禁煙電話相談を通じ、情報に基づく肺がん検診受診の意思決定が向上

クイットライン(禁煙電話相談)は、肺がん検診に適した人に到達するための効果的な手段である

肺がん検診を受診するかどうかについて、意思決定支援ツールと標準的な教育情報とを比較した初の比較臨床試験で、タバコのクイットラインで提供される意思決定支援ツールが、検診に適した集団へのアプローチに効果的かつ情報に基づいた肺がん検診の意思決定をもたらすことをテキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らが示した。

肺がんは、米国の成人の間で2番目に多く診断されるがんであり、がん関連の死因で最も多い。 低線量CT検査による肺がん検診は、肺がんによる死亡率を低下させる唯一の二次的予防医療である。 肺がんを予防するために最も重要な行動は、喫煙しない、または喫煙していればやめることである。

肺がん検診により命を救うことはできるが、潜在的な不利益性もある。 このため、米国メディケア・メディケイドサービスセンター(CMS、米国公的保険)は、患者と医師・有資格開業医との間との意思決定について共有するための診断期間において、意思決定支援の使用を含む特定の要件が満たされている場合に限り、肺がん検診を予防医療として補償している。米国予防医療専門委員会(The U.S. Preventive Services Task Force)は、30 pack-year(1日1箱の喫煙を30年間)の喫煙歴がある55〜80歳の成人を対象に毎年スクリーニングを行うことを推奨している。これは、1パックのタバコを30年間喫煙することに相当する。

JAMA Network Open誌で本日公開された研究では、調査チームは13カ所のクイットラインと協力し、検診に適格な通知対象者を特定した。この研究に登録された516人のクイットライン対象者は、「肺がん検診:私に適合しますか?」という意思決定支援ビデオ、または対照として標準的な肺がん検診パンフレットを受け取るようランダム化された。

研究の主要評価項目は、対象者の意思決定や意思決定の迷いに対する心構えだった。 副次的評価項目は、肺がん検診に関する知識、検診を受けるにあたっての意向、および意思決定支援またはパンフレットを受け取って6か月以内に検診が完了することであった。

1週間の追跡調査において、意思決定支援を受けた参加者の67.4%が検診の決定を下す準備ができていると報告したのに対し、標準的な資材を受け取った参加者では48.2%だった。 意思決定支援を受けた参加者のうち50%が意思決定の選択について十分な情報を受けたと感じ、68%が検診の害と利益に関連する価値観について明確になったと報告されたことに対し、対照群ではそれぞれ28.3%および47.4%であった。

「意思決定支援を受けたクイットラインの対象者は、検診に関わる選択を行う上で、彼らにとって何が重要であるかについて、より納得し、より多くの情報を得たと感じていました」と、筆頭著者であるRobert Volk, Ph.D.(ヘルスサービスリサーチリサーチセンター: Health Services Research)は述べた。「検診でのメリットとデメリットに関する調査参加者の知識は、標準的な教育情報を受け取った人々よりもはるかに上まわりました。 対照群の参加者は、検診の選択を行っていたが、意思決定のための準備や、検診における利害の不一致に対する認識が不十分でした。われわれは、情報に基づいていない選択から脱却し、患者が検診に関して十分な情報に基づいた意思決定を行えるよう支援したいと考えています。」

意思決定支援ビデオでは、検診の適格性、肺がんの疫学とリスク要因、および偽陽性結果、放射線被曝、侵襲的診断手順のリスクなど、検診による潜在的な不利益について説明している。 意思決定ガイドは、検診のメリットとデメリットを評価しながら、患者が自分の価値観を考慮することを奨励する。 ビデオには、CT検査を受けている患者も示されている。

6カ月の追跡調査までに、両グループの参加者の約30%の肺がんの検診を予定していた。 グループ間の検診率の差は統計的に有意ではなかった。 米国国立衛生研究所によると、全国的に喫煙による肺がんリスクを有する人の約6%が検診を受ける。

調査結果に基づいて、検診の資格がある対象者を特定し意思決定支援ツールを提供するためのクイットラインスタッフのトレーニングを行い、モデルの全国的な運用を開始するための資金が提供された。

「本件は、肺がんのリスクがある人々を特定する非常に効果的な方法であることを実証しました」と、Volk氏は述べている。 「検診の資格があり、すでに禁煙サービスを求めて肺がんのリスクに取り組んでいる何千人もの人々にたどり着ける可能性があります」。

本研究の限界点として、検診への行動が自己報告に基づくものであったことが挙げられる。 クイットラインを受けた対象者が調査に参加するには、クイットラインのスタッフから尋ねられた際、肺がん検診に関心を示す必要があった。

MDアンダーソンの共著者は以下のとおりである:Lisa M. Lowenstein, Ph.D., Viola B. Leal, Kamisha H. Escoto, Ph.D., Scott B. Cantor, Ph.D., Paul M. Cinciripini, Ph.D., Heather Lin, Ph.D., Myrna C. Godoy, M.D., Ph.D. and Therese B. Bevers, M.D.

本研究は、患者中心のアウトカム研究所(CER-1306-03385)、米国国立衛生研究所(P30CAO16672)、ダンカンファミリーがん予防およびリスク評価研究所によって支援された。 共同執筆者の全リストとその開示情報は、論文内に記載されている。

翻訳担当者 佐々木亜衣子

監修 高濱 隆幸(腫瘍内科・呼吸器/近畿大学奈良病院)

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