【AACR2025】進行甲状腺がんに新たなCAR-T細胞療法AIC100が有益

MDアンダーソンニュースリリース 2025年4月29日

● 第1相臨床試験において、悪性度が高い2つのタイプの甲状腺がんで持続的な奏効と有望な安全性プロファイルが示され、固形がんにおけるCAR-T細胞療法のさらなる進展が示唆される 
● 1人は完全奏効、1人は部分奏効であった。 
● このタイプのがんは治療の選択肢が限られており、ほとんどの患者の予後は6カ月以下と不良である 
● AIC100は腫瘍細胞上のICAM-1タンパクを標的とするCAR-T細胞療法である
 
アブストラクト:CT206
 
テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らによると、ICAM-1タンパクを標的とする新しいキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法であるAIC100が、2種類の進行甲状腺がん患者において、有望な奏効と許容できる安全性プロファイルを示した。
 
初めてヒトに投与する第1相臨床試験の結果は、4月23日、2025米国がん学会(AACR)年次総会において、試験責任医師であるSamer Srour氏(MB Ch、幹細胞移植・細胞治療学准教授)により発表された。
 
治療選択肢が限られ予後不良な甲状腺未分化がん(ATC)および再発・難治性の甲状腺低分化がん(PTDC)における有望な初期結果は、固形がん患者に利点をもたらすCAR-T細胞療法の進歩を示している。用量レベル2または3の投与を受けた9人の患者のうち、22%に有意な腫瘍縮小が認められ、56%に病勢コントロールが認められた。
 
「2つの用量群で観察された奏効は勇気づけられるものであり、AIC100がこれらの非常に悪性度の高い甲状腺がんの治療に有効である可能性を証明するものです」とSrour氏は述べている。「このタイプのがんは、最も致死性が高く、最も悪性度の高いがんの一つであり、現在の限られた治療選択肢では、ほとんどの患者の予後は6カ月以下という悲惨なものです」。
 
AIC100は第3世代のCAR-T細胞療法で、腫瘍細胞上のICAM-1に結合して腫瘍細胞を排除する。このCAR製剤はソマトスタチン受容体2というタンパク質を共発現するため、臨床医は特殊なPET(陽電子放射断層撮影)スキャンで治療効果をモニターすることができる。
 
この多施設共同試験には、新規診断または再発・難治性の甲状腺未分化がん(ATC)および測定可能な病変を有する再発・難治性の甲状腺低分化がん(PTDC)の成人患者24人が登録された。2024年12月12日のデータ締め切り時点で、15人の患者がAIC100の投与を受けた。患者は平均2種類の全身療法を受けていた。研究者らはまず、AIC100の3つの投与量を評価した。患者は標準的なリンパ球除去療法を3日間受けた後、少なくとも48時間後にAIC100を静脈内投与された。
 
用量レベル1の治療では奏効は認められなかった。用量レベル2および3のATC患者4人における客観的奏効率は50%であった。用量レベル2の群では部分奏効が1人、用量レベル3の群では完全奏効が1人認められ、両者とも治療からそれぞれ5カ月後、7カ月後まで進行が認められなかった。用量レベル2および3を受けたPDTC患者5人における病勢コントロール率は60%であった。
 
当初計画された3つの用量レベルでは用量制限毒性は認められなかった。10人の患者がグレード1/2のサイトカイン放出症候群(CRS)を発症した。用量レベル1~3では重篤な有害事象は発生せず、CAR-T細胞療法の副作用となりうる神経学的事象であるICANS(免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群)を発症した患者はいなかった。有効性と安全性の結果に基づき、研究者らは4つ目の用量を検討したが、この用量では2人の患者がグレード3の肺炎を発症した。
 
観察された安全性と有効性に基づき、用量レベル3が今後の第2相試験の推奨用量として選択された。
 
「これらの結果は、甲状腺がんの患者さんに効果的な新しい治療法の可能性があるという希望を与えてくれます」とSrour氏は述べた。「まだ初期段階ではありますが、完全寛解と部分寛解を得たことは、私たちだけでなく、他の研究者にとっても、この非常に悪性度の高い疾患の治療成績を向上させ、持続的寛解をもたらすための強力な基盤となります」。
 
本試験はAffyImmune Therapeutics社の支援を受けた。共著者の全リストと開示情報は原文をご覧ください。
 
MDアンダーソンAACR年次総会の全コンテンツに関する詳細は、MDAnderson.org/AACRをご覧ください。

  • 監修 山﨑知子(頭頸部・甲状腺・歯科/埼玉医科大学国際医療センター 頭頸部 腫瘍科)
  • 記事担当者 青山真佐枝
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  • 原文掲載日 2025/04/29

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