ザニダタマブはHER2増幅胆道がんの奏効を促進

MDアンダーソン・ニュースリリース

MDアンダーソンによる試験が、選択肢の限られた患者に、ザニダタマブが治療の選択肢となる可能性を示す

抄録4008

治療抵抗性のHER2陽性胆道がん(BTC)患者に対し、HER2標的二重特異性抗体Zanidatamab[ザニダタマブ]が持続的な奏効を示したと、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者が、米国臨床腫瘍学会年次総会2023(ASCO2023)で報告した。本試験結果は、本日The Lancet Oncology誌でも公表された。

HER2陽性がんの患者80人を対象としたグローバル第2相のHERIZON-BTC-01試験の第1の患者群では、全奏効割合(cORR)は41%、追跡期間中央値12.4カ月での奏効期間(DOR)中央値は12.9カ月であった。33人の奏効者のうち、49%が継続的な奏効を示し、82%が16週間超の持続的奏効を示した。本試験は胆道がんを対象とした、HER2標的薬の最大規模の試験である。 

「初回治療で進行した胆道がん患者に対する化学療法では通常、奏効率が5%となります」と、Shubham Pant医師は述べた。同医師はグローバル試験の責任者であり、消化器内科腫瘍学部門・がん治療薬研究部門の教授である。「今回の結果は、ザニダタマブが持続的な奏効を達成できることを証明しており、これまで選択肢が限られていた患者さんに、新たな治療の機会をもたらすかもしれません」。

初回治療後に進行した進行性胆道がんの患者は、標準治療を受けるが、臨床効果は限定的で、生存率もわずかしか改善しない。HER2標的治療薬はHER2陽性乳がんおよび胃がんで生存率を向上させているが、現在、胆道がんに対して承認されたHER2標的治療薬はない。 

ザニダタマブは、Funda Meric-Bernstam医師(消化器内科腫瘍学部門長)による第1相試験でまず評価を行った。本試験の結果、胆道がんを含むさまざまながん種に対し、HER2がアクショナブルな標的(治療薬が効きそうな見込みがある標的)であることが裏付けられた。MDアンダーソンの研究者はこれらの結果に基づき、胆道がん患者を対象としたザニダタマブの第2相試験を進めた。 

胆道がんは胆管がんとしても知られ、肝臓から小腸まで伸びる胆管という細い管に発生する。胆道がんには3種類あり、その名称はがんが発生する場所に基づいている。米国がん協会によれば、米国では毎年約8,000人が胆道がんと診断されている。しかしこれらのがんは診断が難しく、しばしば誤って分類されるため、実際の数はもっと多いだろうとPant医師は述べた。転移性胆道がんの5年生存率は5%未満であり、新たな治療法の必要性が差し迫っていることを強調している。 

この非盲検単一群試験では、肝内胆管がん、肝外胆管がん、および胆嚢がんを含むHER2遺伝子増幅進行性胆道がん患者を対象に、ザニダタマブの抗腫瘍活性を評価した。 本試験は67施設で実施され、患者は腫瘍の免疫組織化学的検査によるHER2発現(陽性または低/陰性)に基づき、2つの患者群に分けられた。主要評価項目は、HER2陽性群での全奏効割合であった。 

本試験には、HER2陽性群に80人、HER2低/陰性群に7人が登録された。すべての患者は、ゲムシタビンを含む前治療を一度受けていた。年齢の中央値は64歳で、患者はアジア系65.5%、白人28.7%、その他5.7%であった。試験参加者のうち、52%が胆嚢がん、30%が肝内胆管がん、18%が肝外胆管がんの患者であった。 

HER2低/陰性群では、ザニダタマブに対する奏効は認められなかった。両群内で、グレード3の治療関連の有害事象が18%の患者で生じた。有害事象のためにザニダタマブを中止した患者は2人(2.3%)であった。グレード4または5の治療関連の有害事象は報告されなかった。 

「今回のデータを踏まえると、HER2陽性胆道がんに対する有効な治療の選択肢として、ザニダタマブの研究を続けるべきだと強く考えています」とPant医師は述べた。「ザニダタマブは患者の転帰を改善するかもしれないことから大いに期待がもてます」。 

Pant医師らは現在も、試験に参加した患者の無増悪生存期間と全生存期間の評価を続けている。さらに、HER2陽性胆道がんに対する単剤療法、および初回化学療法との併用療法としてのザニダタマブの治療の可能性をさらに検討するための臨床試験も進行中である。 

  • 監訳 泉谷昌志(消化器内科、がん生物学/東京大学医学部附属病院)
  • 翻訳担当者 藤永まり
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  • 原文掲載日 2023/06/02

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