進行子宮体癌に全腹部照射より化学療法のほうがよい

Chemotherapy Better than Whole-Abdominal Radiation for Advanced Endometrial Cancer
(Posted: 12/21/2005)Journal of Clinical Oncology2006年1月1日号によると、進行した子宮体癌の術後に、全腹部照射より化学療法のほうが全生存率と全無進行期間の両方において、より有効であった。


要約
進行子宮内膜癌の外科手術後に実施するドキソルビシン(アドリアマイシンR)およびシスプラチン(プラチノールR)の併用化学療法は、全生存率および無増悪生存率という点で、全腹部への照射よりも有効でした。しかし、最近実施された別の臨床試験の結果は、子宮内膜癌の患者群への放射線治療に依然として延命効果があることを示す可能性があります。

出典  2006年1月1日発行のThe Journal of Clinical Oncology、オンライン版は2005年12月5日に発行。(ジャーナル要旨参照)(電子版は書籍版に先駆けて2005年12月5日に発行。)

背景
子宮の癌は、子宮内膜癌として知られ、米国で最もよく見られる婦人科癌です。2005年には約40,880例、そのうちおよそ4人に3人は45歳から74歳の女性に新たに発症すると見込まれています。早期に発見されると、多くの場合、子宮と卵巣を切除する外科手術で完治できます。

子宮内膜癌は、頸部(子宮頸すなわち子宮の下部)を越えて拡がると進行性と分類されます。この癌は、昔から外科手術を実施した後に、腹部全体への直接照射(全腹部照射と呼ばれる)を実施していましたが、これは放射線に対して特に敏感な腎臓および肝臓付近に損害を与える危険を冒すやり方です。しかし、放射線治療が患者の生存期間を延長するというエビデンスはなく、病気の症状および治療の副作用を軽減させるために術後(追加)の化学療法を実施することもあります。

試験
当初、GOG(Gynecologic Oncology Group)122臨床試験は、進行子宮内膜癌のファーストライン術後療法として、化学療法と全腹部照射を比較する初めての主要な第3相臨床試験でした。初期の試験結果は、2003年6月にシカゴで開催された米国臨床腫瘍学会の年次総会で初めて発表されました。

1992年5月から2000年2月にかけて、医師達は全米の試験施設で第3または4期の子宮内膜癌患者396例を登録しました。患者は全員、子宮摘出手術および外科手術を受けて子宮を除去し、残った腫瘍の大きさは1インチ(*2.54cm)未満でした。8週間以内に、198例は全腹部照射、一方残りの190例がドキソルビシンおよびシスプラチンの併用化学療法を受ける治療群に無作為に割り当てられました。

照射を受けた患者は、4週間土日を除く毎日、腹部全体に1.5 Gyの照射を受け、それから特に骨盤部へ15 Gyの追加照射、総線量45 Gyの照射を受けました患者の約84%が照射の全コースを終了しました。

化学療法を受けた患者は、3週間を1サイクルとし、7サイクルをシスプラチンおよびドキソルビシン併用の治療後、1サイクルをシスプラチンのみで治療を実施しました。患者の63%のみが併用化学療法の全コースを終了しました。

患者は治療中、副作用がないかどうか毎週観察を受けました。治療後の2年間は3週間おきに、その後は年に2回、診察を受けました。

本報告の責任医師は、ノースカロライナ州グリーンビルのEast Carolina University、Brody School of MedicineのMarcus E. Randall医師です。本臨床試験は米国立癌研究所から支援を受けました。

結果
中央値約6年(74カ月)の追跡後、化学療法を受けた患者は、全腹部照射を受けた患者よりも、癌再発または進行の可能性が29%低く、また死亡する可能性は32%低いことが分かりました。(患者の異なる癌の段階を考慮、すなわち調整することで、このように統計的に有意な数字は得られました。)

予想どおり、治療の副作用は化学療法群でより重篤でしたが、医師達は一般に対処可能と考えていました。化学療法の主な副作用は血液毒性で、照射治療群が14%だったのに対し、化学療法群の88%が影響を受けました。心臓および神経系に、それほど多くはありませんが、重要な問題が化学療法群に多く見られました。亡くなった8例は化学療法によるもので、5例は放射線治療によるものでした。

制限事項
本臨床試験で使用された全腹部照射、ドキソルビシン/シスプラチン併用療法いずれも、いまだ一般に使用されていません。医師達は現在、カルボプラチン(ParaplatR)との組み合わせで代替併用治療に時折使用される治療薬であるパクリタキセル(タキソールR)をドキソルビシン/シスプラチンに追加しています。現在、放射線療法は、一般に骨盤に限定し、より精密に狙いを定めることで、高線量照射が可能です。

さらに、臨床試験の医師らは、全腹部照射はとりわけ更に進行した癌患者に対する「最も効果的な放射線治療のやり方ではない可能性があり」、有効性が高く毒性の少ない化学療法が必要であることを認めています。

コメント
それにもかかわらず、付随の論説で、University of ChicagoのGini F. Fleming医師は、この結果を「子宮内膜癌治療の画期的出来事」と称しました。Fleming医師は、特定の不利な特徴をもった進行期の子宮内膜腫瘍はあまり多くないため、有意な臨床試験に十分な患者を見つけるのは困難で、明確な治療の選択が確立されなかったと指摘しています。本臨床試験後、今後ある種の併用化学療法とは子宮内膜癌の患者群に対して標準のファーストライン術後治療であるべきだと、Fleming医師は記しています。

「しかしながら、放射線照射は局所制御には依然有効である可能性がある。骨盤部に再発した癌の治癒さえ可能である」と米国立癌研究所のCancer Therapy Evaluation ProgramのTed Trimble医学博士は語りました。「しかし、化学療法はこの古い組み合わせでも明確に全生存率増加が見られたのに対し、放射線治療は全生存率を増加していない」とTrimble博士は加えました。

現在の治療のやり方はいずれかの併用化学療法と放射線治療の後に外科手術へと向かっているが、「このような治療法において、化学療法の毒性の影響を減らす方法を知ることが必要であるのは明らかである」とTrimble博士は述べました。

子宮内膜癌に関する臨床試験が少なくとも2つ(GOG 184およびGOG 209)継続中で、新しい治療薬の組み合わせを検証し、より精密な放射線技術を用いています。臨床試験結果によりこれらの問題がいくつか明らかになるはずです。

(ポメラニアン 訳・林 正樹(血液・腫瘍科) 監修 )

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