成人白血病(ALL)造血幹細胞移植後の生存率の改善続く-20年間研究

成人白血病(ALL)造血幹細胞移植後の生存率の改善続く-20年間研究

フィラデルフィア染色体を持つ患者の予後が改善し続けている

フィラデルフィア染色体を持つ急性リンパ芽球性白血病(ALL)患者において、同種造血幹細胞移植(HCT)後に再発を認めた患者の2年間の全生存率が、2000~2004年と2015~2019年の比較でほぼ2倍に増加していることが、米国がん学会発行の「Clinical Cancer Research」誌にて発表された。

「フィラデルフィア染色体を持つALL患者さんは移植後に最大30%が再発を来します。先行研究によれば、このような患者さんは長期生存の見込みが低いことがわかっています」。筆頭著者兼責任著者であり、ベイルート・アメリカン大学の内科学教授、基礎研究の副学部長、Bone Marrow Transplantation Program(骨髄移植プログラム)のディレクターを務めるAli Bazarbachi医学博士はそう語る。「とはいえ、近年、こうした患者さんに対する新たな治療法が複数承認されていることを受け、過去20年間の異なる期間でそれぞれの治療成績を検討し比較することが必要でした」。

ALLは血液腫瘍のなかでも悪性度が高い。フィラデルフィア染色体は、成人ALL症例の約30%にみられる反復性遺伝子異常であり、この染色体が陽性(Ph+)の場合、予後は悪くなる。同種造血幹細胞移植とは、白血病細胞を死滅させるため、放射線治療や高用量の化学療法の前治療歴がある患者に健康なドナーから血液幹細胞を移植する治療法である。造血幹細胞移植はフィラデルフィア染色体陽性ALL患者、特に治療後も体内に微量のがん細胞が残る微小残存病変(MRD)が検出された患者にとって、治癒効果が見込まれる選択肢と考えられている。

しかしながら、一部の症例では、残存する白血病細胞が移植免疫細胞により誘導されるがん免疫応答を逃れ、増殖することがある。移植後のがん再発は多くの患者にみられ、依然として同種造血幹細胞移植が不成功に終わる主な要因となっている。

だが、近年、フィラデルフィア染色体陽性ALL患者を対象に、移植後の再発リスクを低下させることを目的とした治療介入が新たに開発され、移植後再発の管理に新しい治療戦略が適用できるようになった。こうした治療には、次世代のチロシンキナーゼ阻害薬、およびブリナツモマブ(販売名:ビーリンサイト)、イノツズマブオゾガマイシン(販売名:ベスポンサ)、CAR-T細胞療法などの免疫療法がある。ほかにも、ドナーが獲得しやすくなり、HLA適合非血縁ドナーを用いた症例が次第に増えていることから、救援療法として2回目の同種造血幹細胞移植も選択肢に挙げられる。

造血幹細胞移植後に再発を認める患者について直近の生存を評価するため、Bazarbachi氏らは欧州骨髄移植学会(EBMT)のAcute Leukemia Working Party(急性白血病作業部会)の活動として、同種造血幹細胞移植後に再発したフィラデルフィア染色体陽性ALL成人患者899人を対象に、20年間(2000~2019年)にわたるレジストリデータを活用した後ろ向き多施設共同研究を実施した。

その結果、再発後2年間の全生存率(OS)が、2000~2004年に再発した患者では27.8%だったのに対し、2015~2019年では54.8%と有意に改善したことがわかった。また、造血幹細胞移植から再発までの期間の延長に伴い、生存率が高くなることも確認された。

注目すべきは、再発時の患者の年齢が(44歳から56歳へと)大きく上がったにもかかわらず、生存期間が延長していたことである。「このことが、私たちの研究結果をさらに印象深いものにしています。というのも、通常、生存期間が長いのは再発時の年齢が若い患者さんがほとんどでした」。Bazarbachi氏はそう話す。「これは、数々の新たな標的治療に従来の治療法を上回る効果があるからこそ、得られた結果といえるでしょう」。

再発後2年以内に2回目の同種造血幹細胞移植を行った13.9%の患者について、2回目の移植日から2年間の全生存率は35.9%であり、それに伴い、同期間の再発率は(2000~2004年には74%、2015~2018年には33%と)減少し続けている。

Bazarbachi氏は「本研究は、同種造血幹細胞移植後に再発を認めたフィラデルフィア染色体陽性ALL患者さんの転帰および背景を評価したこれまでで最大規模の分析であり、結果から、こうした患者さんの生存率が年を追うにつれ有意に改善していることが実証されました。このような実社会での大規模なデータは、今後、同じ設定で研究を行う際の基準になります」と話す。

本論文の著者は、支持療法の改善と新たな治療法の導入が、治療成績を良好に導いた要因のひとつとみている。ただし、今回行われた後ろ向き研究の限界として、移植後の再発時に実施した治療、および、その治療が生存率の改善にもたらした影響について詳細な情報が欠けていることが挙げられるため、今後の調査が必要となる。

本研究は、欧州骨髄移植学会のAcute Leukemia Working Partyによるレジストリ研究である。本研究への直接の資金提供は報告されていない。著者らの開示すべき利益相反はない。

翻訳担当者 伊藤美奈子

監修 佐々木裕哉(白血病/MDアンダーソンがんセンター)

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