HPVワクチン、サーバリックス® の前癌病変に対する予防効果

キャンサーコンサルタンツ
2009年7月

ランダム化臨床試験であるPATRICIA試験に参加した研究者らは、グラクソスミスクライン社製のヒトパピローマウイルス(HPV)16/18 AS04アジュバントワクチンであるサーバリックス®が、若年女性の子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)2+の予防に有効であることが示されたと報告した。この試験の詳細は2009年7月7日発行のLancet誌の早期電子版に掲載された。[1]

HPVは子宮頸癌の唯一の原因であり、16型と18型が最も一般的である。全子宮頸癌発症の90%近くの原因がHPVのうち最も蔓延している7つのタイプであり、このうち16型と18型が約70%の原因となっている。2,000万人以上の米国人が何らかのHPVウイルスに感染している。また、発展途上国の多くでは、ほとんどの女性が既にHPVに感染しており、この疾患制圧のための優れたワクチンの開発がすすめられている。また、HPVが外陰部や膣、肛門、陰茎、中咽頭などの他の部位の感染や癌に関連があることは重要である。子宮頸部HPVに対するワクチンは、子宮頸部以外の部位のHPV感染にも効果があると期待されている。

ガーダシル®はHPV 6、11、16、18型四価ワクチン(メルク社)であり、米国食品医薬局(FDA)は若年女性へのワクチン接種を承認している。二価L1ウイルス様粒子ワクチンであるサーバリックスも現在、大規模臨床試験が実施されている。サーバリックスの有効性に関する先行データは、2006年のASCOで発表されたフォローアップ試験の結果と共に2004年に公表された。

PATRICIA試験(Papilloma Trial against Cancer in young Adults)では15歳から25歳までの18,000人以上の女性をサーバリックスまたはA型肝炎ワクチンを0、1、6カ月目に投与する各群に無作為に割り付けた。この試験に登録した女性は、登録前のHPV感染に関するスクリーニングは受けなかった。有効性に関する先行データは、HPVに対して血清陰性かつ遺伝子陰性の女性から得たものであった。ワクチン接種群では、2人にHPV16型またはHPV18型に関連するCIN2+がみられたが、対照群では21人にみられた。HPV16/18型関連CIN2+に対する有効性は90.4%と予想された。

今回報告されたのはPATRICIA試験の最終解析である。本試験の報告者らは、ワクチン接種時にHPV血清陰性であった登録者で、ワクチン接種を受けた5,825人および対照群となった5,819人を評価した。本試験の追跡調査期間は35カ月である。一次解析では、サーバリックスによるHPV16/18型関連CIN2+の予防効果は92.9%であった。サーバリックスは「複数の発癌タイプに感染した病変について原因と考えられるHPV型を判定した分析では」98.1%の効果があった。ワクチン接種を受けた全群を評価すると、試験前のHPV感染状態に関わらず、CIN2+に対する予防効果は33.4%であったが、HPV-未感染者だけをみると87%に増加した。ワクチンが標的としていない12の発癌タイプに関連するCIN2+に対するワクチン有効率は54%であった。HPV31、33、45型に関連するCIN2+に対しても交叉防御能があると報告された。

著者らは、「HPV 16/18 AS04アジュバントワクチンは、HPV16/18型やワクチンが標的としていないHPV型に関連するCIN2+に高い有効率を示しており、国際的なワクチンの集団接種やキャッチアッププログラムに関連する患者集団にかなりの有効性を示した。」とと結論づけている。

コメント:
サーバリックスはHPV感染予防として世界90カ国で承認されている。臨床試験のデータは2年以上前にFDAに提出されたが、これまでのところ承認されていない。最近では2009年5月に追加の長期投与データがFDAに提出された。

参考文献:
[1] Paavonen J, Naud P, Salmeron J, et al. Efficacy of human papillomavirus (HPV)-16/18 AS04-adjuvanted vaccine against cervical infection and precancer caused by oncogenic HPV types (PATRICIA): final analysis of a double-blind, randomised study in young women. Lancet. July 7, 2009.


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翻訳担当者 平川 麻衣子

監修 関屋 昇(薬学)

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