口腔内のヒトパピローマウイルス(HPV)検出と頭頸部がんとの関連性が前向き試験で示される

米国国立がん研究所(NCI)ブログ~がん研究の動向~

新たな試験により、HPV16型による感染が一部の頭頸部がんの発症に先立って起きていることが確認された。これまでの研究では、HPV16型感染と頭頸部がんのうち中咽頭がんとの関連性が明らかになっていた。今回の試験は、がんと診断される以前に参加者から採取した検体を使用して確認した研究としては初めてのものである。

本研究は頭頸部がんのリスクとHPV16型以外のヒトパピローマウイルスによる感染との関連性を報告した研究としても、初めてのものである。

ニューヨークのアルベルト・アインシュタイン医科大学のIlir Agalliu医師とRobert D. Burk医師らによる、前向き試験の報告がJAMA Oncology誌の1月21日号に掲載された。

発がん性のHPV、特にHPV16型による口腔内感染は頭頸部がんの中でも、中咽頭がんのリスク因子である。米国ではHPV感染による中咽頭がんの発症率が増加している。

本研究を実施するために、研究者らは米国がん協会のがん予防試験II栄養コホートおよび前立腺、肺、大腸、卵巣がん検診試験である米国の大規模前向き試験、2つの試験から口腔内HPV感染と頭頸部がんの発症リスクに関してデータを解析した。

各コホート研究の開始時に全参加者は、がんがない状態であり、口腔洗浄液の検体を提供した。平均で約4年間追跡した後に、計132人の参加者が頭頸部がんと診断された。

頭頸部がんを発症した参加者とそれに対応する対照例として健康な396人の口腔内の細胞が含まれている口腔洗浄液検体について、HPVのDNAの有無を分析した。喫煙歴および飲酒量により調整した後では、口腔洗浄液検体にHPV16型が検出された者では、検出されなかった参加者に比べ、中咽頭がんを発症する確率がかなり高いと推定された。

「本研究の結果は、中咽頭がんの診断に先立ち口腔内にHPV16型のDNAが検出され、それが中咽頭がんのかなり高いリスクとなるという明確なエビデンスを初めて示すものです」とAgalliu氏は述べた。

以前の研究では、口腔内には粘膜型であるHPV16型をはじめとする発がん性のHPV型を含むアルファ属のHPV型のほか、多種類のHPV型が含まれていた。そこで、研究者らがその中に頭頸部がんと関連するものがあるかどうかも調べたところ、通常皮膚にみられるベータHPV属およびガンマHPV属の中のいくつかが口腔内に存在することも頭頸部がんの発症と関連性があることを見出した。

「これらの結果は、中咽頭がんの原因、特に診断前の口腔内HPVに対する考え方の参考になるものです。しかしながら、口腔内のHPVの検出をスクリーニング診断とするのは、まだ時期尚早です」と共著者であるNCIの疫学・遺伝学部門のAimée R. Kreimer博士は語った。

Burk氏は「それ以外のリスク因子、つまり喫煙やアルコール摂取量が頭頸部がんで口腔内のHPVとどのように相互作用するのかについても、さらに理解する必要があります」と付け加えた。

画像訳 
HPV陽性患者の3画像:中咽頭がん(太い矢印)が周辺リンパ節(細い矢印)にも拡大している

翻訳担当者 ギボンズ京子

監修 辻村信一(獣医学・農学博士、メディカルライター/メディア総合研究所)

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