MDA研究ハイライト2022/07/27:白血病(BPDCN、AML)
Tagraxofuspが芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍患者に長期的効果
芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)はまれだが、極めて悪性度の高い血液腫瘍である。Naveen Pemmaraju医師が主導した第I/II相臨床試験では、新規BPDCN患者にCD123標的治療薬であるtagraxofusp(タグラクソフスプ)が高い奏効率を示し、治療法を一変させるものとなった。この試験結果を受けて、tagraxofuspはBPDCN患者を対象にした初めての標的治療薬として唯一承認された。ほぼ3年(中央値)にわたる追跡調査データについて新たに行った長期間の分析では、57%の患者に完全奏効または臨床的完全奏効が認められ、全奏効率は75%に達した。また、効果が現れるまでの時間も短かった。さらに、再発・難治性(R/R)患者の奏効率は58%であり、同じ条件の試験ではこれまでに有効性が認められたとの報告がほとんどないことから、この数字は重要である。以上の結果は、tagraxofuspがBPDCN患者に対する一次治療として、また再発・難治性患者への治療選択肢として有効であることを裏付けるものである。詳細についてはJournal of Clinical Oncologyを参照。
ベネトクラクス+ギルテリチニブがFLT3変異陽性骨髄性白血病に高い奏効率
再発・難治性(R/R)のFLT3変異陽性急性骨髄性白血病(AML)は多くの場合、ベネトクラクス(販売名:ベネクレクスタ)に抵抗性を示し、ギルテリチニブなどのFLT3阻害薬単独投与に対しては奏効期間が短いと考えられる。Naval Daver医師主導の多施設共同試験では、再発・難治性のFLT3変異陽性AML患者61人を組み入れ、ベネトクラクスとギルテリチニブが併用投与された。この2剤の併用は、非臨床試験にて安定した相乗効果を示したことを踏まえ実施された。FLT3変異陽性患者の複合完全奏効率は75%(臨床的奏効率38%)であり、FLT3阻害薬による治療歴の有無にかかわらず奏効率は同程度であった。また、評価可能な奏効例の60%がFLT3分子遺伝学的奏効を達成した。最も頻度の高かったグレード3および4の有害事象は血球減少症(80%)であった。骨髄抑制はベネトクラクスを併用する再発・難治性AML患者によくみられる事象だが、この緩和のため、ほぼ半数が投与を一時中断した。以上の結果から、ベネトクラクスとギルテリチニブの併用は忍容性が良好かつ非常に効果の高い経口併用療法であり、高リスクのFLT3変異陽性再発・難治性AML患者に既存治療を上回る奏効率改善をもたらすことが示唆される。詳細についてはJournal of Clinical Oncologyを参照。
監訳:佐々木裕哉(白血病/MDアンダーソンがんセンター)
翻訳担当者 伊藤美奈子
原文掲載日
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