小児がんサバイバーの糖分の多量摂取は早期老化リスクを上昇

全糖、加糖、および清涼飲料の摂取量が多い小児がんサバイバーは、砂糖の摂取量が少ない小児がんサバイバーと比較して老化関連の健康問題が多いことが、11月17日〜20日に開催された米国がん学会(AACR)の特別会議「老化とがん(Aging and Cancer)」において発表された。

小児がんは、化学療法や放射線療法などの過酷な治療が行われることが多く、これがのちに成長期の組織を損傷し、健康問題を引き起こす。小児がんサバイバーは、一般集団と比べて若齢で老化関連の健康問題を発症する傾向があることが確認された。

Park理学博士(ワシントン大学医学部のAlvin J. Sitemanがんセンター外科准教授、本研究筆頭著者)は、次のように説明している。「かつては、小児がんは不治の病でした。しかし、近年の治療の進歩に伴い、以前よりも小児がんサバイバーの生存年数は延長しています。

小児がんサバイバーは、通常より若い年齢で高確率で老化関連の健康問題を発症します。私たちは、この深刻な問題を遅らせるために、標的となる修正可能な因子が存在するかどうかを調べました」。

砂糖の多量摂取は、肥満、心血管疾患、糖尿病など、さまざまな健康問題に関連し、加齢に伴いそのリスクは上昇する。研究者らは、糖類が炎症など老化に関するメカニズムを加速させうる徴候も見出した。

本研究を発表するSitemanがんセンターの博士研究員であるTuo Lan博士は、次のように述べている。「小児がんサバイバーは非常に脆弱な集団です。糖類の摂取が早期老化に及ぼす影響は小児がんサバイバーと一般母集団とで同じか、小児がんサバイバーでより深刻かどうかに関心がありました」。

Lan氏らは、小児がんサバイバーを成人までモニターする研究である、St. Jude Lifetime Cohort(セントジュード生涯コホート)から食物摂取頻度質問票により日常食に関する情報を提供した患者3,322人を特定した。研究者らは、小児がんサバイバーの全糖、加糖、清涼飲料に関する1日の摂取量のデータを抽出した。

心臓発作、脳卒中、関節炎など45項目の老化関連の健康問題をまとめたDeficit Accumulation Index(DAI:損失累積指数)を用いて、小児がんサバイバーの早期老化のリスクを評価した。DAIスコアでは、指数に含まれる健康問題の数に対し、既存の健康問題との割合を算出した。DAIが、0.2未満の小児がんサバイバーは低リスク、0.2〜0.34の小児がんサバイバーは中リスク、0.35以上の小児がんサバイバーは高リスクと見なされた。

小児がんサバイバーの早期老化リスクは、糖類の1日25グラム摂取により、中リスク群サバイバーでは24%、高リスク群サバイバーでは30%上昇した。糖類がさらに25グラム増えると、中リスクでは19%、高リスクでは23%リスクが上昇した。

清涼飲料が早期老化リスクに与える影響は、特に高リスクの小児がんサバイバーに対して顕著に認められた。摂取量が1日2杯以上の人は、週に1杯未満の人よりも早期老化リスクが6.71倍高かった。中リスクの小児がんサバイバーにおいては、清涼飲料に関連したリスク上昇は54%であった。

Lan氏およびPark氏は、糖類が早期老化のリスクに寄与するメカニズム、ならびにこれらプロセスが小児がんサバイバーではどのように加速するかというメカニズムについて、本調査が今後の研究の礎となることを期待している。

Lan氏は、次のように述べた。「誰もが、糖類の摂取制限をすべきです。小児がんサバイバーはより脆弱であることを考慮すると、彼らは特に糖類の制限をすべきです。

糖類の摂取制限は必ずしも容易ではありません。私たちは、小児がんサバイバーが一層健康的な食習慣を維持し、健康全般のサポートに役立つ方法を見つける必要があります」。

本研究の限界には、横断的分析の特質が含まれており、このために糖類の摂取が早期老化のリスクを上昇するか否かが曖昧になっている。

本研究の資金は、セントジュード小児研究病院のワシントン大学セントルイス校Implementation Sciences Collaborativeおよび米国国立衛生研究所から提供された。Lan氏およびPark氏は、利益相反がないことを宣言している。

学会では、Park氏が同じコホートを用いて、糖質を除いた食習慣が早期老化のリスクに及ぼす影響に関する研究を発表する予定である。この研究では、Park氏らが、大量の糖分摂取などのいわゆる「ファストフード」を常食している小児がんサバイバーは、植物中心の食事を摂取している小児がんサバイバーと比べて早期老化のリスクが高いことを見出した。



監訳 太田真弓(精神科・児童精神科/クリニックおおた 院長)

翻訳担当者 平 千鶴

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原文掲載日 2022/11/17


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