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放射線リスクと小児CT(コンピュータ断層撮影):医療従事者のための指針

有用な画像診断機器であるCTの小児への使用が急増している。最新のCTおよびその使用増加にともないCT撮影による小児の被ばくが増える可能性があるため、小児へのCT使用は公衆衛生上の懸案事項である。 本概要(稿)は、特に小児におけるCTの意義と放射線量を最小限にする重要性について検討したものであり、以下の課題について取り扱う。

・診断ツールとしてのCT

・小児の放射線被ばくへの特有の配慮

・小児のCTによる被ばくリスク

・小児のCTによる被ばくを最小限にするための即実行可能な対応策

【診断ツールとしてのCT】

CTはきわめて有用であり、小児の疾患や外傷を診断する際の救命ツールとなりうる。子供一人一人にとって、適切に使用すればCTのリスクは少なく一人一人のリスク便益比で利益が上回る。

米国では年間およそ500万~900万件のCT検査が小児で行われている。1980年以降、成人と小児におけるCT使用は約8倍に増加しており、年間増加率はおよそ1割と推定される。 この増加の大半は、技術的進歩はもとより一般的疾患におけるCTの有用性によるものである。

CTの多くの長所にもかかわらず、1つの短所として避けられないのが被ばくである。CTスキャンは米国の大病院では放射線診断の最大12%を占めるが、全医療用X線検査による米国民の総放射線量のうち、およそ49%はCTスキャンが原因であると推定される。 CTは米国民にとって医療被ばくの最大の原因である。

【小児の放射線被ばくへの特有の配慮】

被ばくは成人と小児に共通した問題である。しかし、小児には3つの特別な配慮が必要である。

・被ばく集団の疫学研究で明らかにされたように、小児は成人より放射線に対する感受性が著しく高い。

・また小児は成人より平均余命が長いので、放射線障害が発現する機会がより多くなる。

・成人用CTの設定で小児に使用すると、小児は必要以上に被ばくする。

結果として、まったく同じCTスキャンで被ばくする成人と比べて、放射線に関連するがんを発症するリスクは小児の方が数倍高い可能性がある。

この10年間のCT機器の進歩により、低線量で画質の良い検査画像が得られるようになった。適切な設定での使用もさらに普及し、小児に対する放射線量も減少した。小児に対して高線量照射を行う必要はなく、常時適切な設定が使用されるべきである。

低線量であるかどうかにかかわらず、個々の患者に対する複数回のスキャンは特に懸念される。さらに、1回の検査で2回以上のスキャン(つまり、2回以上の造影「位相」)を施行すると、放射線量がさらに増加する。大半のケースで、小児CTは1回のスキャンで十分である。

【小児のCTによる被ばくリスク】

放射線リスクの評価に関与している国内および国外の主要組織では、がんを誘発する低線量照射量の「しきい値」はおそらくないということで意見が一致している。すなわち、放射線量がいくらであろうと絶対に安全であるとは考えられない。

小児におけるCTスキャン後のがんリスクを直接評価した最初の研究では、白血病と脳腫瘍の両方で明らかな線量反応関係が認められた。リスクは累積放射線量の増加に伴って増加した。頭部への累積線量が50~60ミリグレイまたはmGy(mGyは電離放射線の推定吸収線量の単位)の場合、脳腫瘍のリスクは3倍に増加した。骨髄(血球の生成に関与する身体の一部)に同じ量を投与すると、白血病のリスクが3倍に増加した。いずれの観察結果についても、比較群は、身体の関連部位への累積線量が5mGy未満の患者より成っていた。

50~60mGyの累積線量を与えるために必要なCTスキャンの回数は、CTスキャンの種類、患者の年齢、およびスキャナの設定によって異なる。現在の典型的なスキャナの設定が小児の頭部CTに使用されている場合、2~3回の頭部CTスキャンで脳に50~60mGyの線量を与えることになる。15歳未満の小児に対して現在のスキャナの設定を用いた場合、5~10回の頭部CTスキャンを行うと、同じ線量を赤色髄に与えることになる。

これまでに、CTの使用による潜在的ながんリスクは、主に日本の原爆爆発の生存者の研究から得られたリスク予測モデルを用いて推定されてきた。上述の研究で観察されたリスクは、以前の推定値と一致していた。

CT検査に関連する絶対的ながんリスクは小さいことを強調することが重要である。原爆被爆者に基づく予測モデルを用いて文献で推定されているCTスキャンによるがんの生涯リスクは、スキャンを受けた人1,000人につき約1例、最大発生率は500人につき約1例である。

適切に実施され、臨床的に正当化されたCT検査の利益は、常に個々の小児に対するリスクを上回るべきである。不必要な被曝は不必要なリスクと関連している。可能な限り、小児CTからの放射線被曝を最小限にすることで、CT関連のがんの予測数を減らすことができる。

【小児のCTによる被ばくを最小限にするための即実行可能な対応策】

医師、その他の小児医療従事者、CT検査技師、CTメーカー、さまざまな医療機関および政府機関は小児のCTによる被ばくを最小限にするための責任を負う。小児がCT検査によって受ける放射線量を低減するための幾つかの迅速な措置が可能である。

・必要なCT検査のみ行うこと。小児医療従事者と放射線診断医の提携によりCTの必要性と用いる撮像技術を決定できる。小児に対するCTの標準適応があるので、放射線診断医は小児に対しすべてのCT検査を実施する前に根拠を検討し、適応があいまいな場合は相談できるようにしておくべきである。必要に応じて、電離放射線を使用しない超音波画像診断やMRI(磁気共鳴映像法)など他の検査方法を考慮すること。

・小児に対するCTのパラメータは以下に基づき調整する。

  ・小児サイズ:患者のサイズ/体重パラメータに基づくガイドラインを用いるべきである。

  ・スキャンされる部位:スキャンされる身体の部位は必要最小限の部位に限定すべきである。

  ・スキャンされる器官系:骨系,肺のイメージング,CT血管造影,経過観察検査の際にはmA(管球電流)やkVp(管球電圧)設定を低くすることを検討するべきである。

・スキャンの解像度:最高画質の画像(すなわち最大限の放射線を要する画像)が診断上いつも要求されているわけではない。多くの場合、低解像でも診断上不都合はない。医療者はCTスキャナで使用可能な線量指標について熟知すること。造影検査で異なる「相」の多撮像(多相撮像)CTは最小限にすること。これらの多相撮影は特に体幹部(胸部および腹部)撮像ではめったに必要とされないが、線量が大幅増につながる。

【CTの放射線を最小限にするための長期的対策】

小児のCTによる被ばくを低減するためのすぐにでもできる対策に加え、長期的対策も必要である。

・小児に対するCTのプロトコルの作成と採用を勧めること。

・虫垂炎の術前評価など小児の画像に対して個別的な対策を勧めること。

・内部や外部の放射線診断専門医の雑誌や学会を通じて、撮影条件を最適化し、各患者に対するCTの必要性を評価するよう教育すること。米国小児科学会、米国家庭医療会学会や米国救急医学会を含む小児の健康管理に関連している団体、組織、学会を通して情報を広める。Alliance for Radiation Safety in Pediatric Imaging(小児画像診断における放射線安全連合)などのすぐにでも入手可能な情報源を提供すること。

・CTの画質と線量の関連を明らかにすること、CTスキャンを各小児用に個別設定すること、CTの放射線とがんリスクの関連を解明することを目的としてさらなる研究を行う。

【結論】

CTは現在も小児診断の重要なツールだが、医療界が小児に対する放射線量を最小限にしようと一致協力することは大切である。放射線診断医は、小児用にカスタマイズした撮影条件を使用することで、合理的に達成しうる限り被ばくを低線量にすることを絶えず考慮すべきである。小児にCTを予定する医師はすべて、個々の症例ごとにその使用を常に評価すべきである。慎重かつ最適に使用すれば、CTはわれわれにとって小児と成人双方に対して最も有用な画像検査法の1つである。

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両親と検討すべき問題

両親はCT検査を受けている間に小児が受ける放射線の量について懸念するかもしれない。医療従事者は次のような質問について考えてみるとよい。

・その小児の状況を診断するのに最良の検査方法はCTか。

・放射線を含めない代替検査があるか。

・その結果は治療法決定に変更を及ぼすか。

・そのCT検査は小児のサイズに合わせて調整してあるか。

・その検査は信頼できる施設で小児に対するCTを熟知した放射線診断医と放射線科のチームによって実施されるものか。

次のような注目すべき研究がある。すなわち、子供の両親がCTのリスクとベネフィットに関する情報を与えられたことによりCT検査を受けることに従わないということにはならなかったが、両親から医療従事者に対するさらに詳しい質問が増えたということである。

臨床的に正当化された検査であれば、長期的なわずかながんのリスクを上回る利益があるとして両親は安心する。

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関連情報源:Society for Pediatric Radiology(米国小児放射線学会)、1891 Preston White Drive Reston, Virginia 20191

http://www.pedrad.org 

*サイト注:日本核医学会 「小児核医学検査適正施行のコンセンサスガイドライン 2020」 

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翻訳会津麻美

監修松本恒(放射線診断/仙台星陵クリニック)

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