急性リンパ性白血病への幹細胞移植を可能にするイノツズマブ オゾガマイシン

急性リンパ性白血病(ALL)における完全寛解率が従来の化学療法と比較して高いという研究結果が報告された。

MDアンダーソンがんセンターニュースリリース

薬剤inotuzumab ozogamicin[イノツズマブ オゾガマイシン]の第3相ランダム化臨床試験において、標準治療後に再発した急性リンパ性白血病(ALL)患者が統計的に有意な割合で、幹細胞移植を受けられる状態になった。

イノツズマブ オゾガマイシンはCMC-545とも呼ばれ、90%以上のALL細胞表面に発現するタンパク質CD22を標的とする抗体と結合する。ひとたび本薬剤がCD22と結合すると、薬剤成分がALL細胞内に取り込まれて細胞死にいたる。

本試験では、完全寛解率がおよそ81%になるとともに、標準治療と比較して無増悪期間は著しく延長され、全生存率も上昇したことが明らかになった。本試験は、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターで実施された。研究知見は New England Journal of Medicine誌電子版6月12日号で報告された。

「本試験に参加したALL患者のうち41%がイノツズマブ オゾガマイシン投与後、幹細胞移植を受けられる状態になったのに対して、標準化学療法で移植可能となったのは11%でした」と、白血病科長Hagop Kantarjian医師は述べた。「幹細胞移植は治癒のための唯一の治療選択肢であることから、移植を受けられる状態になる患者数を増やすイノツズマブ オゾガマイシンの効能は、期待がもてるものです」。

ドナー幹細胞移植は、一般的にこうした悪性度の高い白血病に対して治癒効果があるとみなされている。2016年の予測では、米国の成人6,500人以上がこのタイプの白血病と診断される。しかしながら、移植を受けられる要件として、患者は完全寛解に達していなければならない。

現在の治療法をもって、新たにB細胞性急性リンパ性白血病と診断された成人患者が完全寛解にいたる割合は、60~90%である。しかしそうした患者の多くは再発をきたし、無病生存期間が3年以上の長期にわたる患者は30~50%にすぎない。

「標準化学療法で完全寛解に達する割合は、早期に再発した患者の31~41%、後期に再発した患者の18~25%にすぎません。イノツズマブ オゾガマイシン試験の参加患者で寛解率が58%と過去の報告結果より高いのは、おそらく患者らが白血病の後期に治療を受けたためでしょう」と、Kantarjian医師は述べる。

本試験では中等度の副作用がみとめられ、血球減少症(血液細胞の産生が減少する障害)、および肝障害が最も多かった。本研究資金はPfizer, Inc社より提供された。

他の参加施設は以下のとおりである。Dana-Farber Cancer Institute, Boston; Universitätsklinikum Münster, Germany; University of Bologna, Italy; Stanford Cancer Institute, Calif.; University of Chicago; Goethe University, Frankfurt, Germany; University of California, Irvine; Pfizer, Inc., Pearl River, N.Y., Groton, Conn. and Cambridge, Mass.; and Cleveland Clinic, Ohio.

翻訳担当者 佐藤美奈子

監修 佐々木裕哉(血液内科・血液病理/久留米大学病院)

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