乳がんT-DXd治療/乳がんCDK阻害薬/虫垂がんにBRAF標的薬

乳がんT-DXd治療/乳がんCDK阻害薬/虫垂がんにBRAF標的薬

特集:研究、リスクに応じた個別化検診、乳がん治療の進歩、膀胱がんと前立腺がんに対する有望な結果ーMDアンダーソン研究ハイライト2025/02/10

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究ハイライトでは、がんの治療、研究、予防における最新の画期的な発見を紹介している。これらの進歩は、世界をリードするMDアンダーソンの臨床医と科学者による、垣根を超えた継ぎ目のない連携によって可能となり、研究室から臨床へ、そしてまた研究へと発見がもたらされる。本号には、今週開催される2025年米国臨床腫瘍学会(ASCO)泌尿生殖器がんシンポジウムで発表される研究が含まれている。

乳がん患者に対するトラスツズマブ・デルクステカン治療後HER2状態の再評価の重要性が研究で示される

トラスツズマブ・デルクステカン(T-DXd、販売名:エンハーツ)は、現在、転移性HER2陽性またはHER2低発現乳がんに対して承認されている標的薬であるが、治療後のHER2状態への影響は完全には理解されていない。Funda Meric-Bernstam医師が主導した新しい研究で、研究者らはT-DXd治療を受けた転移乳がん患者41人を後方視的に評価した。その結果、T-DXd治療後にHER2発現が消失した患者は11人(32.4%)であり、別の10人(29.4%)ではHER2発現が減少していた。全体として、HER2発現の消失と減少は、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害薬による治療を受けた患者群でより顕著であった。注目すべきことに、HER2が消失した患者とそうでない患者で生存期間に有意差はなかった。HER2消失の背後にあるメカニズムを理解するためにはさらなる研究が必要であるが、これらの知見は、追加のHER2標的療法で患者を治療する前に、HER2の状態を再評価することの重要性を強調している。詳細はClinical Cancer Research誌を参照のこと。

BRAF変異陽性虫垂がんにBRAF標的療法が有効

虫垂腺がん -虫垂に発生するまれな腫瘍- は治療の選択肢が限られており、腫瘍医は治療選択の指針となるデータをほとんど持っていない。従来より、虫垂腺がんは大腸がんの治療と同じ化学療法が用いられているが、これが患者に有益であることを示唆するデータはほとんどない。さらなる洞察を得るために、John Paul Shen医師率いる研究者らは、BRAF変異陽性虫垂腺がんとBRAF変異陽性大腸がん患者の腫瘍サンプルの分子プロファイルと臨床的特徴を後ろ向きに比較した。虫垂腺がんが通常腹部の内壁に転移するのに対し、大腸がんは通常肝臓または肺に転移する。BRAF変異は大腸がんでは特に予後不良と関連していたが、虫垂腺がんではそうではなかった。さらに、大腸がんにおけるBRAF変異は、女性、粘液性組織、高悪性度と関連していたが、虫垂腺がんではこれらの関係は認められなかった。本研究では、BRAF変異陽性虫垂腺がんがBRAF標的療法に奏効し、病勢制御率80%、無増悪生存期間(PFS)中央値7.1カ月を示し、これらの患者では従来の化学療法より優れていることが初めて確認された。本研究結果は、この稀な患者集団に対する有望な治療戦略を浮き彫りにするものである。詳細はnpj Precision Oncology誌を参照のこと

転移乳がんに対してオートファジーを阻害することで、CDK阻害薬の有効性が高まる可能性

ER+/HER2-転移乳がん患者に対する標準治療には、CDK4/6阻害薬パルボシクリブ(販売名:イブランス)とレトロゾールによる内分泌療法があるが、多くは治療抵抗性を示す。以前の研究では、細胞の分解を阻害するオートファジー阻害剤であるヒドロキシクロロキン(HCQ)を加えることで、低用量のパルボシクリブで治療した前臨床モデルの治療成績が改善することが示された。Khandan Keyomarsi博士、 Debasish Tripathy医師らによる第1相試験では、ER+/HER2-転移乳がん患者14人を対象に、標準治療にHCQを追加した場合の安全性と有効性を評価した。その結果、2人が腫瘍の有意な縮小を伴う部分奏効を達成し、11人が腫瘍の進行を伴わない病勢安定を示した。バイオマーカー解析の結果、奏効した患者ではオートファジー阻害に関連するマーカーのレベルが上昇しており、HCQの作用機序を裏付けていた。これらの所見から、オートファジー阻害はこれらの患者におけるCDK4/6阻害薬の有効性を高め、耐性を克服する可能性があることが示唆された。第2相試験では更なる検証が計画されている。詳細はnpj Breast Cancer誌を参照のこと。

  • 監修 下村昭彦(腫瘍内科/国立国際医療研究センター病院乳腺・腫瘍内科)
  • 記事担当者 青山真佐枝
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  • 原文掲載日 2025/02/10

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