BRCA1/2変異は子宮体がんリスクも増加させる

【ロイター】BRCA1またはBRCA2変異を有する女性は子宮体がん(子宮内膜がん)リスクが高く、なかでも子宮体がんの希少タイプである漿液性子宮体がんおよびp53異常子宮体がんのリスクがBRCA1変異保有者で特に高いことがオランダの研究で示された。

「本研究は、子宮体がんがBRCA1/2関連疾患であるか否かという現在行われている議論に決定的なエビデンスを追加するとともに、少なくとも漿液性子宮体がんおよびp53異常子宮体がんは、BRCA1/2関連の遺伝性乳がん・卵巣がん(HBOC)症候群の不可分の一部と考えるべきという一連の根拠をさらに裏付けるものです」と研究者は述べている。

BRCA1およびBRCA2乳がん遺伝子に病原性生殖細胞系列変異を有する女性は、乳がんを発症するリスクが高いが、BRCA1/2変異が女性が子宮体がんに罹患する生涯リスクをも高めるかどうかは不明である。

この評価のために、ライデン大学医療センターのCor D. de Kroon博士らは、BRCA1変異保有者3,788人、生殖細胞系列BRCA2変異保有者2,151人、ならびにBRCA1/BRCA2両変異保有者41人を含む、BRCA1/2変異保有者約6,000人を調査した。また、BRCA1/2変異非保有者8,451人についても調査した。

約22年間の追跡期間中に、BRCA1/2変異保有者58人およびBRCA1/2変異非保有者33人が子宮体がんを発症した。

BRCA1およびBRCA2変異保有者では子宮体がんリスクが2~3倍有意に上昇した。最も高いリスク上昇が認められたのは、臨床治療成績が「好ましくない」とされる2つのタイプ、漿液性子宮体がん(8~10倍)およびp53異常子宮体がん(11~12倍)であったと、Journal of the National Cancer Institute誌に報告されている。

 リスク上昇はホルモン療法の治療歴では十分に説明できないため、生殖細胞系列BRCA1/2変異と因果関係がある可能性が非常に高いと研究者は述べている。

 「われわれの結果は、子宮体がんリスクに関する重要な追加情報をもたらし、これはBRCA1/2変異保有者に対する適切な遺伝カウンセリングに不可欠な情報です」と研究者は記載している。

 「BRCA1/2変異保有者では子宮体がんリスク全般が高かったにもかかわらず、一般集団では子宮体がんを発症する生涯リスクが低いことから、75歳までの累積の子宮体がんリスク全般(3.0%)および漿液性子宮体がんリスク(1.1%)は低いままです」と研究者は述べている。

これらの所見を踏まえて、「リスク低減のための子宮摘出術について、潜在的な利益と不利益を慎重に比較検討する必要があり、BRCA1/2変異保有者のリスク低減手術に関する個別対応の治療の助言のために、意思決定を共有することが重要です」と研究者は述べている。

 本研究に商業的な資金援助はなく、著者に情報開示すべき利益相反事項はなかった。

 de Kroon博士にコメントを求めたが、記事発表までに回答は得られなかった。

引用: Journal of the National Cancer Institute誌、2021年3月21日オンライン版

翻訳担当者 木下秀文

監修 辻村信一(獣医学・農学博士、メディカルライター)

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