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米国血液学会2020ーフレッドハッチンソンがん研究センター

第62回米国血液学会(ASH)年次総会および展示会(2020年12月5日~8日、バーチャル形式で開催)

12月5日~8日にバーチャル形式で開催される第62回米国血液学会年次総会および展示会にて、フレッドハッチンソンがん研究センターは、細胞療法、免疫機能の修復、その他の研究に関する最新の知見を発表する。

ASH会長でフレッドハッチンソンがん研究センターの研究者でもあるStephanie Lee博士は、Anthony Fauci博士との対談で総会を開会する。Lee博士は、毎年恒例のE. Donnall Thomas記念講演の司会をする。この講演は、フレッドハッチンソンがん研究センターに所属していたノーベル賞受賞者で、今年生誕100周年となる故Thomas博士にちなんで名づけられ、先駆的な研究業績を表彰するものである。

Lee博士による総会のハイライト:
・12月5日:特別セッション 人種とサイエンス
・12月6日:プレナリーセッション a-TREAT試験:化学療法または幹細胞移植により血小板が減少した血液がん患者に対する、新しい出血予防治療法の検証
・12月6日:特別セッション COVID-19
・12月8日:会長セッションでは、より多くの人が効果的な血液がん治療を受けられるようにする方策について講演が行われる。血液がん治療へのアクセスを広げることを目指し、細胞免疫療法、造血細胞移植、赤血球・血小板輸血に関する3つの講演が予定されている。

免疫機能の修復
損傷誘導によるパイロトーシス細胞死が胸腺の再生を促進
胸腺は、胸腔に存在し、小さい蝶の形をした重要な役割を担う器官であり、T細胞を訓練し、病原菌など異物を排除するよう成熟させる。しかし、胸腺は、ストレス、感染症および加齢によって機能が徐々に低下する。機能を再生する方法が見つかれば、がんの予防および治療に幅広く影響を及ぼすだろう。Jarrod Dudakov博士の研究室の研究者、Sinead Kinsella博士が胸腺再生の新しい方法に関する知見を発表する。その知見によれば、パイロトーシスと呼ばれる細胞死プロセスが、胸腺の自己修復を促す多数の信号伝達分子の解放に重要である。
アブストラクト No.735(口頭発表)
2020年12月7日(月)午後2時45分

T細胞受容体療法
免疫システムは、がん抗原を検出し、がん細胞を死滅させるプロセスにおいて重要な役割を果たしている。しかし、がん抗原に対する免疫反応は多様で、腫瘍の増殖や再発を防ぐまでに至らないことが多い。フレッドハッチンソンがん研究センターの研究者らは、強力な免疫反応を導くために標的可能な特異的がん抗原を同定した。研究チームは、TCR-T細胞免疫療法と呼ばれる遺伝子組み換えT細胞を用いた免疫療法を開発し、患者の免疫反応を増強することを目指している。

同種造血幹細胞移植(HCT)後に再発した急性白血病の小児および成人を対象とした、HA-1特異的CD8+およびCD4+メモリーT細胞を用いた養子免疫療法の第1相試験:現在進行中
Elizabeth Krakow博士は、現在進行中の第1相試験について発表する。本試験では、白血病および関連疾患で幹細胞(血液、骨髄)移植を受けた後に再発した成人および小児の患者を対象に、Marie Bleakley博士が開発したTCR(T細胞受容体)治療を使用する。
アブストラクト No.492(口頭発表)

悪性腫瘍のプライマリー細胞および人工多能性幹細胞(iPS)由来の造血系細胞におけるSF3B1ネオアンチゲンの提示
ネオアンチゲンは、腫瘍細胞の遺伝子変異に伴って発生する小さなマーカーであり、細胞を腫瘍細胞として認識し、より高精度な免疫療法につながる可能性がある。しかし、腫瘍には何百もの変異が存在するので、適切なネオアンチゲンを標的とすることが、免疫応答の誘導に欠かせない。フレッドハッチンソンがん研究センターのMarie Bleakley博士の共同研究者Melinda Biernacki博士は、骨髄異形成症候群(MDS)、二次性急性骨髄性白血病(AML)、進行性慢性リンパ性白血病(CLL)に存在する特異的ネオアンチゲンSF3B1が、免疫療法の新たな標的になりうるとの知見を発表する。
アブストラクトNo.3265(ポスター発表)

CD19 CAR-T細胞療法
フレッドハッチンソンがん研究センターの研究者らは、CD19 CAR-T細胞療法がどのように作用し、どのように改良すれば、より多くの患者にとって効果的な治療法となるのか、理解を深めようと研究を続けている。

IEC関連毒性(ICANSを含む)と年齢、パフォーマンスステータス、および併存疾患の関係についての発表に続き、ライブQ&Aパネルディスカッション
サイエンティフィック・ワークショップ
発表:Jordan Gauthier 医師

高濃度の血清中IL-15が、CD19 CAR-T細胞療法への反応およびCAR-T細胞の体内動態と有意な相関
フレッドハッチンソンがん研究センターの臨床研究者であるJordan Gauthier博士は、高レベルのIL-15がCD19 CAR-T細胞の効果を強め、体内での持続効果を高める可能性を示唆する研究結果を発表する。
アブストラクトNo.1442(ポスター発表)

CAR-T細胞治療を受けた患者による、患者報告アウトカム
アブストラクト No. 3485(ポスター発表)
発表:Erin Mullane看護学博士

CD20 CAR-T細胞療法
再発/難治性B細胞非ホジキンリンパ腫患者を対象とした、CD20を標的とする第3世代CAR-T細胞療法(MB-106)
フレッドハッチンソンがん研究センターの研究者らは、再発または治療効果がみられなかったB細胞性非ホジキンリンパ腫患者に対して、血液がんに特異的なタンパク質マーカーであるCD20を標的としたCAR-T細胞療法を開発した。Mazyar Shadman博士は、フレッドハッチンソンがん研究センターの提携病院であるSeattle Cancer Care Allianceで進行中の試験から得られた早期の結果を発表する。
アブストラクト No.1443(ポスター発表)

AMLに対するCAR-T療法
急性骨髄性白血病に対する、メソテリン(mesothelin:MSLN)を標的としたキメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞療法
アブストラクト No.1959(ポスター発表)
発表:Quy Le博士

他の細胞療法
細胞療法への挑戦:再発と毒性-ライブQ&A
免疫療法の進歩により恩恵を受けるがん患者が増えているとはいえ、治療による再発および有毒な副作用は依然として課題である。Aude Chapuis博士は、固形がんおよび血液がんに対する、次世代の養子T細胞療法を改良するための遺伝子改変免疫細胞を用いる新たな方策について語る。
サイエンティフィック・プログラム、ライブQ&A

プレシジョン医療とAML
小児がん専門医であり、急性骨髄性白血病を専門とするSoheil Meshinchi博士の研究室の研究者らは、遺伝子変異をマッピングして、様々な治療に対する患者の反応を研究している。今回の発表は、進行中のゲノムプロファイリングの研究が、小児および若年成人にて最も死亡率の高い白血病であるAML患者に対し、標的治療の指針となりうることを示唆する。

モノソミー7型AMLのゲノムおよびトランスクリプトームプロファイリングにより、新たなリスクと治療群が明らかに
アブストラクトNo. 274(口頭発表)
発表:Rhonda E. Ries

治療抵抗性FLT3 ITD変異およびFLT3 TKD突然変異を有する、小児再発性急性骨髄性白血病における、クレノラニブの臨床的有用性と忍容性
アブストラクトNo.1973(ポスター発表)
発表:Katherine Tarlock医師

メソセリンの発現が髄外病変と関連し、急性骨髄性白血病モデルマウスにおいて白血病細胞増殖を促進
アブストラクト No.1993(ポスター発表)
発表:Katherine Tarlock医師

迅速な臨床研究の推進に向け、トランスクリプトームアプローチにより、AMLに適用可能な既知の免疫療法標的を特定
アブストラクト No.2003 (ポスター発表)
発表: Amanda R. Leonti

血栓とがん、COVID-19
腫瘍内科医、血液内科医、および公衆衛生研究者であるGary Lyman博士は、がん患者の血栓管理治療ガイドラインの作成に貢献し、最近ではCOVID-19患者に対するガイドラインの作成にも貢献している。同博士らは、今年のASHでCOVID-19の知見について発表する予定である。Lyman博士はメディアへの対応が可能である。

血液がん患者におけるSars-Cov-2感染の重症度:COVID-19 and Cancer Consortium(CCC19)のレジストリ解析
アブストラクトNo.1632(ポスター発表)

がんおよびCOVID-19入院患者における静脈血栓塞栓症の発症率と危険因子:COVID-19 and Cancer Consortium(CCC19)レジストリからの報告
アブストラクトNo. 204、セッション No.701(口頭発表)

医療経済
米国およびカナダ・アルバータ州の多発性骨髄腫患者における治療成績と治療利用率の比較
アブストラクトNo. 2516(ポスター発表)

細胞生物学
特異的転写因子により、マウス胚の造血性内皮前駆細胞を造血幹細胞および造血前駆細胞へと分化
アブストラクトNo. 908(ポスター発表)
発表:Tessa Dignum

翻訳為石万里子

監修吉原哲(血液内科・細胞治療/兵庫医科大学)

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原文掲載日

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