腫瘍溶解性ウイルスとペムブロリズマブ併用が膠芽腫の予後を改善

MDアンダーソンがんセンター

本試験により、併用療法の安全性が確認され、治療戦略を最適化する可能性が示された。

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターとトロント大学の研究者が共同で実施した多施設共同第1/2相臨床試験の結果によると、膠芽腫(GBM)細胞を標的とする腫瘍溶解性ウイルス(DNX-2401)の腫瘍内投与とその後の免疫療法は、安全であり再発膠芽腫患者の一部集団において生存成績を改善した。

5月15日、Nature Medicine誌に掲載された本試験では、安全性の主要評価項目を達成し、用量制限毒性もなく、本併用療法の全体的な忍容性が確認された。本試験では、有効性の主要評価項目である客観的奏効率は達成されなかったが、本併用療法を受けた患者の12カ月間の全生存率は52.7%であり、事前に設定した有効性の基準値である20%を上回った。また、治療後45カ月、48カ月、60カ月の時点で3人の患者が生存している。

「このウイルス療法は、現在の標準治療とは異なる治療戦略である」と、共著者で脳神経外科部長のFrederick Lang医師は述べている。「我々の前回の試験では、ウイルスががん細胞を直接殺すことで作用するだけでなく、自然免疫系を効果的に活性化し、免疫的に不活性であるコールドなこれらの腫瘍を免疫療法に活性を示すホットな腫瘍に変えることが実証された。このことから、チェックポイント阻害薬との併用療法を評価することになり、現在、一部の患者において生存成績を改善できることが分かっている」

膠芽腫は最も悪性度の高い脳腫瘍であり、再発した場合、全生存期間の中央値は6カ月である。患者は多くの場合、標準的な放射線治療や化学療法を受けた後に再発を経験する。免疫チェックポイント阻害薬は、他のがん種の治療成績を向上させているが、再発膠芽腫は、免疫抑制性の腫瘍微小環境が免疫細胞の浸潤を防ぐため、免疫療法による治療が困難な疾患としてよく知られている。

‘スマートウイルス’は、効率的に膠芽腫細胞を排除し、免疫反応を活性化させる。

DNX-2401は、正常な細胞を避けながら、選択的に膠芽腫細胞を標的として侵入するように設計された感冒ウイルスであり、Lang医師とともに、神経腫瘍学教授のJuan Fueyo医師とCandelaria Gomez-Manzano医師が共同研究者となっている。

これまでの第1相試験の結果では、DNX-2401単剤療法が効果的にがん細胞死を誘導し、T細胞の浸潤が増加するように微小環境を変化させ、抗腫瘍免疫応答をもたらした。再発膠芽腫患者の20%が少なくとも3年間生存し、完全奏効者の腫瘍縮小は1年以上継続した。

これらの結果は、治療後にPD-1チェックポイントの発現が増加したことを示し、免疫系が抗PD-1免疫療法に反応する下地ができている可能性を示唆している。前臨床モデルでは、DNX-2401の治療1週間後にペムブロリズマブを投与すると、どちらかの治療のみを行った場合と比較して生存期間が改善したことから、この仮説が支持された。

「患者の脳腫瘍にウイルスを注入することは、内部崩壊的な科学だ。この治療戦略は、患者の免疫システムを目覚めさせ、内部からの治癒を引き起こすことを目的としているからです」と、Fueyo医師は述べている。「注射後、良好な反応を示した患者は、腫瘍の内部で炎症を起こし、免疫反応を引き起こして、まずウイルスを殺す。ウイルスが一掃されると、追加の免疫療法によって刺激された免疫反応が続き、化学療法や放射線治療にありがちな副作用を伴わずに、しっかりと制御された方法でがん細胞を破壊するのだ」

併用療法は、一部の患者において生存期間を延長し、QOLを向上させる

今回の試験は、腫瘍内にDNX-2401を投与した後、ペムブロリズマブを静注する併用療法を評価することを目的としていた。本試験では、2016年9月28日から2019年1月17日の間に、複数の施設から再発膠芽腫患者49人が登録された。患者の年齢中央値は53歳で、41%が女性であった。

49人中48人(98%)が生検後にDNX-2401を1回投与し、1週間後にペムブロリズマブを投与された。有害事象の大半はグレード1または2で、主なものは脳浮腫(37%)、頭痛(31%)、疲労(29%)であった。

この併用療法は、半数以上(56.2%)の患者において、病勢安定以上の臨床的有用性を達成した。5人の患者において客観的奏効が認められ、2人の患者では6カ月後の追跡調査で80%以上の腫瘍縮小が認められた。18カ月後には、この2人の患者は、病勢進行が認められない完全奏効となった。

また、探索的な遺伝子発現および免疫表現型解析により、腫瘍微小環境の炎症が中程度でPD-1の発現が緩やかな患者で客観的な奏効が認められたことから、この治療が有効な患者を決定するための特徴をさらに検討することが必要である。

本試験では、主要評価項目は達成されなかったが、DNX-2401と免疫チェックポイント阻害薬の併用が安全な治療戦略であることが検証され、他の併用療法の検討への道が開かれた。例えば、10人の患者の検体では、治療後にLAG3、TIGIT、B7-H3を含むいくつかの免疫チェックポイントのレベルが上昇することがわかり、これらのタンパク質が治療標的となる可能性があることが強調された。

「この’スマートウイルス’を用いた研究は現在進行中だが、腫瘍が非常に劇的に消失する患者が少数ながら存在し続けることに勇気づけられる」と、Gomez-Manzano医師は述べた。「これらの結果は、患者の転帰を改善するためにこのウイルス療法を最適化できる最良の併用療法の戦略を探し続ける動機となる」 

現在、間葉系幹細胞を用いて、より多くの’スマートウイルス’を腫瘍に送り込み、腫瘍内により広く届ける臨床試験が進行中である。今後の臨床試験では、チェックポイント阻害薬やCAR-T細胞療法などの治療とDNX-2401との併用療法を評価する予定である。

本研究は、DNATrix社およびMerck社の支援を受けた。共同研究者の全リストとその開示情報は、こちらの論文で参照可能。

  • 監訳 西川亮(脳腫瘍/埼玉医科大学国際医療センター)
  • 翻訳担当者 河合加奈
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  • 原文掲載日 2023/05/15

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