ALK変異を有する白血病にもALK阻害剤が有効である可能性

2人の白血病患者でALK遺伝子に変異が確認された。この変異を有する白血病に対してクリゾチニブ[crizotinib]やセリチニブ[ceritinib]といったALK阻害剤が有効である可能性が、実験室での研究結果で示された。米国がん学会(AACR)の機関誌であるCancer Research誌に掲載された。

「ALKを含む遺伝子の損傷はさまざまな固形腫瘍で数多く確認されているが、私の知る限りでは、白血病の主な原因にALK遺伝子の変異が関係していたことはこれまでありませんでした」と、オレゴン健康科学大学Knight Cancer Instituteの細胞・発生・がん生物学部門助教授のJeffrey Tyner博士は述べた。

「白血病の発生に関与している可能性があり、治療の標的になりうるALK遺伝子の新しい変異型を発見できたということは、ALK変異を有する白血病患者にとって新たな治療の選択肢が示されたことになります」。

ゲノムシーケンシング技術によって、患者の腫瘍から集められる遺伝子の情報量は劇的に増加した。しかしながら、多くの変異遺伝子が持つ意義についての知見が不足しているため、この遺伝子情報の多くが、臨床応用できる状態ではありませんとTyner氏は説明した。

どの変異遺伝子が疾患の進行に重要であるかを理解することは、それらを標的とした治療と対になっているので、とても重要なステップなのですと彼は述べた。

Tyner氏は同僚らとともに、キナーゼおよびキナーゼ関連遺伝子1,862個のディープシーケンシングを185の腫瘍サンプルについて行った。このサンプルは、急性骨髄性白血病(AML)患者96人、急性リンパ性白血病(ALL)患者51人および骨髄増殖性腫瘍患者38人から得た。これらのうちの2サンプル(B細胞性ALLの小児患者由来のものとAMLの成人患者由来のもの)においてALK遺伝子の変異がそれぞれ1種類ずつ確認された。

確認された2つの変異が発がん遺伝子であるかを評価するため、研究者らは実験室で作成した白血病細胞にこの変異を導入した。通常この白血病細胞は、増殖、生存するために外部からの増殖因子を必要とする。しかし、変異が導入された細胞では、外部からの増殖因子がなくても増殖した。そのため、これらの変異によって異常な細胞増殖が引き起こされることが示された。

さらなる実験室での研究結果から、この2つの変異のうちいずれかを有する白血病細胞は、ALK陽性転移性非小細胞肺がんの治療薬としてアメリカ食品医薬品局から承認されているクリゾチニブとセリチニブを含むいくつかのALK阻害剤によって抑制される可能性が示された。

「これらの結果から、より広範囲なALK阻害剤の使用を検討すべきであり、患者の腫瘍細胞の遺伝子特性に基づいて薬剤を適用できることが示されました」と、この研究の筆頭著者であり、現在はシアトルにあるフレッドハッチンソンがん研究センター臨床研究部門の博士研究員であるJulia Maxson博士は述べた。

この研究は、ハワード・ヒューズ医学研究所(the Howard Hughes Medical Institute)、米国国立がん研究所、白血病リンパ腫協会(the Leukemia & Lymphoma Society)、医学研究財団若手臨床研究者賞(Medical Research Foundations Early Clinical Investigator Award)、セント・ボールドリック財団(the St. Baldrick’s Foundation)、がん研究のためのV財団(the V Foundation for Cancer Research)、天使ガブリエルがん研究財団(the Gabrielle’s Angel Foundation for Cancer Research)より資金提供を受けた。Tyner氏とMaxson氏は、利益相反はないと公表している。

翻訳担当者 田村克代

監修 野崎 健司(血液内科/住友病院)

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