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ほとんどの患者は、機会があれば臨床試験に参加する

  • 2020年11月19日
  • 発信元:ロイター

新たな研究では、黒人のがん患者が臨床試験参加に同意する可能性が低いという従来の常識が覆される結果が判明した。

シアトルにあるフレッド・ハッチンソンがん研究センターのJoseph M. Unger医師らの本研究によると、臨床試験の参加を勧められた患者のうち、全体では55%が参加に同意し、白人と黒人の参加同意率は同程度であったという。

「患者は、一般の人々が思っている以上に、がんの臨床試験に参加する意欲が高いと言えます。重要なのは、参加意欲に人種や民族による差はないということです」とUnger医師はロイターヘルスへの電子メールで述べている。

Unger医師はJournal of the National Cancer Institute誌で、米国では成人がん患者のごく一部しか臨床試験に参加しておらず、報告されている参加率は2%から8%であると記している。同誌で発表された2019年のある研究では、がん患者の4分の3以上が構造的、臨床的障壁によって臨床試験に参加できなかったことがわかった。

研究グループや患者支援団体は、臨床的障壁をなくすよう取り組んできたが、医師が患者に臨床試験への参加を勧めないこともある。それは「医師と患者との関係に関する懸念、特定の治療に対する優先傾向、そして、診療報酬、時間、医療施設リソースなどの実施上の懸念が理由である」とUnger医師らは述べている。

実際に臨床試験への参加機会が与えられたがん患者のうち、どれくらいの人数が参加を決定するかを確認するために、臨床試験の参加を勧められた9,759人を対象とした35の試験を調べた。このうち30の試験は治療試験で、5つの試験はがんの比較対照試験であった。

黒人患者の参加に関するデータを含む15の試験において、60.4%が勧められた臨床試験に参加した。黒人患者と白人患者両方のデータを含む13の試験において、黒人患者と白人患者の参加率の間に統計学的有意差はみられなかった(58.4%対55.1%)。

また、8つの試験におけるヒスパニック系患者の参加同意率(67.1%)と6つの試験におけるアジア系患者の参加同意率(平均63.6%)も、数値上は高いが有意差はなかった。

15の試験で、合計2,626人の患者が不参加を決めた理由を答えた。約4分の1が治療関連の問題を理由にあげた。5分の1が臨床試験の参加に興味がないと答えた。その他の理由は、副作用への恐怖(7.9%)、金銭的懸念や保険適用外(6.7%)、実験台になることへの嫌悪感(6.6%)となっている。

消極的に参加を拒否した患者(病院に再来院しなかった、経過観察ができなくなったなど)は、8.3%だった。

「この研究は、患者は機会があれば臨床試験に参加する意欲が一般的に高いことを強調していると思います。また、患者は試験には参加したがらないだろうとの先入観から、患者に試験参加を勧めるのを医師が躊躇すべきでないことを示しています」とUnger医師は述べる。

がんの臨床試験への参加についての研究は、なぜ患者が試験に参加しないのかという点に長年注目してきた、と同氏は次のように述べた。「最終的には患者が試験に参加するかどうかを決めるわけですから、これは重要な点です。しかし、われわれの研究は、参加できる試験がないことや参加条件の制限など、参加意思以前の理由の方がはるかに重要だということを示しています。ですから、参加率を向上させるための研究や介入では、こうした構造的・臨床的障壁にもっと注目することが重要なのです」。

「患者は、がん研究推進のために自身の役割以上のことをしてくれています。なぜ彼らが試験の参加決定の機会すらないことが多いのか、もっと理解する必要があります」。

SWOG がん研究ネットワーク会長のCharles Blanke医師は、ロイターヘルスへのメールでこう述べる。「腫瘍科医へのメッセージは単純なものです。臨床試験の参加条件に合う患者はすべて勧誘しましょう、ということです。わずか数パーセントの人しか試験に参加しないのだから参加を依頼するのは時間の無駄だと思ってはいけません。実際に聞いてみると、大多数の人は参加すると答えます。また、誰が試験に参加しそうか、しなさそうかについて先入観を持ってはいけません」。

Blanke医師はSWOGが拠点としているポートランドのオレゴン健康科学大学で教授を務めており、今回の研究には参加していない。

同氏によると、米国国立がん研究所(NCI)が支援する5つのがん試験グループの1つであるSWOGは、臨床試験への参加資格条件の緩和を導入、その後、米国臨床腫瘍学会(ASCO)とフレンズ・オブ・キャンサー・リサーチが2017年に発表した一連の論文で臨床試験の参加制限の緩和が提唱された。

「新しいガイドラインには多くの変更点がありますが、コントロール可能な脳転移患者、健康なHIV患者、12歳以上18歳未満の患者の試験参加を認めることなどが含まれています」とBlanke医師は説明する。

SWOGはその所管施設でスクリーニングを追跡しているわけではないが、「新しいガイドラインによって10年前には参加資格がなかった患者も臨床試験に参加できるようになったことは間違いありません」。

「医師は臨床試験自体が優れたケアを表していることを理解しています。ですから、参加条件に該当するすべての患者に対して試験に参加する選択肢を与えるべきです。多くの場合、臨床試験は免疫療法を含む最先端の治療を受ける唯一の方法です」とBlanke医師は続ける。「また、臨床試験は参加する個人だけでなく、集団レベルでも利益をもたらしてくれます。NCTN(National Clinical Trials Network:全国臨床試験ネットワーク)の試験の多くは、がんケアの提供や予防に関する重要な疑問に対する回答を示しています。腫瘍医は常に臨床試験を最重要事項とし、患者に試験についてもっと知りたいか、臨床試験に参加したいかどうかを常に尋ねる必要があります」。

引用:Journal of the National Cancer Institute誌、2020年10月6日オンライン版

翻訳外山ゆみ子

監修朝井鈴佳(獣医学・免疫学)

原文掲載日

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