ぺムブロリズマブは進行子宮内膜がんに有望

現在、複数のがん種に対する治療薬として米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けているがん免疫チェックポイント阻害薬は、悪性度の高い子宮内膜がん(子宮体がん)にも有効であることが、オハイオ州立大学総合がんセンターのアーサー・G・ジェームズがん病院およびリチャード・J・ソロブ研究所(OSUCCC – James)の研究者主導による国際第2相臨床試験結果で明らかになった。

この試験にあたり、研究者は、再発または進行子宮内膜がんと診断された女性90人を登録して、ペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ)がミスマッチ修復機能欠損(dMMR)腫瘍、または高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)腫瘍を有する一部の患者の治療に有効であるかを検証した。本試験では、15カ国38の病院で治療を受けた患者が対象となった。

ペムブロリズマブはがんの免疫療法薬であり、免疫系ががん細胞を認識して破壊するのを妨げる特定の細胞受容体の働きを阻害する。本薬剤は他にも、メラノーマ(悪性黒色腫)、肺がん、頭頸部がん、子宮頸がん、胃がんなど、数種類のがん治療薬としてFDAの承認を受けている。

今回の試験で、進行子宮内膜がん患者のうち完全奏効または部分奏効に達したは48%であったと研究者らは示した。また、このうち3分の2の患者では効果が3年以上持続した。さらに、患者全体の3分の2に臨床反応がみられた。本試験は、過去に報告された追跡調査のなかでも最長であり、その追跡調査期間中央値は42.6カ月であった。

「これらの結果は、長期的な利益が患者にもたらされることを示唆しています。今や、再発または転移性子宮体がん患者において、根治の可能性さえみえてきました」と、本試験の筆頭著者であるDavid O’Malley医師(OSUCCC – James婦人科腫瘍医)は述べる。

現在、ペムブロリズマブが早期疾患の治療に有効であるかを評価する臨床試験が行われている。

国際研究チームは、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版(2022年1月6日付)で、本知見を初めて報告する。

子宮内膜がんは、世界の女性のがんで2番目に多く、罹患率は増加傾向にある。プラチナ製剤ベースの化学療法レジメンは有効であるが、再発する患者も多い。再発または転移性疾患に対する有効な二次治療が限られているため、進行または再発性疾患の女性における5年生存率は17%である。

子宮内膜がん患者の最大31%が、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)およびミスマッチ修復機能欠損(dMMR)というDNA構造変化を有していることが過去の研究で示唆されている。ある患者群(約2%)では、ミスマッチ修復(MMR)遺伝子の1つに遺伝性変異(家族間で受け継がれる変異で、臨床的にリンチ症候群として知られる)が認められる。この変異は通常腫瘍内に発現するもので、遺伝性の変異ではないとO’Malley氏は言及する。

「この分子標的薬を用いて損傷した遺伝子経路を標的にすることで、細胞機構をリセットして、免疫系が再び活性化して、がん細胞を攻撃することができるのです」とO’Malley氏は述べている。

この試験データが出るまでは、MSI-H/dMMR陽性腫瘍を有する子宮内膜がん患者に対する標準二次治療法はなかった。しかし、研究者らは、二次治療として最も頻繁に用いられている他の化学療法薬で想定される10〜15%の奏効率と比較して、本試験における奏効率は非常に強力であると言及する。

この試験は、ペムブロリズマブの製造元であるメルク社の支援を受けた。O’Malley医師をはじめとする本研究共著者らは、同社ならびに子会社から研究資金を受けているか、相談役または顧問を務める。

(本研究共著者は原文参照のこと。)

翻訳担当者 佐藤光波乃

監修 野長瀬祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)

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