EMAが、フルオロウラシル関連医薬品による治療前の患者スクリーニングの検討を開始

EMAが、フルオロウラシル関連医薬品による治療前の患者スクリーニングの検討を開始

2019年3月15日、欧州医薬品庁(EMA)は、フルオロウラシル(5-フルオロウラシルまたは5-FUとしても知られる)含有医薬品、およびそれに関連する医薬品であるカペシタビン、テガフール、フルシトシン(これらは体内でフルオロウラシルに変換される)の審査を開始したと報告した。本審査では、既存のスクリーニング方法および、重篤な副作用のリスクが高い患者を同定する上での有用性を検討する。

フルオロウラシル(注射による投与)、カペシタビン、テガフールはがん治療薬だが、フルオロウラシルの局所投与(皮膚に塗布)はさまざまな皮膚疾患に使用され、フルシトシンは重度の真菌感染症に使用される医薬品である。

一般集団の最高8%はジヒドロピリミジン脱水素酵素(DPD)が低く、一般集団の最高0.5%は酵素を完全に欠いている。フルオロウラシルの分解にはDPDが必要である。

処方者は、患者がDPDを欠いていることに気づかず、これらの患者にフルオロウラシルまたは関連物質を投与した場合、身体はフルオロウラシルを分解できず、血液中に蓄積する。

これらの医薬品でみられる高濃度のフルオロウラシルの蓄積は、好中球減少症、神経毒性、重度の下痢および口内炎などの重度で生命を脅かす副作用を引き起こす可能性がある。したがって、DPDの完全欠損症患者には、フルオロウラシルまたは体内でフルオロウラシルを形成しうる医薬品を投与してはならない。

これらの医薬品のほとんどの製品情報は、DPDの完全欠損症患者には使用すべきではないと記載されている。がんの治療に用いられるほとんどの医薬品には、DPD欠損症に対する遺伝子検査が推奨されているが、治療開始前のDPD欠損症に対する体系的なスクリーニングは必須ではない。さらに、遺伝子検査およびその他のDPDスクリーニング方法に関する新たなデータが最近公表され、現在の推奨事項に影響を及ぼす可能性がある。

EMAでは今後、DPD欠損を検出するための既存のスクリーニング法に関して利用可能なデータを評価し、これらの医薬品の安全な使用を確実にするために、その使用方法に何らかの変更が必要かどうかを勧告する。

自分の薬について心配している患者さんは、医師の診察を受ける必要があり、医師の助言を求めずに医薬品の服用を中止してはいけない。

医薬品に関する詳細

本審査は、フルオロウラシルを注射による投与または皮膚に塗布する医薬品、ならびにカペシタビンおよびテガフールを含み、体内でフルオロウラシルに変換される内服薬(いわゆるフルオロウラシル・プロドラッグ)に関するものである。抗真菌薬フルシトシンは注射や経口で投与され、その一部は体内でフルオロウラシルに変換される。

フルオロウラシルの注射投与およびそのプロドラッグ薬は、さまざまながんの治療に使用されている。それらは新しいDNAをつくる酵素を妨害し、がん細胞の増殖を妨げる働きをする。

皮膚に塗布されるフルオロウラシルは、日光角化症や皮膚疣贅などのさまざまな皮膚疾患に用いられる。

カペシタビンおよびテガフールを含有する医薬品はEMAにより承認され、ゼローダ(欧州商品名:Xeloda)、ティーエスワン (欧州商品名:Teysuno)、およびカペシタビンを含有するさまざまなジェネリック医薬品として販売されている。これらの医薬品に関する詳しい情報は、EMAウェブサイトで閲覧できる。

テガフールとカペシタビンを含有する医薬品の中には、フルシトシンとフルオロウラシルのすべての医薬品と同様に、国レベルで認可されているものもある。

手順の詳細

本審査は、指令2001/83/ECの第31条に基づき、フランス医薬品庁(ANSM)の要請により開始された。

本審査は、一連の勧告を行うヒト医薬品の安全性問題の評価を担当するEMA委員会であるPharmacovigilance Risk Assessment Committee (PRAC)によって実施されている。その後、PRACの勧告は、ヒトへの使用のための医薬品に関する質問に責任を負うヒトへの使用のための医薬品委員会に送られ、委員会は意見を採択する。審査手続きの最終段階は、欧州委員会による、すべてのEU加盟国に適用される法的拘束力のある決定の採択となる。

翻訳担当者 三宅民子

監修 高濱隆幸(腫瘍内科/近畿大学医学部附属病院)

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原文掲載日 

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