野菜、ナッツ/豆類が小児がんサバイバーの早期老化を軽減

米国臨床腫瘍学会(ASCO)

​​ASCO専門家の見解  
「本研究により、小児期にがん治療を受けた成人において、濃い緑色野菜やナッツ・種子類の豊富な食事と早期老化徴候の軽減との間に強力な関連性があることが明らかになりました。この結果は、小児がんサバイバーのQOLを高める上で、食事などの修正可能な生活習慣因子が、治療が終了してから長期間経過した後に重要な役割を果たすことを示しています。がん治療の後ただ生き延びることから豊かに生きることに焦点を移し、サバイバーシップ研究の新時代を築くことが目標です」とASCO専門家であるFumiko Chino医師は述べた。

試験の要旨

目的小児がんサバイバーの早期老化リスク軽減における植物性の食品および栄養素の役割
対象者がん診断から5年以上経過した小児がんサバイバーである成人3,322人
主な結果精製穀物を制限する一方で濃い緑色野菜とナッツ・種子類を多く含む食事は、小児がんサバイバーにおける早期老化リスクの軽減と関連する
意義本研究は、小児がんサバイバーに特化して植物性食品と早期老化リスクとの関係を調査した最初の研究である

成人の小児がんサバイバーにおいて食生活が老化に及ぼす影響について、St. Jude Lifetime Cohort (SJLIFE)の一環として実施された新しい研究(Journal of Clinical Oncology誌に掲載)により新たな知見が得られた。18歳から65歳までの3,322人が参加したこの研究では、濃い緑色野菜とナッツ・種子類の摂取量が多いほど早期老化のリスクが低く、精製穀物の摂取量が多いほどリスクが高いことが明らかになった。本研究の結果は、Deficit Accumulation Index(DAI)を用いた評価から得られたものであり、特定の食事の選択が小児がんサバイバーの長期的健康に及ぼす影響についての理解を進める一助となる。本研究は、小児がんサバイバーが長期的に健康を維持し生活の質を向上させる上で、特定の植物性の食事を選択することが重要であることが分かる、極めて重要な研究である。

試験について

「治療の進歩により、小児がん患者の寿命は延びています。われわれの研究は、このような治療に由来する遅発性の症状、特に早期発症型の老化に対処することに専念しています。われわれは、食事が老化プロセスにどのような影響を与えるかを探求し、これらの影響を緩和する方法を開発しようとしています。この研究は、小児がんサバイバーだけでなく早期老化の影響を受けやすい他の集団にも役立つでしょう」と、筆頭著者であるセントルイスワシントン大学医学部のMei Wang,氏(MS)は語った。 

この研究では、様々なタイプの小児がんサバイバーの食習慣を調査した。参加者の過去1年間の食生活は、果物、野菜(およびその下位群)、全粒穀物、精製穀物、ナッツ・種子類、その他の栄養素の全摂取量を対象として、食物摂取頻度調査票を用いて綿密に評価された。

早期老化の評価は、研究開始時にDeficit Accumulation Index(DAI)を用いて行われ、参加者は低、中、高の各リスク群に分類された。参加者の20%が早期老化の中リスク、8%が高リスクに分類されたことが注目される。 

早期老化とは、特に小児がんサバイバーにみられる、加齢に関連した健康症状の早期発症を指す。小児がんサバイバーは、がんの生存率が向上しているにもかかわらず、がんでない人と比較して、慢性疾患、認知障害およびフレイルを若年で発症することが多い。このような老化の促進は、がん治療が身体の生物学的老化プロセスに及ぼす長期的影響に一因がある。また、食事や身体活動などの生活習慣も影響している。本研究は、小児がんサバイバーのための具体的な食事ガイドラインを開発することを目的として、食事、特に植物性の食事が、このグループの早期老化をどのように緩和できるかを理解することに焦点を当てている。

参加者の属性 
性別および民族:男性54%、非ヒスパニック系白人85%。
がんの種類: 白血病36%、リンパ腫19%、中枢神経系腫瘍13%、ウィルムス腫瘍6%。
診断時の年齢:59%が10歳以前、24%が10~14歳、17%が15歳以上でがんと診断された

主な所見

濃い緑色野菜の摂取量が1,000kcalあたり2分の1カップ増えるごとに、早期老化の高リスク群に入る確率がほぼ半減する。

ナッツ・種子類の摂取量が1,000kcalあたり1オンス増えるごとに、早期老化のリスクが顕著に減少する。
精製穀物の摂取量が多いほど、早期老化のリスクが高くなる。
果物や全粒穀物の摂取量と早期老化リスクとの間に直接的な関係はない。
葉酸、ベータカロチン、ルテインおよびゼアキサンチン、ビタミンEなど、植物性食品に含まれる特定の栄養素は、早期老化リスクの低下と関連する。

次のステップ

本研究の研究者らは、個々の食品群を調べるだけでなく、成人の小児がんサバイバーの食事パターン全体を詳細に調べる予定である。このアプローチは、毎日の食生活が多様な食品の組み合わせからなる複雑なものであることを認識している。研究者らは、このようなパターンが早期老化リスクとどのように相関するかを理解することを目指す。さらに、この知識を、小児がんサバイバーの食生活改善に向けた実行可能な戦略に変換する道を模索する。

本研究は、米国国立衛生研究所、 St. Jude Children’s Research Hospital-Washington University St. Louis Implementation Sciences Collaborative、およびAmerican Lebanese-Syrian Associated Charities​​​​から一部支援を受けた。

  • 監訳 東 光久(総合診療、腫瘍内科、緩和ケア/奈良県総合医療センター)
  • 翻訳担当者 奥山浩子
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  • 原文掲載日 2024/01/23

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