米国血液学会2020-ダナファーバーがん研究所の注目演題
ダナファーバーがん研究所による2つの研究が、ASH公式プレスプログラムに採択される
12月5~8日にバーチャル形式で開催される第62回米国血液学会(ASH)年次総会で、ダナファーバーがん研究所の研究者は、公式プレスプログラムに採択された2つの研究を含む、40以上の研究結果を発表する。ダナファーバーは、血液および骨髄疾患の患者を対象とする最大かつ最も権威ある治療施設の1つである。米国血液学会は世界で最も包括的な血液学の学術学会で、世界中から25,000人以上の血液学専門家が集う。
米国血液学会では、幹細胞移植、リンパ腫、白血病、および多発性骨髄腫に関して、従来の診療に変化をもたらし得る最新の科学技術情報が発表される。ダナファーバーの研究者による注目の口頭発表を以下に挙げる。
演題:50~75歳の進行性骨髄異形成症候群患者を対象とした、強度減弱前処置を用いた同種造血幹細胞移植を脱メチル化薬または最適な支持療法と比較する、多施設共同、組織適合性に基づく治療割付試験:血液・骨髄移植臨床試験ネットワーク試験1102*
アブストラクト:75
発表者: Corey Cutler医師
プレスプログラム開催時刻:12月4日(金)午前9時30分(PST)/午後12時30分(EST)
セッション開催時刻:12月5日(土)午前7時30分(PST)/午前10時30分(EST)
近年の骨髄異形成症候群(MDS)治療の発展は、輸血負担を軽減しつつ、患者の生存率と生活の質の向上をもたらした。しかし、若年MDS患者に広く用いられている同種造血細胞移植(HCT)のみが、依然として骨髄異形成症候群の唯一の根治的治療法と考えられている。高齢MDS患者の移植成績は若年MDS患者と同程度であるが、高齢MDS患者群ではHCT以外の治療と比較してHCTの相対的な利点が明確になっていないため、高齢患者に対する早期の移植はあまり行われていない。多施設共同、組織適合性に基づく治療割付試験において、高リスクMDS高齢者を対象に、HCTとHCT以外の治療法を比較し、HCTの有用性を明らかにした。
演題:高齢ドナーにおけるDNMT3A遺伝子変異を伴うクローン性造血は、同種造血細胞移植後の患者の生存率向上と関連
アブストラクト:80
発表者: Christopher Gibson医師
セッション開催時刻:12月5日(土)午前8時45分(PST)/11時45分(EST)
クローン性造血(CH)は、健常者の血液中に、加齢に伴い体細胞変異が認められる現象である。移植以外の臨床におけるクローン性造血は、造血器腫瘍発症の高リスク、および炎症性シグナル異常に起因する非造血器腫瘍疾患における転帰不良リスクの上昇と関連している。クローン性造血を有する高齢ドナーからの造血細胞移植(HCT)は、患者にクローン性造血が移る可能性があり、そのため、移植片の免疫機能、またはドナー細胞由来白血病により転帰に影響を及ぼす可能性がある。ドナーのクローン性造血と患者の臨床転帰との明確な関連性は確立していない。ダナファーバーの研究者らは、ドナーと患者1,727組を対象に、40歳以上のドナーのクローン性造血が患者の臨床転帰に与える影響を評価した。
演題:高リスク骨髄性悪性腫瘍患者に対する強度減弱型前処置(RIC)を用いた同種造血細胞移植において化学療法にベネトクラクスを上乗せした場合の安全性および有効性
アブストラクト:190
発表者:Jacqueline S. Garcia医師
セッション開催時刻:12月5日(土)午後12時15 分(PST)/午後3時15分(EST)
同種造血細胞移植(HCT)後に再発する造血器腫瘍患者の転帰は不良であり,高リスクの遺伝子変異や細胞遺伝学的異常を有する患者では再発率が上がる。BH3模倣剤であるベネトクラクス(販売名:ベネクレクスタ)は、選択的経口BCL-2阻害薬であり、化学療法抵抗性骨髄芽球においてもミトコンドリアの膜透過性を亢進し、細胞死誘導を活性化する。本研究では、強度減弱型前処置における、化学療法へのベネトクラクスの上乗せは、過度の毒性を伴わずに抗白血病効果を選択的に高めると仮定し、フルダラビン(販売名:フルダラ)+ブスルファン(販売名:ブスルフェクス)化学療法にベネトクラクスを上乗せした場合の安全性と有効性を評価した。ダナファーバーがんセンターの研究者らは、第1相試験の用量漸増コホートと拡張コホートから得られた結果を報告している。
演題:びまん性大細胞型B細胞リンパ腫患者における自家造血幹細胞移植片および移植後がん細胞由来の血漿中遊離DNA(ctDNA)による予後評価
アブストラクト: 531
発表者:Reid Merryman医師
セッション開催時刻:12月7日(月)午前7時15分(PST)/午前10時15分(EST)
再発または難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者には自家造血幹細胞移植(ASCT)が有効である可能性があるが、依然として再発が起こる。新しい有効な治療法の登場に伴い、自家造血幹細胞移植による効果が得られない可能性がある高リスク患者、および自家造血幹細胞移植後に再発の恐れがあり早期介入が適する患者を特定することがさらに重要になる。研究者らは、自家造血幹細胞移植時に末梢血幹細胞を採取した、または自家造血幹細胞移植後に末梢血単核球および血漿検体を連続的に採取したDLBCL患者をコホートに組み入れた。研究者らは、免疫グロブリン遺伝子解析次世代シークエンシングを用いて末梢血幹細胞または末梢血中で同定される血中循環腫瘍DNAにより再発を予測できるという仮説を立てた。
演題:高リスク骨髄異形成症候群患者を対象とした、ベネトクラクスとアザシチジン併用療法の安全性、有効性、および患者報告アウトカム:第1b相試験
アブストラクト:656
発表者:Jacqueline S. Garcia医師
セッション開催時刻:12月7日(月)午後12時15 分(PST)/午後3時15分(EST)
脱メチル化剤は、同種造血幹細胞移植(HSCT)非適応の高リスク骨髄異形成症候群患者に対する現在の標準治療を形成している。しかし、アザシチジン(販売名:ビダーザ)投与患者の全奏効率は依然として低く、全生存期間の中央値は約15カ月と報告されている。さらに、この集団における治療中の患者報告アウトカムに関するデータはほとんど発表されていない。ベネトクラクスは、選択的で強力な経口投与可能なBCL-2阻害剤であり、高リスクの骨髄異形成症候群の前臨床試験において、脱メチル化剤との相乗効果が実証されている。現在進行中の非盲検、用量漸増、第1b相試験では、治療歴のない高リスク骨髄異形成症患者に対する、ベネトクラクスとアザシチジン併用療法を評価している。研究者らは、治療を受けた全ての患者における最新の安全性と有効性データ、および第2相推奨用量(RP2D)投与患者より収集した主要な患者報告アウトカムデータの探索的解析結果を報告した。
演題: ZUMA-5試験の一次解析:再発/難治性(R/R)の低悪性度非ホジキンリンパ腫(iNHL)患者を対象としたアキシカブタゲン シロロイセル(axi-cel)第2相試験
アブストラクト:700
発表者:Caron Jacobson医師
プレス向けプログラム開催時刻:12月5日(土)午前9時30分(PST)/午後12時30分(EST)
セッション開催時刻:12月7日(月)午後1時30分(PST)/午後4時30分(EST)
濾胞性リンパ腫および辺縁帯リンパ腫を含む進行期の低悪性度非ホジキンリンパ腫の患者は、標準治療後に再発することが多く、新規治療が必要であることを示す。axi-celを用いた自家抗CD19キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T)療法は、2種類以上の全身療法後の再発/難治性大細胞B細胞リンパ腫の治療に承認されている。ダナファーバーは、再発/難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫患者を対象とした第2相多施設axi-cel単群試験であるZUMA-5の一次解析結果を発表する。
ASHにおけるダナファーバーの活動の詳細については、オンライン(www.dana-farber.org/ash)で閲覧可能。
ASH関連のメディアからの問い合わせは、Claire Monaghan(電話:240-678-6494、Eメール:claire_monaghan@dfci.harvard.edu)まで。
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