鼻咽頭癌に対する併用療法において複雑な結果

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第3相臨床試験の結果は、鼻咽頭癌を放射線治療法および化学療法を併用して治療することは進行を有意に遅らせるが、この併用療法はほかの原因による死亡率を増加させる可能性もあることを示している。この結果はJournal of the National Cancer Institute誌に公表された。

鼻咽頭は軟口蓋(口蓋)の上および鼻の奥にある部位である。鼻咽頭癌は頭頸部癌の一種と考えられている。米国では年間およそ4万人が頭頸部癌と診断されている。

局所進行鼻咽頭癌は、隣接組織またはリンパ節に浸潤した癌を指す。一般的に標準治療には放射線治療と化学療法がある。しかし、この患者集団に行った放射線治療および化学療法に関する毒性(副作用)および癌に関連しない死亡率のデータは限られている。

最近のある試験で、局所進行鼻咽頭癌患者において、放射線治療および化学療法の併用療法の生存率と毒性を放射線治療単独療法の生存率と毒性と比較した。放射線治療および化学療法の併用療法群に使用した化学療法薬には、プラチノール (シスプラチン) およびフルオロウラシルがある。

5年目の時点で、放射線治療を単独で受けた患者と比較して、放射線治療および化学療法の併用療法を受けた患者の治療成功期間および無増悪生存期間は有意に改善されていた。癌の進行による死亡率も、放射線治療および化学療法の併用療法群の方が有意に低下していた。しかし、放射線治療および化学療法の併用療法の生存率の優位性は、毒性の増加およびより高い癌に関連しない死亡率のため低下した。すなわち、いったんこれらの転帰を考慮したならば、全生存率は両群で同様であったことになる。

進行した鼻咽頭癌の治療において化学療法を放射線治療に追加したことは癌の進行による死亡率を有意に低下させるが、ほかの原因による死亡率の増加により最終的には生存率の優位性が低下すると思われる。言い換えれば、放射線治療および化学療法の併用療法と放射線療単独療法との全生存率は同様である。

参考文献: Lee A, Tung S, Chua D, et al. Randomized trial of radiotherapy plus concurrent–adjuvant chemotherapy vs radiotherapy alone for regionally advanced nasopharyngeal carcinoma. Journal of the National Cancer Institute [early online publication]. July 15, 2010.


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翻訳担当者 有田香名美

監修 林 正樹(血液・腫瘍科)

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