術後オシメルチニブが局所非小細胞肺がん患者の再発を遅延

ASCOの見解

「オシメルチニブ(販売名:タグリッソ)は、すでに、EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がん患者に対する初回治療の標準治療となっています。本試験で認められた無病生存期間の改善は、外科的治療や化学療法後にも再発リスクが高い早期疾患に対するこの分子標的薬の使用を強く支持しています」とASCOの最高医学責任者兼副会長であるRichard L. Schilsky医師は述べた。
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上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性、局所非小細胞肺がんの術後補助療法として、分子標的薬オシメルチニブが第3相試験において無病生存期間を有意に改善した。II~IIIA期のNSCLC患者のうち、オシメルチニブ投与群は2年間無再発生存割合が90%だったのに対し、プラセボ投与群は44%だった。II~IIIA期の患者では、オシメルチニブによる術後補助療法群はプラセボ群に対して、再発または死亡のリスクが83%低下した。

試験について

  【主題】      EGFR遺伝子変異陽性の局所NSCLC患者に対するオシメルチニブ術後補助療法

  【対象】     EGFR遺伝子変異を有する原発性非扁平上皮IB/II/IIIA期NSCLC患者682人

  【結果】     II~IIIA期の患者の再発または死亡のリスクが83%低下

  【意義】     オシメルチニブをEGFR変異陽性局所NSCLC患者に対する新たな最先端の治療として確立

多国ランダム化比較第3相ADAURA試験の結果は説得力が十分にあったため、独立データモニタリング委員会が早期の盲検解除を推奨した。この結果は、2020年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会のバーチャル科学プログラムの一部として発表するために行われた予定外の中間解析から得られた。

「本試験はホームランです。私たちの予想を上回りました」と、主執筆者でイエールがんセンターおよびスミローがん病院の腫瘍内科部長ならびにイエールがんセンターのトランスレーショナルリサーチ担当副センター長のRoy S. Herbst氏は語った。「分子標的療法が非小細胞肺がん患者の術後再発を有意に遅延させることがわかったのは重要な進歩です。これで私たちは患者をもっと早期に治療することができます」。

術後化学療法は、腫瘍を完全切除したII~III期NSCLC患者および一部のIB期患者に対する標準治療だが、再発率が高い。

オシメルチニブは第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬で、米国では、EGFR変異(exon 19欠損またはexon 21 L858R変異)を有する転移性NSCLC患者の一次治療として承認されている。本試験の結果は、同じEGFR変異を有する早期NSCLC患者に対する術後補助療法としての有効性を明らかにしている。

II~IIIA期患者は、再発または死亡のリスクが83%低下した。EGFR変異陽性II~IIIA期NSCLC患者の2年無病生存率は、オシメルチニブ群では90%、プラセボ群では44%であった。全患者集団(IB~IIIA期)では、オシメルチニブはプラセボと比較して、再発または死亡リスクを79%低下させた。2年無病生存率は、オシメルチニブは89%、プラセボは53%であった。副次評価項目である全生存期間はデータ解析時点では未達であった。

本試験の安全性プロフィールはオシメルチニブの既知の安全性プロフィールと一致しており、全般的に許容可能であった。

本試験について

本試験では、EGFR遺伝子変異陽性と確定した原発性非扁平上皮IB~IIIA期NSCLC患者682人を、オシメルチニブ術後補助療法群(339人)またはプラセボ群(343人)にランダムに割付けた。オシメルチニブ群は80 mg錠を1日1回、最長3年間服用した。術後化学療法は許容した。

患者のベースライン特性は両群間でバランスが取れていた。両群とも患者の31%がIB期で、69%がII/IIIA期であった。両群とも女性の方が多く、オシメルチニブ群では68%、プラセボ群では72%であった。

資金提供

本試験はアストラゼネカ社から資金提供を受けた。

翻訳担当者 粟木瑞穂

監修 後藤悌(呼吸器内科/国立がん研究センター)

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原文掲載日 

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