カボザンチニブ+ニボルマブ併用で進行肝臓がんの手術が可能に

薬剤併用療法によって、通常は手術の対象とならない一部の肝臓がん患者に根治手術を行える可能性がある。

キナーゼ阻害薬のカボザンチニブ(販売名:カボメティクス)と免疫療法薬のニボルマブ(販売名:オプジーボ)を併用することで、通常は手術の対象とならない一部の肝臓がん患者にも根治手術を行える可能性がある。

この薬剤併用療法による効果は、7月29日付のNature Cancer誌にジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターの研究者らによって発表された。この研究では、手術による治療ができなかった肝細胞がん(HCC)患者15人のうち、12人がこれらの薬剤によってがんの外科的切除に成功した。この12人のうち5人は、薬物治療後の腫瘍の残存率が10%以下であった。

この併用療法は、全原発性肝がんの90%以上を占め、世界でのがんによる死亡原因の第4位である肝細胞がんに対する待望の治療法である。世界的に見ると、肝細胞がんの診断時に外科的切除が可能な症例は30%に満たないと言われている。これは、肝臓が損傷していたり、がんが組織に広がったりして、手術が困難となるためである。

「この研究に登録された患者さんは、通常は根治が困難であると従来考えられてきたので、今回のような反応が見られたという事実は非常に喜ばしいことです。この治療戦略は、非常に厄介で根治困難な他の病気にも導入できる可能性があります」と、ジョンズホプキンス大学医学部腫瘍学助教であり本研究の筆頭著者のWon Jin Ho医師は述べる。

肝細胞がんは、固形がんの中では珍しく、手術を受けやすくするための全身治療が行われていなかったと、ジョンズホプキンス大学医学部腫瘍学助教であり上級著者のMark Yarchoan医師は言う。「これまでは根治困難であったが手術に持ち込めばうまくいく患者さんがいるのではないかとわれわれは予感していました。案の定、この研究に参加した患者さんの中には、以前であれば手術を受けられなかったと思われる人でも、現在腫瘍がない状態で生存している人がいます」。

今回の研究結果は、この薬剤の併用が、手術後のがんの再発率を改善する可能性も示唆している。手術が成功した患者であっても、再発率は50%以上になることがある。今回の研究では、手術を受けて腫瘍が大きく縮小した5人の患者は、これまで230日以上にわたって無病状態を維持していることがわかった。有意な腫瘍縮小効果が見られなかった7人の患者のうち4人は治療終了後56日から155日の間に病状が進行した。

カボザンチニブとニボルマブは、これまでにも進行肝臓がんの治療に単独または併用で使用されたことがあるが、研究者らは今回、これらの薬剤によって、根治する可能性がある手術を受けられる患者が増えるかどうかを特に検証しようとした。

「われわれは、標準治療を反映した薬剤の組み合わせを用いたいと考えました。今回の組み合わせは、治療効果を最大化するために2つの薬剤を併用するという点で、この分野が進んでいると感じられるものでした」とYarchoan医師は述べている。

患者は全員、キンメルがんセンター肝臓・胆管がん総合クリニックで募集した。このクリニックでは、外科、病理、腫瘍内科などの複数の専門家が患者を評価し、包括的な治療計画を検討する。このような集学的治療を目的としたチームワークは、患者にとっても良いことであるが、この種の研究にも役立つとYarchoan医師は付け加える。「外科医のみに診てもらう他の施設では、薬の追加について話し合う機会はありません」。

研究チームは、肝細胞がんが併用療法にどのように反応したのか、あるいは反応しなかったのかを正確に知るために、この研究に参加した患者の血液や組織の生検によって免疫反応や腫瘍微小環境を詳しく調べた。イメージングマスサイトメトリーと呼ばれる手法により、複数の種類の細胞を一度に観察することができ、「それぞれの細胞が互いにどのような関係にあるのかを理解することができました」とHo医師はいう。

例えば、免疫B細胞の明らかな凝集はカボザンチニブとニボルマブへの反応を示しており、これは強力な抗腫瘍効果を裏付けるものである。また、この手法により、免疫抑制作用を持つ一部のマクロファージ免疫細胞にB細胞やT細胞が近接していることが、併用療法に抵抗性を示す腫瘍の特徴であることもわかった。

今後、このように腫瘍微小環境を詳細に調べることで、臨床医がB細胞の反応を促進する薬剤を探したり、肝臓の免疫抑制性免疫細胞を再プログラムして治療に反応しやすくしたりするのに役立つだろうと研究チームは述べている。

他に研究に参加したのは、以下のとおりである。ジョンズ・ホプキンス大学より、Qingfeng Zhu、Jennifer Durham、Aleksandra Popovic、Stephanie Xavier、James Leatherman、Aditya Mohan、Guanglan Mo、Shu Zhang、Nicole Gross、Soren Charmsaz、Brad Wilt、Ihab R. Kamel、Matthew Weiss、Benjamin Philosophe、Richard Burkhart、Whilliam Burns、Chris Shubert、Aslam Ejaz、Atul Deshpande、Ludmila Danilova、Genevieve Stein-O-Brien、Elizabeth Sugar、Daniel A. Laheru、Robert A. Anders、Elana J. Fertig、およびElizabeth Jaffee。Fluidigm株式会社より、Dongxia Lin、Derek Quong。

本研究は、ジョンズホプキンス大学ブルームバーグ・キンメルがん免疫療法研究所、Emerson Collective Cancer Research Fund、米国国立衛生研究所(NIH)からの研究費P50 CA062924 、P30 CA006973、U01 CA212007、U01 CA21200 、エクセリクス(Exelixis)社、ブリストル・マイヤーズスクイブ(Bristol Myers Squibb)社の支援を受けて行われた。

翻訳担当者 平沢沙枝

監修 東海林洋子(薬学博士)

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