放射線療法に化学療法を併用することにより退形成性乏突起膠腫患者の生存率が改善
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2012年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会(イリノイ州シカゴ)で発表された第3相臨床試験追跡結果によると、放射線療法に化学療法を追加した併用療法で、化学療法の追加により退形成性乏突起膠腫患者の生存率が改善することが明らかになった。
神経膠腫は、成人の悪性脳腫瘍のなかで最も一般的なタイプで、若年成人では癌による死亡原因の第2位である。悪性神経膠腫は、神経系で最も豊富な細胞であるグリア細胞(膠細胞)に発生する癌の総称である。グリア細胞は、信号を伝達する作用を担っている神経細胞(脳、脊髄、および神経)を支える機能を持つ。
退形成性乏突起膠腫(AO)は、悪性神経膠腫のなかのひとつのタイプである。歴史的に見て、AOは手術と放射線療法による治療が行われてきたが、化学療法にも同様に反応を示すことが明らかになってきた。
欧州癌研究治療機関(EORTC:European Organization for Research and Treatment of Cancer)は、新たに退形成性乏突起膠腫と診断された未治療の患者368人を対象とした第3相試験を実施した。患者は手術後放射線療法のみの単独群と、手術後放射線療法後にプロカルバジン+CCNU+ビンクリスチンによる化学療法(PCV療法)を6サイクル行う併用療法群にランダムに割り付けられた。
長期追跡調査によると、全生存期間は、放射線+化学療法併用群42.3カ月、放射線単独群30.6カ月であった。また無増悪生存期間(PFS)は、併用療法群で24.3カ月、単独群で13.2カ月であった。
この研究のサブ解析によると、化学療法と放射線療法の併用療法は、染色体欠失のある患者に特に有効であった。併用療法のベネフィットがみとめられたのは、1番染色体の短腕および19番染色体の長腕の同時欠失(1p/19q同時欠失)を伴う腫瘍の患者に限られた。これらの患者においては、放射線療法と化学療法の併用療法は、放射線療法のみの単独療法と比べて、死亡リスクが44%低下した。
研究者らは、放射線療法に化学療法を追加する併用療法により一部のAO患者の生存率が有意に改善すると結論づけた。また、1p/19q同時欠失の患者を特定することにより、医師は治療によるベネフィットを受ける患者を識別できるため、患者の疾患に合わせた治療が可能になる。
参考文献:
Van Den Bent MJ, Hoang-Xuan K, Brandes AA, et al. Long-term follow-up results of EORTC 26951: A randomized phase III study on adjuvant PCV chemotherapy in anaplastic oligodendroglial tumors (AOD). Presented at the 2012 annual meeting of the American Society of Clinical Oncology, June 1-5, 2012, Chicago, IL. Abstract 2.
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