がん(NSCLC)に対する単剤および併用による術前免疫チェックポイント阻害薬療法について報告した初のランダム化第2相臨床試験により、病理学的奏効(MPR)率、腫瘍浸潤免疫細胞の増加および免疫学的記憶による評価から、併用療法が臨床的に有意な有益性をもたらすことが明らかになった。2021年2月18日、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らがこの試験結果をNature Medicine誌に発表した。

手術可能な非小細胞肺がん患者へのニボルマブとイピリムマブの併用またはニボルマブ単剤による術前療法をNEOSTAR試験で検証した。この試験で、併用群において患者21人中8人(38%)が、外科手術時の残存腫瘍率10%以下と定義される病理学的奏効を達成し、事前に規定した主要有効性評価項目の基準値を満たした。病理学的奏効は、非小細胞肺がんの術前化学療法後の生存期間の改善と相関があることが示されている。さらなる試験に向けて有望と考えられる各治療法の有効性の所定基準値は、評価可能な患者21人のうち病理学的奏効が6人以上であった。単剤療法は、治療を受けた患者23人のうち病理学的奏効が5人(22%)であり、有効性の基準値を満たさなかった。

併用免疫療法は転移のある非小細胞肺がん患者に対して承認されているが、今回の試験は手術可能な早期患者群でのチェックポイント阻害薬併用療法の役割を報告した初めてのランダム化試験である。

「限局性非小細胞肺がん患者の50%以上は、外科手術のみで治療した場合には再発します。化学療法を追加した場合でも全生存期間はわずかな改善しか得られず、毒性も伴います」と胸部・頭頸部腫瘍内科の助教でこの試験の筆頭著者であるTina Cascone医学博士は語る。「この併用免疫療法により病理学的奏効率の上昇と免疫学的記憶の誘発が可能であることが明らかになり、術前併用免疫療法は特に期待が持てます。これは、より多くの早期非小細胞肺がん患者の腫瘍再発リスクの低下につながる可能性があります」。

試験デザインと副次的評価項目

第2相単施設試験には、2017年6月から2018年11月までの間、外科的に切除可能なステージ1A~3Aの非小細胞肺がん患者44人が参加した。試験参加者の年齢中央値は66歳で、64%が男性であった。参加者は白人が84%、黒人が9%、アジア系が5%であった。ほとんどの参加者に喫煙歴があり、23%が現喫煙者であり、59%が元喫煙者であることが確認された。

術前に免疫チェックポイント阻害薬を使用する2つの治療群のうちのいずれかに患者を無作為に割り付けた。23人はニボルマブ単独で3回投与、21人はニボルマブ3回投与とイピリムマブ1回投与であった。各群を術前化学療法の既存対照群と比較した。全体として、計画どおり3回の投与治療を完了した患者が41人、試験計画内で外科手術を受けた患者が37人、追加治療後に試験外で外科手術を受けた患者が2人であった。

この試験で外科的切除を受けた37人の患者のうち、併用療法群は単剤療法よりもMPR率が高く(50%対24%)、切除時の残存腫瘍細胞数が少ない(中央値9%対50%)ことが明らかになった。また、併用療法は単剤療法よりも病理学的完全奏効率が高い(38%対10%)ことも明らかになった。中央値22カ月の追跡期間後、全生存期間および肺がん関連の無再発生存期間の中央値に到達しなかった。

毒性は、いずれの薬剤の既知の有害事象プロファイルと比較しても新たな安全性の懸念はなく、全体的に管理可能であった。外科手術までの期間の中央値はニボルマブの最終投与後31日であった。患者の一部については結節性の免疫フレア(NIF)またはX線画像上での結節性疾患の進行が認められたが、悪性疾患ではなく免疫細胞浸潤であることが結節の侵襲生検で明らかになった。

探索的解析により免疫への影響および潜在的なバイオマーカーが明らかに

切除組織の探索的解析において、多数のCD3+およびCD3+CD8+Tリンパ球、組織常在性記憶、およびエフェクターメモリーT細胞を含む免疫細胞の腫瘍への浸潤が併用療法群で高レベルに及ぶことが発見されて初めて報告された。治療への反応が良好な腫瘍はベースライン時のPD-L1発現が高かったが、腫瘍細胞にPD-L1発現がない腫瘍でも反応が認められた。

研究者らは腸内マイクロバイオームも分析し、併用療法への病理学的な反応が、メラノーマや他のがんにおける免疫療法への反応にも相関している特定の糞便性微生物の存在と関連していることを確認した。今回の試験では、免疫チェックポイント阻害薬治療はマイクロバイオームの多様性や構成に有意な影響を与えなかった。

「肺がんの術前免疫チェックポイント阻害薬への反応に腸内マイクロバイオームが関与している可能性が今回の探索的研究の結果で示唆されています」とCascone博士は語る。「免疫細胞集団と潜在的なバイオマーカーを評価し、これらの薬剤の恩恵を受ける可能性が最も高い患者を新たな前方視的試験で特定する機会を、今回の免疫微小環境の試験結果が与えてくれました」。

NEOSTAR試験はモジュール式プラットフォーム試験に修正されており、有望で新しい術前治療の組み合わせを迅速に検証して提案するために治療群を追加する機会を提供する。ニボルマブと化学療法を併用した術前療法を試験する第3群の試験結果は今年後半に出ることが予想されている。また、免疫併用療法と化学療法を組み合わせた第4群の試験も進行中である。

「NEOSTAR試験の結果により、現在試験中の術前化学療法に追加する免疫併用療法の役割を評価し、周術期における新規薬剤の研究を促進するための土台ができました」とCascone博士は語る。「これは治癒の可能性のある病気の集団です。再発リスクを最小限に抑え、患者の治癒率を高めるためにはどんなことでも行うべきです」。

NEOSTAR試験は、科学的発見を発展させて患者の命を救う臨床的進歩につなげることを目的とした共同研究MD Anderson’s Moon Shots Program®の一部であるLung Cancer Moon Shot®の支援を受けて実施された。胸部・心臓血管外科の准教授であるBoris Sepesi医師が試験の共同臨床試験責任医師を務めた。全共著者の一覧と開示は論文に記載。

さらに、以下の機関による研究支援を受けた。Bristol Myers Squibb, the National Institutes of Health/National Cancer Institute (5P50CA070907, P30 CA016672), the American Society of Clinical Oncology’s Conquer Cancer Foundation Career Development Award, the Connie Rasor Endowment for Cancer Research, the Bruton Endowed Chair in Tumor Biology, the Translation Molecular Profiling Immuno-profiling Laboratory, the MD Anderson Physician Scientist Program, the Khalifa Bin Zayed Al Nahyan Foundation, the Ford Petrin Donation, Rexanna’s Foundation for Fighting Lung Cancer and the Bob Mayberry Foundation。

翻訳担当者 松長愛美

監修 川上正敬(肺癌・分子生物学/東京大学医学部附属病院 呼吸器内科)

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