新たなリポジトリ プログラムにより経口抗がん薬の寄付が可能に

オハイオ州薬事評議会と、オハイオ州立大学総合がんセンターのアーサー・G・ジェームズがん病院およびリチャード・J・ソロベ研究所(OSUCCC–James)が主導する新たな州規則にもとづいて、がん患者が不要になった経口がん治療薬を他の患者のために寄付できるようになった。

世界対がんデー20周年を記念して、新たな抗がん薬リポジトリプログラムの設立が関係当局により発表された。本プログラムはOSUCCC–James 外来薬局で運用されるもので、患者個人や薬局、病院、非営利形態の診療所から不要となった薬の寄付を受け付けている。OSUCCC-Jamesで治療中の患者で、薬が高額なために投薬を受けられない患者に再調剤される予定である。

2019年10月にオハイオ州薬事評議会によって採択された新たな規則により、処方薬を金銭的理由で購入できない患者への再調剤を目的として、調剤後に不要となった経口抗がん薬を患者が寄付することができる。以前の規則では、調剤されても処方された患者が受け取らずに残った未開封の薬に限り、回収が許可されていた。

「がん治療において、別の薬に切り替えたり、投薬量を減らすケースは往々にしてあります。その結果、多くの薬が不要となって廃棄されることになってしまいます」と、OSUCCC–Jamesで薬剤局副部長を務めるJulie Kennerly-Shah 氏(薬剤師、薬学博士)は説明する。「オハイオ州薬事評議会と共同で、OSUCCC – James調剤チーム は、当院ですでに実施している医療支援プログラムを通じて、経済的援助を必要とする患者への再調剤を目的として、これらの不要となった薬を患者が寄付できるようにする新しい管理規則を定めることができました」。

OSUCCC – Jamesは、抗がん薬リポジトリプログラムを開始したオハイオ州初および米国初の病院である。本プログラムでは、手始めにカペシタビン(販売名:ゼローダ)およびテモゾロミド(販売名:テモダール)を受け付けている。

「これらの経口抗がん薬は、神経内分泌がん、乳がん、神経腫瘍、消化器がんなど、オハイオ州内外で患者が罹患する一般的ながんの多くで使用されています」とKennerly-Shah氏は言う。「私たちはまず2種類の薬剤で経口薬リポジトリを始めていますが、近い将来、経済的援助をもっとも必要としている患者に付加価値を提供できるリポジトリ方式を開発すべく最良方法の確立と確認を目指しています」。

今回の抗がん薬リポジトリの取り組みは、OSUCCC-Jamesで実施している総合医療支援プログラム(MAP)の新規事業である。MAP相談サービスは、経済的理由で投薬を受けられない患者を支援する目的で設立された。総合医療支援プログラムは、薬剤師、医療支援プログラムコーディネーター、臨床財務ケースマネージャーのほか、患者に一対一で向き合ってがん治療費抑制に努める支援スタッフで構成されている。2001年のプログラム開始以来、助成金やメーカー支援プログラムを利用できるよう支援した患者は3万人以上にのぼり、患者の医療費は5億ドル以上抑えられた。

「がんの診断を受けた家族にとって、資金不足はとても現実的な問題です。病院側としても、患者が回復に専念できるように、不要なストレスの軽減に向けてあらゆる手を尽くしたいと思っています」とアーサー・G・ジェームズがん病院の最高医療責任者で婦人科腫瘍医のDavid Cohn医師は述べる。「総合医療支援プログラムと新たな抗がん薬リポジトリによって、経済的援助をもっとも必要としている患者を支援する機会を活かしてがん治療高額化の問題に対処するというわれわれの最終目標達成に向けて前進しました」。

「これらの重要な規則変更がもたらす影響をオハイオ州と共同で実証できることを誇りに思っています」と、オハイオ州薬事評議会会長Shawn Wilt 氏(登録薬剤師)は述べる。「われわれは評議会を代表して、がん患者が手頃な医療費で投薬を受けられるよう、他のライセンシー も薬剤リポジトリの規則緩和を活用することを奨励します」。

有効期限内で不要になったカペシタビンまたはテモゾロミドの寄付に関心がある患者のかたのお問い合わせは、OSUCCC- James 外来薬局まで。

寄付できる医薬品は、有効期限内であり、処方通りに保管された未開封のものに限る。受付後、薬剤師が8項目のチェックを行い、薬を必要とする患者に後日、安全に再調剤できることを確認する。

「オハイオ州は投薬支援プログラムを牽引し、さまざまなメーカーが提供するプログラムや補助金プログラムを最大限に利用する方法を全国に広めてきました。抗がん剤レポジトリの導入を検討している他の病院の参考になればよいと思います」とKennerly-Shah氏は付け加える。「このリポジトリが当院やオハイオ州の枠を超えて、はるかに大規模で長期的に応用できる解決策 への第一歩となることを期待します」。

翻訳担当者 水町敦子

監修 東海林洋子(薬学博士)

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