2007/04/17号◆特集記事「血管新生阻害剤が神経膠芽細胞腫(GBM)に有望」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2007年4月17日号( Volume 4 / Number 15)

●2007/4よりNCI隔週発行となりました
____________________

◇◆◇特集記事 ◇◆◇

血管新生阻害剤が神経膠芽腫(GBM)に有望

開発中の血管新生阻害剤が、最も一般的かつ致死的な成人脳腫瘍の治療を改善する可能性があることを、マサチューセッツ総合病院と ハーバード大学医学部の研究者らがロサンゼルスで今週開催された米国癌研究学会議 (AACR) 年次総会で報告した。

今回の有望な臨床結果は、血管新生阻害剤の価値は腫瘍に養分を供給する血管形成を停止させるだけでなく、血管を「正常化」させて標準治療の腫瘍への送達を向上させることが可能であるという理論の根拠が画像やバイオマーカーの分析によってさらに明確に示された。

この研究チームは、化学放射線療法による標準的治療施行後に再発した神経膠芽腫患者31例を含む第II相臨床試験の最新データを示した。開発中の血管内皮成長因子(VEGF)受容体阻害剤であるAZD2171を毎日投与した場合、これまで経験した再発神経膠芽腫患者(ヒストリカルコントロール)と比較して無増悪生存期間が、111日 vs 63日と改善した。本薬剤投与による全生存期間はヒストリカルコントロールと比較して211日 vs 179日で、よりわずかであったが改善した。さらに、最初の16例中9例が部分奏効(造影画像上で50%以上の縮小と定義)を達成した。

「これは有望な結果である」と、この試験の責任医師であるマサチューセッツ総合病院がんセンター神経腫瘍科部長Tracy Batchelor医師は述べる。「全ての狙いは正しい方向を指している」

しかしながら、少ない症例を対象とした非ランダム化試験による結果であるため十分に注意して解釈すべきであると、Batchelor医師は注意を促した。

NCIの癌治療評価プログラムに所属するPercy Ivy医師によれば、この試験によって他にも重要な結果が得られているという。すなわち、これまでの標準治療の6カ月の生存率が約15%あるのに対して、この試験では患者の27.6%が疾患進行の徴候なく6ヵ月間生存した。このことはさらなる試験が正当であることを示唆している。

「多くが致死的であるような疾患に対して、AZD2171の単独投与が活性のエビデンスを示したことに興奮している。」と、Ivy医師は述べた。「このエビデンスは、併用治療の探索を開始したり、新たな治療の進歩が示されるかどうかを判定するための研究を開始するのに十分なものである。」

生存の改善に加えて、一部の患者ではAZD2171の使用が神経膠芽腫に関連する深刻な問題、すなわち浮腫として知られる、体液貯留により引き起こされる脳の腫脹が軽減していた。結果として、多くの患者は、浮腫を治療するためのステロイドを減量あるいは中止することが可能であった。ステロイドは患者の消耗性の副作用をもたらす。

研究チームのメンバーであるRakesh K. Jain医師は、この薬剤の浮腫に対する効果は、この薬剤が急速に腫瘍内において「血管を正常化」させることを示すエビデンスのうちの1つであると述べた。腫瘍に血液を供給する小さくて弱い血管の形成を阻害することに加え、AZD2171は最初の投与から24時間という速さで、幾分太くて漏れやすい血管の構造と機能を改善し、28日間以上正常化することがこの試験によって示されたと、Jain医師は述べた。一部の患者ではこの正常化は最大4ヵ月間持続した。

正常化に関するエビデンスは、疾患がない部分の脳の血管と、腫瘍内およびその周辺の血管を注意深く比較することが可能となった画像研究の新たな応用を用いることによって得られた。一方、分子バイオマーカーの解析によって、2種類のタンパク質bFGF 、SDF1αの発現が、治療中に腫瘍が増大したり、血管径の異常や拡大への逆戻りと相関すると示された。

これらの知見は、bFGFとSDF1αが,腫瘍を抗VEGF治療から逃がすことを助けるような血管新生の前駆反応を増強することを示唆しているとJain医師は続けた。動物を用いた試験でbFGFが血管新生に関与するであろうことは示されているが、SDF1αが関与するというのは新しい知見である。

本結果に基づいてNCIは、新たに診断された神経膠芽腫患者に対して放射線とテモゾロミドによる標準治療と併用してAZD2171を評価する初期段階の臨床試験の実施を承認した。またBatchelor医師はアストラゼネカ社が支援するランダム化第III相試験を統率する予定であり、その試験では再発膠芽腫患者に対して化学療法と併用してAZD2171を検討する。この試験の承認はすでにFDAに申請したと、Batchelor医師は述べた。今年の末までに患者の登録をしたいと期待しているという。

— Carmen Phillips

************
Okura 訳
瀬戸山 修(薬学) 監修 
************

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

脳腫瘍に関連する記事

髄膜腫の治療選択に遺伝子シグネチャーが役立つ可能性の画像

髄膜腫の治療選択に遺伝子シグネチャーが役立つ可能性

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ物事を見かけで判断してはならない。腫瘍も顕微鏡で見た細胞の様子だけでは判断できないことが、次第にわかってきている。

成人の原発性脳腫瘍の中で最...
膠芽腫に対する効率的な第2相アダプティブ(適応型)臨床試験の画像

膠芽腫に対する効率的な第2相アダプティブ(適応型)臨床試験

ダナファーバーがん研究所膠芽腫の新たな治療法を見出すことを目的とした革新的な第2相臨床試験が、ダナファーバーがん研究所の主導のもと、全米の脳腫瘍センター主要10施設との協力で行なわれ、...
ベムラフェニブとコビメチニブの併用は稀少な頭蓋咽頭腫の治療に有効の画像

ベムラフェニブとコビメチニブの併用は稀少な頭蓋咽頭腫の治療に有効

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ稀少であるが致命的な、乳頭型頭蓋咽頭腫と呼ばれる脳腫瘍の患者の有効な新治療の選択肢が、小規模な臨床試験の結果を受けて間もなく登場する可能性が...
ボラシデニブは一部の低悪性度神経膠腫に有望の画像

ボラシデニブは一部の低悪性度神経膠腫に有望

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ脳腫瘍患者のために特別に開発された初の標的薬が、低悪性度神経膠腫と呼ばれる腫瘍の治療薬として有望であることが示された。

大規模臨床試験において...