早期承認薬、5年後の確認試験で臨床効果を示したのは半数未満

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米国食品医薬品局(FDA)が2013年から2017年の間に迅速承認を与えた46種類の抗がん剤のうち、5年以上経って確認試験で臨床効果が実証されたのはわずか43%であったにもかかわらず、63%が通常承認に切り替えられていた。この追跡調査の結果は、4月5~10日に開催された米国癌学会(AACR)2024年年次総会で発表された。

この研究は同時にJAMAに掲載された。

「新抗がん剤承認の大部分を迅速承認が占めています。しかし、がん領域の迅速承認は、全生存期間(OS)などの『達成が難しい』臨床エンドポイントでの効果がその後確認されないことが多いことを私たちは知っていました」とIan TT Liu氏(医学士、法学博士、公衆衛生学修士、理学修士)は述べた。 同氏はこの研究に取り組んだ、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院とハーバード大学医学部の薬剤疫学および薬学経済部門内の規制、治療学、法律に関するプログラム (PORTAL) の博士研究員である。

FDA の迅速承認制度は、重篤な病状を治療し、満たされていない医療ニーズを満たす医薬品を代替エンドポイント(*通常の評価項目である生存期間の代替となりうる他の評価項目)に基づいて早期に承認できることを可能にするため、 30 年以上前に確立された。 FDAは、代替エンドポイントをマーカーまたは尺度として定義しているが、「しかし、それらは臨床的利益を予測すると考えられているものの、それ自体は臨床的利益の尺度ではありません」。この制度に基づいて承認された薬剤はすべて、その薬剤が期待される臨床上の利益を達成できるかどうかを確認するために追跡試験を受ける必要がある。迅速承認された薬がエビデンスを提供できない場合、FDA はその薬を市場から削除する可能性がある。

Liu氏らは、早期承認制度を通して承認された最近の一連の抗がん剤が承認後にどのように作用するかを評価すると同時に、これまで研究されていなかった課題、つまり、これらの薬剤が患者の生活の質(QOL)を改善することが判明したかどうかも検討しようとした。

彼らは 2 つの分析を実施した。 1つ目は、2013年から2017年に早期承認されたすべての医薬品のうち、確認試験を完了する5年以上の期間が経過した薬剤に焦点を当てた。 2つ目は、臨床試験の有効性評価期間が5年未満の薬剤を含む、2013年から2023年に迅速承認から通常承認に切り替えられたすべての医薬品について、使用されたエビデンスを調査した。この期間中に早期承認された抗がん剤の特定は、FDA の Web サイト、業界のプレスリリース、ClinicalTrials.gov、査読済みの雑誌記事などの情報を含む、公開されている FDA データを使用して行われた。研究者らは、国内臨床試験番号、試験デザイン、主要評価項目、一次および二次アウトカムなどの関連情報を試験から収集した。

Liu氏らは、2013年から2023年までに合計129の薬剤ががん関連適応薬として早期承認されたことを明らかにした。そのうち46の薬剤は5年以上の追跡試験を受けていた(2013年から2017年に調査されたコホート)。これら 46 薬剤のうち、63% が通常承認に変更され、22% が取り下げられ、15% は中央値 6.3 年後に試験継続となった。確認試験で臨床上の利益が実証されたのはわずか 43% であった。

この期間中、通常承認に移行するまでの期間は 1.6 年から 3.6 年に増加したが、薬剤が市場から撤退するまでの期間は 9.9 年から 3.6 年に短縮された。

「より迅速かつ適切な中止決定は、効果のない薬が市場に出回る期間がより短くなることを保証するため、患者にとっては良いことです」とLiu氏は説明した。 「私たちの研究では、早期承認から通常承認への移行までの時間が増加していることが示されましたが、移行の決定はタイムリーであると同時に、より重要なこととして、質の高い臨床結果に裏付けられている必要があり、迅速承認制度が適切に機能するために重要であると考えています。」

2回目の分析で研究者らは、2013年から2023年に迅速承認された129の薬剤のうち48剤が通常承認に変更されたことを明らかにした。変更の根拠は承認された薬剤の 40% で 全生存期間、44% で無増悪生存期間、10% で奏効率と奏効期間、4% で奏効率に基づいていた。1薬剤については、確認試験で否定的であったにもかかわらず変更されていた。また、通常承認の適応症が早期承認の適応症と一致するかどうかも調べたところ、63%が別の適応症、多くはより広範な適応症で、またしばしば同種類のがんにおけるより早期の治療ラインで通常承認に切り替えられたことが判明した。

「これらの発見により、予備的な代替計測値で承認された抗がん剤をめぐる不確実性や、特定の治療法の潜在的なリスクと利点について、患者と医師の間でより多くのコミュニケーションが促進されることを願っています」とLiu氏は述べた。 「そして、われわれの調査結果によって、限られたエビデンスに基づいて迅速承認を通常承認に切り替えるという慣行を規制当局が精査し、がん治療の代替計測値をより多く確実に検証することにリソースを投資し、また、患者とその家族にとって重要である全生存期間やQOL計測値などのエンドポイントの改善を示すためにすべての確認試験が確実に強化されるよう促される可能性もあります」。

この研究の上級著者であり、 PORTALの血液学フェローで博士研究員でもあるEdward Cliff氏(MBBS、MPH)は、この研究を発表し、次のように付け加えた。「一旦迅速承認から通常承認に変更されるとFDAは大きな影響力を手放すことになります。つまり、さらなる試験を適時に完了させることや、薬剤の撤回が難しくなります。そのため、これらの決定を正当化するために使用されるエビデンスが重要です。私たちは、奏効率、つまり腫瘍縮小に基づいて通常の承認に切り替えられた7つの薬剤を見つけましたが、その薬剤が最終的に患者に利益をもたらすかどうかについては大きな不確実性が残されています」。

この研究の限界としては、研究者らが臨床的利益のエビデンスを評価するために検証的試験データのみを検討したという事実が挙げられ、大規模な研究やより詳細な追跡調査が行われた研究では異なる結果が示される可能性がある。さらに、最初のコホートの薬剤のうち 7 つはまだ検証的試験が進行中で、有効性データは入手できなかった。研究者らは論文化された全生存期間(OS)およびQOLデータも使用したが、エンドポイントの統計学的改善は患者にとって臨床的に意味がない可能性があるため、臨床上の利益が過大評価されている可能性がある。

この研究には Arnold Ventures社が資金提供したが、資金提供者は研究の設計や実施、データの収集・管理・分析・解釈、原稿の準備・レビュー・承認、出版のために原稿を提出する決定には何の役割も担っていない。Liu氏とCliff氏は利益相反は報告していません。

  • 監訳 野長瀬 祥兼(消化器がん、腫瘍内科/市立岸和田市民病院)
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  • 原文掲載日 2024/04/07

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