FDAが小児のBRAF V600E変異陽性グリオーマにダブ+トラ併用療法を承認

 2023年3月16日、米国食品医薬品局(FDA)は、全身療法を必要とするBRAF V600E変異陽性の低悪性度グリオーマ(LGG;脳腫瘍)の1歳以上の小児患者に対し、ダブラフェニブ(販売名:タフィンラー、ノバルティス社)とトラメチニブ(販売名:メキニスト、ノバルティス社)の併用投与を承認した。また、錠剤を飲み込むことができない患児向けに両薬剤の新たな経口製剤も承認された。

 これは、BRAF V600E変異陽性LGGの小児患者に対する初回療法としてFDAが初めて承認した全身療法となる。

 有効性は、初回全身療法を必要とするLGG(WHOグレード1および2)患者を対象とした多施設共同非盲検試験であるCDRB436G2201試験(NCT02684058)において評価された。患者は、ダブラフェニブ+トラメチニブ(D+T)群、またはカルボプラチン+ビンクリスチン(C+V)群に2:1で無作為に割り付けられた。BRAF変異の有無は、施設または中央検査機関の検査で前向きに確認された。また、利用可能な腫瘍サンプルは、変異の有無を中央検査機関で後ろ向きに評価された。D+Tは、年齢と体重に応じた投与量で、効果が認められなくなるか、あるいは許容できない毒性が認められるまで投与された。C+Vは、体表面積に基づいて、それぞれ175 mg/m2および1.5 mg/m2(12 kg未満の患者には0.05 mg/kg)を10週間の導入療法として1サイクル投与し、その後、6週間の維持療法を8サイクル投与された。

 有効性の主要評価項目は、RANO LGG(2017年)基準に基づく独立判定による全奏効率(ORR)であった。有効性の副次評価項目は、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)であった。一次主要解析は、全患者が32週間以上の治療を完了した時点で実施された。

 LGGコホートでは、110人がD+T群(n = 73)、C+V群(n = 37)に無作為に割り付けられた。ORRは、D+T群で46.6%(95% CI: 34.8, 58.6)、C+V群で10.8%(95% CI: 3.0, 25.4)であった(p =< 0.001)。奏効期間(DOR)は、D+T群で23.7カ月(95% CI: 14.5、推定不能)、C+V群で推定不能(95% CI: 6.6、推定不能)であった。PFSは、D+T群で20.1カ月(95% CI: 12.8, 推定不能)、C+V群で7.4カ月(95% CI: 3.6, 11.8)(HR = 0.31 [95% CI: 0.17, 0.55]; p =< 0.001) であった。なお、全例が32週間以上の治療を終了またはそれ以前に治療を中止した時点で実施したOSの中間解析において、C+V群で1人の死亡が確認された。OSの中間解析において、統計学的有意差は認められなかった。

 D+Tを投与された安全性解析対象集団全体(N = 166)において特に多く(20%以上)認められた有害反応は、発熱(66%)、発疹(54%)、頭痛(40%)、嘔吐(38%)、 筋骨格系疼痛(36%)、疲労(31%)、乾燥肌(31%)、下痢(30%)、悪心(26%)、鼻出血およびその他の出血イベント(25%)、腹痛(24%)、ざ瘡様皮膚炎(23%)であった。特に多く(2%以上)認められたグレード3または4の臨床検査値異常は、好中球数減少(20%)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)増加(3.1%)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)増加(3.1%)であった。

 小児患者におけるダブラフェニブおよびトラメチニブの推奨用量は体重に基づき、ダブラフェニブは1日2回、トラメチニブは1日1回経口投与される。ダブラフェニブおよびトラメチニブは、疾患進行または許容できない毒性が認められるまで継続する。

 タフィンラーとメキニストの全処方情報はこちら(タフィンラー, メキニスト)を参照。

  • 監訳 河村 光栄 (放射線科/京都桂病院)
  • 翻訳担当者 後藤 若菜
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  • 原文掲載日 2023/03/16

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