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特定のルミナル型乳がんはタモキシフェン単剤治療では不十分か

ホルモン受容体(HR)陽性かつHER2陰性で、臨床的リスクが高く(腫瘍の大きさおよび組織学的異型度により決定)、ゲノムリスクが低い(乳がん予後予測遺伝子検査 マンマプリント[MammaPrint]により決定)乳がん患者のうち、40〜50歳の患者は50歳以上の患者と比べて化学療法の有用性が高いことが、MINDACT試験の計画外で行ったサブグループ分析データより明らかとなった。このことは、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS:2019年12月10~14日開催)で発表された。

「若い乳がん患者を対象とした臨床試験は少なく、治療は年齢の高い患者または閉経後の患者を対象に得られたデータに基づいて決定することが多い」と、シャンパリモー財団シャンパリモー臨床センター(ポルトガル、リスボン)乳腺腫瘍部門長であるFatima Cardoso医師は述べ、「年齢が乳がん患者の治療効果および疾患の再発にどのように影響するかを調べ、それぞれの患者に最適な治療を選択決定することが重要です」と加えた。

HR陽性乳がん患者のほとんどがホルモン療法を受ける一方で、化学療法の追加で臨床的有用性が得られる患者を選別することが最近の研究分野となっているとCardoso医師は説明する。

MINDACT試験は、手術後に抗がん剤治療を受ける0-3のリンパ節転移陽性乳がん患者を選ぶため、 特定の遺伝子70個を調べる 市場向け検査マンマプリントの実用性と、広く使われている臨床病理学基準(乳がん予後予測ツール Adjuvant!Online修正版により決定)の比較を目的としている。

TAILORx試験の最近の分析では、50歳以下の患者で、臨床的リスクが高くオンコタイプDX(Oncotype DX )再発スコア(RS)16~20の場合、または臨床的リスクに関わらず再発スコア(RS)21~25の場合、化学療法は9年時点の遠隔再発を減らす有効性があると推定された 。

「われわれはMINDACT試験でこの計画外の分析を実施して、TAILORx試験分析で最近確認されたように、特定の乳がん患者では、化学療法の追加が無遠隔転移生存期間に及ぼす影響において年齢が関係するかどうかを検証しました」とCardoso医師は述べた。

Cardoso医師らは、ゲノムリスクが低く臨床的リスクが高いHR陽性かつHER2陰性の乳がん患者をMINDACT試験に登録し、臨床的リスクまたはゲノムリスクのいずれかに基づいて化学療法群に無作為に割り付け、遠隔転移のない5年生存率を評価した。40歳未満の患者ではDMFSイベント(観察期間中に起きた遠隔転移)は2例しかなかったため、 分析対象を40歳以上の患者に制限した。その結果、対象集団は総計1,264人で、そのうち40〜50歳が399人、50歳以上が865人であった。

50歳以上の患者では、遠隔転移のない5年生存率推定値は、化学療法を受けた患者群と受けなかった患者群とで類似していた(それぞれ95.2%、95.4%)。しかし、40〜50歳の患者では、化学療法を受けた患者群で96.2%であったのに対し、化学療法を受けなかった患者群では92.6%であった。

「TAILORx試験と同様に、従来の臨床病理学的要因では再発リスクが高いと判定されたがマンマプリントでは再発リスクが低いと判定された患者は、タモキシフェン単剤投与での転帰はよくありませんでした。結果的に、この患者群では化学療法の有用性が高くなる可能性があります」とCardoso医師は述べた。

「これら両試験で、患者の大多数は術後化学療法としてタモキシフェン単剤投与(卵巣抑制なし)を受けました」とCardoso医師は指摘し、「したがって、若い患者に見られる結果が化学療法の直接的な効果によるものなのか、化学療法による卵巣抑制によるものなのかを判断できませんでした」と語った。

「これらの結果は、仮説を立てる根拠とはなりますが、検証が必要なため、実地医療を変えるものとはまだ言えません」とCardoso医師は続け、「しかし、われわれの得た結果およびTAILORx試験の結果は、臨床的リスクが高くゲノムリスクが低い(マンマプリントより決定)若い患者、または再発スコアが中間リスク (オンコタイプDXにより決定)の若年患者に対して化学療法追加が有効である可能性を示唆しているようです」とした。

本研究はMINDACT試験のサブセット分析を特定して行ったものである。したがって、探索的研究のみとなっており、本試験の限界となっているとCardoso医師は指摘した。

MINDACT試験が受けた助成金は以下のとおりである。
The MINDACT trial was supported by grants from the European Commission Sixth Framework Program, the Breast Cancer Research Foundation, Novartis, F. Hoffmann–La Roche, SanofiAventis, Eli Lilly, Veridex, the National Cancer Institute (U.S.), the European Breast Cancer Council–Breast Cancer Working Group, the Jacqueline Seroussi Memorial Foundation for Cancer Research, Prix Mois du Cancer du Sein, Susan G. Komen for the Cure, Fondation Belge contre le Cancer, Dutch Cancer Society (KWF), the Netherlands Genomics Initiative–Cancer Genomics Center, Association le Cancer du Sein, Parlons-en!, the Brussels Breast Cancer WalkRun and the American Women’s Club of Brussels, NIF Trust, German Cancer Aid, the Grant Simpson Trust and Cancer Research UK, Ligue Nationale contre le Cancer, and the EORTC Cancer Research Fund.

全ゲノム解析はAgendia社により無償で行われた。

Cardoso医師が顧問となっている団体は以下のとおりである。
Cardoso has advisory roles with Amgen, Astellas Pharma/Medivation, AstraZeneca, Celgene, Daiichi-Sankyo, Eisai Inc., GE Oncology, Genentech, GlaxoSmithKline, MacroGenics, Medscape, Merck-Sharp, Merus, Mylan, Mundipharma, Novartis, Pfizer, Pierre Fabre, prIME Oncology, Roche, Sanofi, Seattle Genetics, and Teva Pharmaceutical Industries Ltd.

 

翻訳松谷香織

監修斎藤千恵子(薬学、毒性学/ロズウェルパ―クがんセンター 免疫療法部門)

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