小児がんサバイバー数が増加、多くが障害を抱える

小児がんサバイバー数が増加、多くが障害を抱える

小児がんサバイバー総数が増加していると推測されており、また、がん診断後5年以上生存している患者の大多数が慢性の健康障害を1つ以上抱えている可能性がある。これは、米国がん学会の機関紙Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention誌に発表された研究の報告である。

「小児がんサバイバーの推定有病率は増加しており、がん診断後5年以上経過している患者の晩期障害推定有病率も上昇していることがわかりました。すなわち、小児がんサバイバーはがん治療によって同時に生じる利益と障害とを経験しているのです」と、ノースウェスタン大学フェインバーグ医学校(所在地:シカゴ)予防医学教室で助教授を務め、公衆衛生学修士でもあるSiobhan M. Phillips博士は語った。

Phillips博士らは、米国内の小児がんサバイバー数を388,501人と推定したが、これは米国立がん研究所(NCI)のチームが2005年に出した先の推定値からは59,849人の増加である。このうち、84%ががん診断後5年以上生存していた。

約70%の小児がんサバイバーが軽度から中等度の慢性障害を有し、約32%が重度または日常生活に支障をきたす、あるいは生命を脅かす慢性障害を抱えていると推定された。20~49歳では、推定約35%が認知神経系の機能不全を有しており、この年齢層の13%から17%で、機能障害、活動制限、精神衛生上の障害、痛み、あるいは不安・恐怖があると自己申告していた。

「本研究により、がんの治癒にだけに注目することは、小児がんサバイバーシップの一部分のみを見ていることが明らかになりました」とPhillips博士は付け加えた。「発生率および重症度の両面から見て、この集団における慢性障害の負荷は深刻です。小児がんサバイバーが可能な限り長く生き、健康でいられるよう、障害負荷を効果的に軽減する方法や有効な治療調整とリハビリモデルをいかに組み入れるか考慮する取り組みを優先にしていかねばなりません」。

研究者らは、1975年から2011年までの9つのSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)データベースからのがん発症と生存の記録データと、米国およびカナダのがんセンター26施設で小児がん長期生存者14,000人からがん治療による有害事象と後遺症に関するさまざまな情報を得たChildhood Cancer Survivor Study(CCSS)コホートのデータを用いた。
まず、CCSSから障害ごとにそれぞれ発生確率を推定し、次にそれらの推定値に、SEERデータから推定した米国内の該当する生存者数を乗じた。

「これらの障害の多くは、一般集団においては多少なりとも修正可能であることがわかっていますが、一般集団向けの予防行為に関する指針を小児がんサバイバーに適用できるかどうかはわかりません」と、Phillips博士は補足した。「障害発生を効果的に予防し遅らせるよう、こうした障害に対する小児がんサバイバーの感受性に影響を及ぼす要因、すなわち、以下に限ったことではありませんが、身体活動や食事、治療の特性などの多層的な因子について、さらに理解を深める必要があります」。

本研究は、ノースウェスタン大学、NCI、およびSt. Jude Children’s Research Hospitalによる協同研究であった。

本研究には、米国立衛生研究所(NIH)が研究助成した。Phillips博士は利害の相反はないとしている。

翻訳担当者 菊池 明美

監修 寺島 慶太(小児血液・神経腫瘍/国立成育医療研究センター腫瘍科)

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