医療現場の電子環境が医師のバーンアウトにつながる

ミネソタ州ロチェスター:保健医療における電子環境の増加と進歩が米国の医師に大きな影響を与えている。メイヨークリニック主導の全米医師を対象とした研究によると、電子健康状況記録およびコンピューター化医師オーダーエントリーの使用は、医師の満足度の低下、バーンアウト発症率の増加につながっている。調査結果はMayo Clinic Proceedingsに掲載されている。

メイヨークリニックの医師で、本研究の筆頭著者であるTait Shanafelt医師は、「電子健康状況記録には、ケアの連携を高め、ケアの質を改善することが大きく期待されている。しかし、現在の形式や実施状況では、医師の効率の低下や事務負担の増加、バーンアウトのリスク増加など、意図しない負の結果が数多く見られている」と述べる。

メイヨークリニックの調査員は、米国医師会(AMA)の研究員と共同で、ほぼ全米医師を記録したAMA医師マスターファイルを使用し、国家規模の実例を集めた。調査には、バーンアウトを検討するのに実証済みの手段を用い、参加医師の現場の電子環境を評価する本研究に特化して開発されたアイテムを使用した。

この研究により、事務負担、電子健康状況記録、およびコンピューター化医師オーダーエントリーに対する医師の満足度は、専門分野によって大きく異なることが判明した。家庭医、泌尿器科医、耳鼻科医、神経科医は、事務負担において最も満足度が低かった。電子健康状況記録およびコンピューター化医師オーダーエントリーの使用は、事務負担における低い満足度、バーンアウトのリスク増加と関連していた。研究員は、コンピューター化医師オーダーエントリーの使用が、バーンアウトリスクと最も強く関連する電子環境の特徴であることを見いだした。

この研究では、6,560人の現役医師を対象に2014年8月~10月に実施した調査のデータを使用した。本研究には、米国のあらゆる領域の医師が含まれ、結果は、年齢、性別、専門領域、現場の状況、一週間あたりの労働時間で調整された。

「電子健康状況記録、電子処方、コンピューター化医師オーダーエントリーは、ケアの質を改善する方法として大きく推奨されてきたが、事務負担や思考的負担を招き、中断や気が散ってしまうことも頻発している。これらはいずれも、医師のバーンアウトを引き起こしかねない。バーンアウトは、ケアの質を損ね、医療過誤のリスクを増加させ、医師の医療業務時間を減らすことも示されている。このことは、米国のヘルスケアシステムにとって、これら電子ツールのケアの質に対する全体的効果が不透明であることを示唆している」とShanafelt医師は述べる。

医師の電子環境におけるこれらの負の効果を軽減させるため、Shanafelt医師は、医師の事務負担を増加させず、効率を低下させない方法で電子ツールを組み入れる方法を見出すことを促している。

そのような最適な方法を特定し、また、今回の研究で見られた関連が原因であるかどうかを決定するには、さらなる研究が必要であると研究員は述べている。

共著者は、メイヨークリニックのLotte Dyrbye医師、Daniel Sateles氏、Jeff Sloan医師、Colin West医師、米国医師会のOmar Hasan医師、Christine Sinsky医師。

本研究は、メイヨークリニックのプログラムPhysician Well-beingより資金提供を受けた。

翻訳担当者 白石里香

監修 廣田 裕(呼吸器外科、腫瘍学/とみます外科プライマリーケアクリニック)

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