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COVID-19後のがん診療システムをもたらす今後の道筋を発表

米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology、以下「学会」)およびその関連組織であるAssociation for Clinical Oncology(以下「協会」)は、COVID-19(コロナウイルス感染症)パンデミック初期におけるがん臨床試験への影響を追跡した調査結果を発表した。それらは、コロナウイルスががん患者に及ぼす影響に関するデータ不足を解消する新たな取り組みを紹介し、がんケアの提供システムがCOVID-19後の生活に備える中で回復への道筋を示すものであった。

「COVID-19は、がん診療システムに多大な負担をかけ、がん患者やその家族に悲劇的な結果をもたらしていますが、がんコミュニティが一丸となって、新たな方法により適応させるという前例のない対応も行われています」と、ASCO会長のHoward A. “Skip” Burris, III医師(FACP、FASCO)は述べた。「私たちは非常に厳しい時代にいますが、この危機は、がんケアの質と回復力を向上させる機会となっています。その可能性を最大限に高めるために、私たちは、がんコミュニティ全体の専門知識、政策立案者による措置、および危機後のがんケアへの積極的なデータの移行により、今後数カ月間と数年で患者にとって最高の結果を出します」。

「COVID-19とがん:危機に瀕した医療システムへの対応」と題したプレスキャストでは、コロナウイルスががんケアに及ぼす影響、連邦政府およびがんコミュニティの対応、ならびに今後前進していくための推奨事項について詳しく説明している。

また、国の指導者およびがん専門家が新たなデータを共有し、危機後のがんケアに適切に移行するために踏むべき具体的なステップを示した。

COVID-19ががん臨床試験に及ぼす影響

本学会は、 がん研究プログラムを対象としたアンケートの調査結果を発表した。この調査は、COVID-19が学術型および地域密着型のがん研究施設で実施されている臨床試験に及ぼす影響を検討するものである。調査結果は、JCO Oncology Practice誌に冊子体発行前のオンライン公開の論文で掲載され、パンデミックが発生してからわずか数週間で、研究プログラムの60%が特定の臨床試験のスクリーニングや登録を中止したと報告していることを明らかにしている。

調査回答者の3分の2以上が、臨床試験の来院の代わりに遠隔来院を利用していると報告しているが、研究施設はテレヘルス(遠隔診療)の計画、導入および実施に課題を抱えていた。回答者はまた、患者の来院の能力や意欲の低下、放射線科、外科、循環器科、およびその他の一部の臨床試験に不可欠な付帯サービスの利用が制限されていることも報告している。

本論文の著者らは、COVID-19のパンデミック期間中の臨床試験プロトコルの変更(期間に延長や柔軟性のある試験やデータ収集要件の軽減など)の影響を評価すること、COVID-19のパンデミックが終了した後に臨床試験を安全かつ順調に継続することができるかどうか、およびそのような変更が患者の登録を促進することができるかどうかを判断することを、がん研究コミュニティに呼びかけている。

がんケア課題の政策提言

連邦レベルでの大胆な政策措置が不可欠であることに留意し、本協会は、議会と政権のための課題の政策提言を発表した。この課題は、将来に向けての計画を立てつつ、危機の残りの期間も質の高いがんを維持するために必要な8つの政策の変更に焦点を当てている。

本協会の推奨事項は以下の通りである。

テレヘルス(遠隔医療)の継続的な支援・・本協会は、米国公的保険であるMedicare & Medicaid Services(CMS)および民間支払機関に対し、音声のみの来院に対しても全額償還を行うよう要請する。

診療に対する追加的かつ即時の財政支援・・多くのがん診療は、CARES法(コロナウイルス支援・救済・経済保障法、Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security Act)に基づき、資金を受け取っている。しかし、追加の財政支援が必要であり、公的保険メディケイド提供者にはメディケア提供者と同等の金額が支払われるべきである。

Federal Oral Parity Legislation(連邦経口薬平等法)の成立・・COVID-19への曝露のリスクなしに経口薬を自宅で服用することができるため、議会は、経口がん治療で静脈内(IV)化学療法と同等の水準で償還を行うことを義務付けている。次のCOVID-19救済パッケージでは、議会は、経口薬と静注薬の間の現在の不平等な費用分担を禁止するCancer Drug Parity Act(がん治療薬平等法)を含めるべきである。

新たな薬剤不足の防止・・本協会は、薬剤不足を緩和するための積極的な措置、すなわち、サプライチェーン混乱の可能性を常に意識すること、急激な不足を緩和するための緊急時対応策など、全連邦政府機関にまたがる「政府全体の」アプローチを含む包括的な解決策を推奨している。

復興への道:COVID-19後の世界におけるがんケアと研究

COVID後の環境下でがんケアおよび研究を再び確立するには、多くの課題と機会が必要であることを認識し、本学会は、現在のプレッシャーが大きく、大きな賭けとなる環境下での教訓を踏まえた「復興への道」の取り組みを発表した。

本学会は、新たな 「平常 」に戻る道を描くために、2つの学際的なワークグループを招集する予定である。ワークグループは、パンデミックによって促されたケアの提供および研究の変化が、質が高く価値の高いケアの提供と今後前進していくがん研究のための新たなアプローチにどのような情報を提供しうるかを評価することを任務とする。本ワークグループは、回復を支援するために必要な政策または診療に関する提言を含む青写真を作成し、患者、患者擁護団体、外科、内科腫瘍学、放射線腫瘍学、腫瘍看護学、支持療法、臨床研究および医療管理の専門家で構成され、臨床ケアおよび研究におけるその他の利害関係者との交流が行われる予定である。

ASCO COVID-19 Registry

本学会はまた、最近開始した ASCO Survey on COVID-19 in Oncology Registry(Oncology RegistryにおけるCOVID-19に関するASCOの調査)(または ASCO Registry)にも注目している。ASCO  Registryは、がん患者におけるCOVID-19の症状のパターンおよび重症度、ならびにCOVID-19ががんケアの提供や患者の転帰にどのような影響を及ぼすかについて、がんコミュニティがより深く知ることができるようにすることを目的としている。本Registryは、COVID-19の流行期間中および2021年までの間に、ウイルスががん患者のがんケアおよび転帰にどのような影響を及ぼすかについて、ベースラインデータと時系列データの両方を収集するように設計されている。

COVID-19プレスキャストで録画を視聴可能。ASCOのCOVID-19の情報源は、臨床医、がんケア提供チーム、がん患者を支援するためにも利用可能。

 

翻訳会津麻美

監修小宮武文(腫瘍内科/Parkview Cancer Institute)

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