アスピリンは癌の予防的治療に関与する可能性がある

キャンサーコンサルタンツ

新たな証拠により、アスピリンが癌の死亡リスクの減少に関与する可能性が示された。Nature Reviews Clinical Oncology誌の電子版で発表されたレビューの結果によると、予防的治療におけるアスピリン投与に関する臨床ガイドラインに、将来、癌の予防が盛り込まれる可能性があることを意味しているかもしれない[1]。

疾患予防におけるアスピリン投与に関する現行の臨床ガイドラインでは、心臓血管系に対する有益性のみを考察しており、この有益性はアスピリン誘発性出血による有害性の可能性を考慮して慎重に検討される。以前に実施された研究において、アスピリンを毎日服用することにより、大腸癌のリスクおよびポリープの再発が減少することが示されている。しかし、これらの利益性は、アスピリン誘発性出血による有害性の可能性を上回るものではない。

現在では、最近発表された心臓血管系に関する臨床試験の副次的解析により、アスピリンが実際に癌予防に関与している可能性が示されている。このデータから、低用量(1日75~100mg)でも、アスピリンを毎日服用することにより、全ての癌を含めた発症率も減少する可能性があるという最初のランダム化された証拠が示されている。実際には、この証拠から、アスピリン(75mg以上)を毎日服用することにより、全癌発症率および全癌死亡率を減少させる可能性が示唆される。

本レビューには、一次の予防臨床試験6試験が含まれており、これらの試験では、患者が低用量アスピリンを毎日服用する治療へランダムに割り付けられた。これらの結果から、アスピリン服用開始から3年後と5年後において、全癌発症率が約20%減少したこと、および服用開始から5年後を超える追跡調査期間において、約30%減少したことが示された。アスピリン服用開始から5年後以降に実施された追跡調査から、癌死亡率も減少したことが示された。観察されたこの利益は、75~100mgを超えるアスピリンの用量と共には増加しなかった。

注目すべき点として、本レビューから得られたデータから、Women’s Health Study(女性の健康に関する試験、WHS)で得られた結果が除外されていた。WHSは10年間の臨床試験で、女性は一日おきにアスピリン100mg服用し、癌発症率や癌死亡率の減少は認められなかったことが報告された。

研究者らはアスピリンを毎日服用することのリスクと利益の調査を続けている。しかし、アスピリンが癌の予防において有効な役割を果たす可能性があるという証拠が明らかになりつつあるようである。研究者らは、アスピリン治療の最初の10年間における全癌発症率の10%の減少でさえ、リスクと利益のバランスに影響する可能性を指摘した。それは、平均的リスクの集団では、アスピリンによる利益がリスクを上回る可能性を意味している。証拠が蓄積されるにつれて、アスピリンの予防的投与に関する臨床ガイドラインが、癌予防を盛り込むよう改訂される可能性があるので、引き続き注目して下さい。

参考文献:
[1] Thun MJ, Jacobs EJ, Patrono C. The role of aspirin in cancer prevention. Nature Reviews Clinical Oncology. Published early online April 3, 2012. doi:10.1038/nrclinonc.2011.199


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 渡邊 岳

監修 千種葉月(薬学)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

がんと生活・運動・食事に関連する記事

ストレス誘発性の免疫変化はがん転移を助長する可能性の画像

ストレス誘発性の免疫変化はがん転移を助長する可能性

過去数十年における研究から、お金の心配、仕事の問題、家族の緊張などの慢性的なストレスは、体内に化学変化を引き起こすことが証明されている。こうした変化は、血圧の上昇、炎症、特定のホルモン...
意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果の画像

意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果

ダナファーバーがん研究所意図せぬ体重減少は、その後1年以内にがんと診断されるリスクの増加と関連するという研究結果が、ダナファーバーがん研究所により発表された。

「運動習慣の改善や食事制限...
野菜、ナッツ/豆類が小児がんサバイバーの早期老化を軽減の画像

野菜、ナッツ/豆類が小児がんサバイバーの早期老化を軽減

米国臨床腫瘍学会(ASCO)​​ASCO専門家の見解  
「本研究により、小児期にがん治療を受けた成人において、濃い緑色野菜やナッツ・種子類の豊富な食事と早期老化徴候の軽減との間に強力な...
がん治療中の心身フィットネスにより入院や受診が減少の画像

がん治療中の心身フィットネスにより入院や受診が減少

米国臨床腫瘍学会(ASCO)ASCOの見解から引用「本試験によって、オンラインの心身フィットネスプログラムは、がん患者に支障なく提供することができ、治療に伴う合併症を軽減するこ...