アフィニトールはHER2陽性進行乳癌に有効

キャンサーコンサルタンツ

ハーセプチン®(トラスツズマブ)抵抗性HER2陽性進行乳癌の女性患者において、アフィニトール®(エベロリムス)を含む治療レジメンが癌の進行を遅延させることがわかった。この第3相臨床試験の結果は、2013 年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次集会で発表された。

アフィニトールは、mTORとして知られるタンパク質を阻害することにより効果を発揮する経口薬である。mTORタンパク質は癌細胞の分裂および血管新生の調節に重要な役割を果たしている。アフィニトールは現在、腎臓癌、膵神経内分泌腫瘍、上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)、腎血管筋脂肪腫およびホルモン受容体陽性HER2陰性乳癌の患者の治療に用いられている。

HER2陽性進行乳癌の女性患者においてアフィニトールを評価するため、研究者らはBOLERO-3として知られる第3相臨床試験を実施した。この試験にはHER2陽性の局所進行乳癌または転移性乳癌の女性569人が登録された。試験対象となるすべての患者はタキサン系化学療法剤による前治療歴を有し、ハーセプチンに抵抗性を示した。

この試験では、女性患者は以下の2つの治療群のいずれかに割り付けられた。
1)ビノレルビン+ハーセプチン+アフィニトール群
2)ビノレルビン+ハーセプチン+プラセボ群

  • 無増悪生存期間(癌の悪化がみられない生存期間)はアフィニトール群で7カ月、プラセボ群で5.8カ月であった。
  • 頻繁にみられる副作用には血球数の減少、口内の痛み(口内炎)、疲労、発熱、下痢、吐き気、食欲の減退および便秘が含まれていた。
  • 全生存期間の結果には、さらに長期にわたる追跡が必要となる。

アフィニトールはHER2陰性乳癌の特定の女性患者に有効であることがすでに示されており、今回の試験結果は同剤がHER2陽性進行乳癌にも有効である可能性を示している。

参考文献:

O’Regan R, Ozguroglu M, Andre F et al. Phase III, randomized, double-blind, placebo-controlled multicenter trial of daily everolimus plus weekly trastuzumab and vinorelbine in trastuzumab-resistant, advanced breast cancer (BOLERO-3). Presented at the 49th Annual Meeting of the American Society of Clinical Oncology. May 31-June 4, 2013; Chicago, IL. Abstract 505.


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翻訳担当者 寺本瑞樹

監修 原野謙一(乳腺科・婦人科癌・腫瘍内科/日本医科大学武蔵小杉病院)

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