進行期軟部肉腫患者の治療薬としてのトラベクテジン

キャンサーコンサルタンツ

米国食品医薬品局(FDA)は、脂肪肉腫や平滑筋肉腫の亜型を含む進行期軟部肉腫(STS)患者の治療薬トラベクテジン[trabectedin](YONDELIS)の新薬承認申請(NDA)について優先審査に指定した。

トラベクテジンは新しい複合合成化合物の抗癌剤で、元々はホヤの一種Ecteinascidia turbinataから抽出したものである。この抗癌剤は癌細胞の増殖を抑制する効果があり、北アメリカ、ヨーロッパ、南アメリカ、アジアなど77カ国で進行期軟部肉腫の治療薬に単剤で承認されており、70カ国で再発性卵巣癌の治療薬としても承認されている。

軟部肉腫は筋肉、脂肪、血管、神経、腱、関節部軟骨など身体構造を支える軟組織に発症する癌の一種である。米国では、2015年に12,000人近くが軟部肉腫と診断を受け、およそ4,870人が軟部肉腫により死亡するであろうと推定されている。平滑筋肉腫は軟部肉腫の中でも進行性が高く、子宮、消化管、血管内皮などの平滑筋に発症する。脂肪肉腫は脂肪細胞に発症するもので、身体のあらゆる部位の脂肪細胞で発症しうるが、大腿部や腹腔での発症頻度が最も高い。

優先審査とは、重篤な病状の治療に用いる医薬品で、既存の医療選択肢と比較して大きな進展を示しうる医薬品を指定するものである。FDAの優先審査指定により、標準的な審査では10カ月かかるところを6カ月以内に審査を完了し、2カ月間にわたるNDAの評価、認定後に承認することができる。

優先審査は、第3相臨床試験に基づいて行われる。この第3相臨床試験は、成人STSで最も頻度の高い進行期脂肪肉腫と平滑筋肉腫患者の化学療法薬ダカルバジンと比較して、トラベクテジンの安全性と有効性を評価したものであり、アントラサイクリン系抗癌剤とイホスファミド、あるいは他の化学療法後にアントラサイクリン系抗癌剤の治療歴がある500人以上の患者が参加した。


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翻訳担当者 宮本満里

監修 東 光久(血液癌・腫瘍内科領域担当/天理よろず相談所病院)

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