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がんサバイバーのがん関連認知障害

発見および管理戦略

がん関連の認知障害は化学療法に限定されない。ある集学的アプローチにより、その複雑なメカニズムに関する知識が向上した。現在、がん患者やサバイバーが認知障害に対処し、生活の質(QOL)を改善できるように、認知リハビリテーションプログラムを評価する研究が奨励されている。これらは、Centre François Baclesse(フランス、カーン)の腫瘍内科Florence Joly教授らが、2012年から2019年に公表された文献をレビューして得た結論である。今回の知見は、2019年10月16日、Annals of Oncologyで発表された。

著者らによれば、非中枢神経系がん患者ではがん関連認知障害を化学療法後に調べることが多い。客観的な認知障害と主観的な認知障害の関係は、しばしば心理的要因と関連している患者の訴えと合わせて今なお議論されている。2011年および2015年にInternational Cancer and Cognition Task Force(国際がんと認知作業部会)が発表した最新報告は、主に神経心理学的検査と化学療法による臨床データに焦点を当てたものであった。それ以降、他のがん治療法と病態生理学的メカニズムの潜在的影響を強調する文献が増えてきた。新世代のホルモン療法、分子標的療法、免疫療法により一部の患者では生存率が改善した結果、認知機能に影響が出る可能性が生じてきた。そのため、治療が神経機能に及ぼす長期的な毒性影響は、QOLの観点から重要課題である。

本研究チームは研究の背景として、認知障害の原因が治療、がんそのもの、心理的要因にあるかどうかは依然として不明であるとしている。さらに、年齢、遺伝的多型、心理社会的要素などの要因が認知障害のリスクを高くする傾向があることが複数の研究から示唆されている。認知障害は、がんケアが長期に及ぶ中での自立、仕事への復帰、社会的関係、自信という観点でQOLにマイナスの影響を与えるため、患者からがん関連認知障害の管理を望む声が高まっている。これを受けて、がん患者に認知リハビリテーションを実施する研究が行われるようになった。

本論文で著者らは、新規抗がん療法の実施の増加や、集学的(前臨床、イメージング)および介入(管理)研究戦略の進展を踏まえ、非中枢神経系がんにおけるがん関連認知障害の最新事情を提示する。その状況において、著者らはPubMedを利用して、2012年から2019年3月までに公表された文献の中で「認知」、「がん」、「抗腫瘍薬」、「化学療法」をキーワードとして検索を行った。

乳がん患者に関する研究から主に得られたエビデンスでは、化学療法後に顕著にみられた認知障害領域として記憶力、情報処理速度、注意力、および実行機能を挙げている。本研究チームによれば、ホルモン療法や分子標的療法など他のがん治療法も認知障害を引き起こす可能性があることが最近の調査でわかっている。

がん関連認知障害に関連する素因、生物学的マーカーまたは脳機能に関する知識は向上している。 年齢、および、アポリポタンパク質E、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ、BDNFの遺伝型多型などの要因により、認知障害のリスクが高くなる傾向がある。神経心理学的検査での好ましくない結果は、化学療法後の灰白質の体積低下、機能結合性および活性化の低下と関連していた。

動物では、前頭葉を介する海馬記憶および実行機能が、化学療法の影響を特に受けやすいことが示されていた。それは、神経新生の変容、ミトコンドリア機能障害、または脳のサイトカイン応答に関係している。

次の重要な段階は、認知障害を管理するための戦略を特定することであり、認知訓練と身体運動レジメンを評価する初期研究が含まれる。

がん関連認知障害のメカニズムを定義し、医療と患者リハビリテーションを最適化するために、がん専門医、神経科医、画像研究者、神経科学者による集学的協力が奨励される。認知障害の早期発見は特に高齢患者において必要であり、治療開始前および治療中に腫瘍・老年病医や神経科医の受診を勧めて認知障害がないか調べるのがよい。がん関連認知障害の管理は、神経変性疾患患者の場合と同様に臨床診療に組み入れるべきである。

Cancer and Cognition Platformは、フランスのLigue contre le Cancerの支援を受けている。

Reference:Lange M, Joly F, Vardy J, et al. Cancer-related cognitive impairment: an update onstate of the art, detection, and management strategies in cancer survivors. Annals of Oncology; Published online 16 October 2019. pii: mdz410. doi: 10.1093/annonc/mdz410.

翻訳山田登志子

監修太田真弓(精神科・児童精神科/クリニックおおた院長)

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