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薬剤費および事前承諾手続きが障壁であることが研究で浮き彫りに

ASCOの見解
「がんケアの高額な費用には多くの側面があり、適時に一貫したケアを受ける際の障壁になることが多くあります」と、ASCOの専門委員であり、クオリティケアシンポジウム・ニュースプランニングチームのメンバーであるNeeraj Agarwal医師は述べた。「経口抗がん剤について本稿で示された薬剤の高額な自己負担費用は、処方数の減少、治療期間の短縮、およびがん関連転帰の悪化と関連があります。もう1つの側面は管理上の負担であり、事前承諾手続きの大部分が冗長であると研究で判明しました。病院と民間保険会社(支払者)との緊密な協力によって、このような状況をなくし、医療システムの効率を改善することができます」。

米国臨床腫瘍学会(ASCO)のクオリティケアシンポジウムで発表予定の2つの研究によると、薬剤費と、治療計画の事前承諾手続きの要件は、がん治療の障壁となり、多くの患者の予後に影響を及ぼす可能性がある。同シンポジウムはサンディエゴのヒルトン・サンディエゴ・ベイフロントで9月6日~7日に開催される。

高額ながん治療費の問題に国が取り組んでいる中、2つの新たな研究によりこの費用のさまざまな側面が検討されている。研究はそれぞれ、経口がん治療薬の高い自己負担額が全生存率にどの程度影響するかの検証、および医療システムと民間保険会社(支払者)との協力の成功がいかに事前承諾プロセスを合理化し、患者をより迅速に治療に導くかの証明である。著者らは、サンディエゴのヒルトン・サンディエゴ・ベイフロントで9月6日~7日に開催される米国臨床腫瘍学会(ASCO)のクオリティケアシンポジウムで知見を発表する。

以下は、治療費に関する2つの主な研究の要約である。

特定の薬の自己負担費用は治療を制限し、生存率を低下させる可能性がある

[要約にはアブストラクト更新データが含まれる]

経口チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の自己負担(OOP)費用は、処方数の減少および治療期間の短縮につながるだけでなく、特定のがんゲノム変異を伴う進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の生存率の低下に関連することが、シアトルのフレッド・ハッチンソンがん研究センターにより明らかになった。経口チロシンキナーゼ阻害剤はこれらの患者にとって有効な治療法だが、費用が高額である。

この研究は、ワシントン州のSEER(Surveillance, Epidemiology, and End Results)登録から特定されたステージ4の非小細胞肺がん患者106人を対象とした。患者には、上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異および未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)遺伝子変異があった。登録データと医療保険請求データを一対とした。患者登録には、経口チロシンキナーゼ阻害剤の処方が1回以上必要とされた。研究者は、治療開始から3カ月間のチロシンキナーゼ阻害剤の自己負担額の中央値を算出した。患者は、自己負担額に基づいて4群(四分位群)に分類された。

多変量解析から、ワシントン州で自己負担額の中央値が最も高い群(4分の1)の患者は、チロシンキナーゼ阻害剤治療を開始して3カ月後に死亡する可能性が他のすべての群の患者の2倍を超えることがわかった(調整ハザード比 2.31、p = 0.003)(更新データ)。

「チロシンキナーゼ阻害剤の自己負担額が最も高い群の患者は死亡のリスクが高いのです」と、フレッド・ハッチンソンの腫瘍内科医およびアウトカム研究者であり、筆頭著者のBernardo H. L. Goulart医師(理学修士)は述べた。「より大きな、全米規模の症例数でこの結果を確認できれば、その知見により、このような有効性の高い薬剤についてメディケアでの保険適用の見直しを主張できるようになります」。

確固たる結論を導き出す前に、より大きな全米を代表する症例数で結果を確認する必要があり、研究者はそのような研究を計画中である。

アブストラクトの全文はこちらを参照のこと。

事前承諾の多くは不要。民間保険会社(支払者)と協力し、事前承諾の手続きを省くことにより管理上の負担が軽減する

会議で発表されるもう1つの研究で、Seattle Cancer Care Alliance(SCCA)の研究者は、画像検査の事前承諾申請の大部分(94.8%)が即座にまたは追加情報の提供後に承認されたことを示した。この調査結果により、Seattle Cancer Care Allianceは地域の民間大手保険(支払者)と提携し、事前承諾を不要とした。

「事前承諾は医療の必要性を確保することを目的としていますが、この追加要件は管理上の負担を増大させている可能性があります」と、Seattle Cancer Care Allianceの品質および価値アナリストであり、筆頭著者のMallika Sharma公衆衛生学修士は述べた。「場合によっては、このプロセスにより患者の治療に著しい遅れが生じ、不安が高まり、生活の質が低下することさえあります」。

画像検査の要求を精査した後、事前承諾請求の94.8%が即座に承諾、または追加資料の提供後に承認されており、請求の2.15%が異議申し立て後に承認された。医学的に必要な基準を満たしていなかったのは事前承諾請求の3%のみであった。

これらの結果をふまえ、Seattle Cancer Care Allianceはすべての画像検査(PETおよびPET/CTを除く)要求の事前承諾をなくすために、民間大手保険会社と連携した。この合意の一環として、検査を発注するすべての臨床医は、全米総合がんセンターネットワーク(NCCN)の画像検査の適切な使用基準(Imaging Appropriate Use Criteria)に関するトレーニングの修了が必要とされた。内部監査によると、Seattle Cancer Care Allianceのコンプライアンス達成率は100%であった。

「Seattle Cancer Care Allianceは、組織内のツールを使用して臨床上の意思決定を支援しています」と、主任研究員のTracy Wong経営学修士は述べた。「しかし、ほとんどの生涯電子カルテには、保険会社(支払者)の医療保険体制に沿った臨床方針決定の支援を組み込む機能があり、これにより、ケアの迅速化と改善のための比較的単純で拡張可能な方法が実現します。これが保険支払者の求めていることです。つまり医療提供者がリアルタイムで最新のエビデンスに基づいた診療ガイドラインにアクセスできることです」。

アブストラクトの全文はこちらを参照のこと。

今年のクオリティケアシンポジウムには、がん患者のケアの質を向上させる取り組みに焦点を当てた320以上の抄録が含まれる。記者向けの現地施設には、作業用ニュースルームがあり、質の高いケアの第一人者の話を聞く機会もある。

メディア向け情報はこちら:www.asco.org/QCSpresski

 

翻訳坂下美保子

監修小宮武文(腫瘍内科・Parkview Cancer Institute)

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