進行胆管がんのFGFR+mTOR標的治療が研究で示唆される

胆管がんというまれで致死的ながんの患者において、有望な分子標的薬に対する耐性がどのように発現するかを示した新たな研究が、オハイオ州立大学総合がんセンターの アーサー・G・ジェームズがん病院およびリチャード・J・ソロベ研究所(OSUCCC – James) により示された。

Molecular Cancer Therapeutics誌に発表された本研究は、進行した時点で他の薬剤を追加すると、FGFR阻害薬と呼ばれる初期治療薬に対し、腫瘍細胞が再感作する可能性があることも示唆している。

「FGFR陽性胆管がん患者の大半は、臨床試験で新たなFGFR阻害薬から効果を得ていますが、残念なことに、ほとんどはその薬に耐性を獲得します」と、OSUCCC – Jamesの腫瘍内科医兼研究員であり、本研究の筆頭研究者である Sameek Roychowdhury医学博士は述べている。「私たちは、本研究が薬剤耐性を理解し、異常なFGFR遺伝子変異による胆管がんや他のがんの治療法を進歩させる重要なステップになると信じています」。

知見はさらに、FGFR阻害薬 に対する耐性の原因となる後天性の変異について血中循環腫瘍DNAの断片をモニターすることにより耐性変異の存在を明らかにし、mTOR阻害薬という追加の薬の服用を開始すべき時期を示すことができることを示唆している。

胆管がんは通常5年生存率が2%の進行した段階で診断されるので、通常治癒は困難である。早期に診断された患者も、再発率が高いため、5年生存率は低くなっている。胆管がん患者の15~20%にFGFR遺伝子の異常な活性化が発生しているが、FGFR阻害薬は耐性が発現するまでこれらの患者の70~80%に効果を示している。OSUCCC – JamesではFGFR阻害薬に関する6件の臨床試験が存在する。

「治療に対する耐性がどのように発現し、それをどのように予防するかをより良く理解することは、胆管がんやFGFR変異による他のがんの治療法を改善するために重要です」とRoychowdhury’s labの博士研究員であり、筆頭著者のMelanie Krook博士は述べた。

「FGFR標的治療法で治療した胆管がん患者では、mTOR阻害薬などの他の薬との併用療法が奏効する可能性があることを私たちの知見は示唆しています。この組み合わせのための最適な戦略を特定するために、追加の研究試験が必要です」と彼女は付け加えた。

本研究のためにRoychowdhury博士や Krook博士らは、疾患が進行し、FGFR阻害薬インフィグラチニブに対する耐性を獲得した後に死亡した、胆管がん患者のがん細胞のFGFR(線維芽細胞成長因子受容体)遺伝子を検査した。

研究者は患者の腫瘍細胞で、FGFR阻害薬に対する耐性を獲得させる2つの後天性のFGFR変異を確認した。その後がん細胞株を用いて、変異がmTOR生化学的経路の活性につながったことを学んだ。これによりFGFR阻害薬が存在していてもがん細胞の増殖が可能になったのである。そして細胞にmTOR 阻害薬を追加すると、FGFR阻害薬に対する感受性が回復した。

主要な知見

・2つの後天性FGFR2変異であるp.E565A およびp.L617Mは、FGFR阻害薬インフィグラチニブに対する耐性をもたらすことが認められた。

・p.E565A変異は、mTORシグナル経路を亢進し、胆管がん細胞株のインフィグラチニブおよび他のFGFR阻害薬に対する感受性を減じる。

・mTOR経路を阻害する薬がインフィグラチニブおよび他のFGFR阻害薬に対する細胞の感受性を回復させた。

「全体として私たちの知見によると、進行の時点で投与されるmTOR阻害薬は、これらの薬に耐性を発現した患者においてFGFR阻害薬に対する腫瘍細胞の感受性を回復させる可能性があることが示唆されています」とRoychowdhur博士は述べた。

本試験はAmerican Cancer Society (MRSG-12-194-01-TBG), the Prostate Cancer Foundation, the National Institutes of Health (HG006508, CA202971, CA216432), the American Lung Association and Pelotoniaの補助金によって支援された。

本研究の他の研究者はAlexandria Lenyo, Max Wilberding, Hannah Barker, Mikayla Dantuono, Hui-Zi Chen, Julie W. Reeser, Michele R. Wing, Jharna Miya, Eric Samorodnitsky, Amy M. Smith, Thuy Dao, Dorrelyn M. Martin, John L. Hays and Aharon G. Freud、オハイオ州立大学Aharon G. Freud、ピッツバーグ大学Kelly M. Bailey、バンダービルト大学Kristen K. Ciomborである。

翻訳担当者 白鳥 理枝

監修 畑 啓昭(消化器外科/京都医療センター)

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