HPV検査は子宮頸がん一次検診として細胞診よりも正確な可能性
*文末に監訳者コメントあり
「新たな検査が従来の検診に取って代われば、毎年何百人もの女性が子宮頸がんを免れるだろう」とMail Online紙は報道した。
カナダの研究で、子宮頸がんのほぼすべての症例の原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の一次検査により、従来の細胞診(スメアテスト)よりも高頻度に前がん病変が発見されたことがわかった。
細胞診は子宮頸部の細胞の変化を調べるのに対し、HPV検査はウイルスの有無を調べる。
現在、英国国民保健サービス(NHS)の子宮頸がん検診プログラムは細胞診から始まる。細胞診の結果、細胞に低異型度または境界領域の変化の可能性が示された女性では、細胞診の検体を用いたHPV検査が行われている。その後、細胞に低異型度の変化がありHPV陽性の場合、二次検査(コルポスコピー)へと進む。
しかし、NHSのいくつかの地域ではHPV検査がまず行われるシステムを試行中である。良い結果が得られれば、NHSは一次検査をHPV検査に変更する可能性がある。
本研究は、この変更が現行のシステムより多くの前がん病変の症例の検出につながることを示唆している。
この記事の由来
本研究は、2つの検診システムの結果を48カ月以上にわたり検討したランダム化比較試験であった。これは通常、検査方法を比較し、より優れた方法を判断するのに最適の研究手法である。
どのような内容の研究であったか
研究者らは、19,009人の女性を募集し、HPV検査と細胞診のどちらかによる一次検診を行う群を設定し、それぞれに約半数ずつランダムに割り付けて検診を行った。
HPV検査で陰性と判定された女性は、48カ月後にHPV検査と細胞診の両方を受けた。これに対し、細胞診で結果が陰性であった女性は24カ月後に再度細胞診を受けた後、48カ月後に両方の検査を受けた。
HPV検査または細胞診の結果が陽性であった女性は、受けていない方の検査法で検体をただちに解析し、その結果、HPVと細胞の変化の両方が認められた場合、コルポスコピー(経腟的拡大鏡検査)を受けた。
細胞診では液状検体細胞検査(NHSで使用される標準検査)を使用した。HPV検査はDNAサンプルから確認された。また、検査集団間の不均衡が試験結果の違いにつながらないよう、参加女性はライフスタイルと妊娠回数などの性的健康歴に関する質問票への記入も行った。
試験参加者は25〜65歳であり、過去12カ月間に細胞診を受けておらず、妊娠していなかった。また、過去5年間に子宮頸部におけるがんまたは前がん病変の既往はなかった。
研究者は、初回の検査結果と48カ月終了時点での検査結果を比較した。主に、子宮頸がんにつながる可能性のある中程度または高度の子宮頸部細胞の変化(前がん病変)に着目した。医学用語ではこの種の病変を「グレード3以上の子宮頸部上皮内腫瘍」(CIN3+)という。
結果のまとめ
試験開始時の初回検診では、細胞診を受けた女性(1,000人あたり4.4人)よりも、HPV検査を受けた女性(1,000人あたり7人)でCIN3+の症例が多く見られた。
しかし、試験開始から48カ月後、HPV検査を受けた女性では細胞診と比べCIN3+の症例が少なかった。これはおそらく、初回の検診で病変が確認され、治療を受けたためであると考えられる。
試験が終了する48カ月時点の検診結果は以下の通りであった。
・最初にHPV検査を受けた女性では1,000人あたり2.3人のCIN3+(95%信頼区間[CI] 1.5-3.5)
・最初に細胞診を受けた女性では1,000人あたり5.5人のCIN 3+(95%信頼区間[CI] 4.2-7.2)
試験開始時にHPV検査の結果が陰性だった女性では、試験開始時に細胞診の結果が陰性だった女性に比べ、48カ月以内にCIN3+を発症する可能性がはるかに低かった。
その結果、以下のことが示された。
・試験開始時のHPV検査結果が陰性だった女性では1,000人あたり1.4人のCIN3+発症(95%信頼区間[CI] 0.8〜2.4)
・試験開始時の細胞診結果が陰性だった女性では1,000人あたり5.4人のCIN3+発症(95%信頼区間[CI] 4.1〜7.1)
試験開始時にHPV検査を受けた群では検査後、より多くの女性がコルポスコピーを受けた(細胞診群で1,000人あたり30.8人に対してHPV検査群で1,000人あたり57人)。しかし、試験開始後48カ月時点では逆転していた。
コルポスコピーが推奨された試験参加者の数は両群において同等であった(HPV検査では1,000人あたり106.2人、細胞診では1000人あたり101.5人)。
研究者は結果をどのように解釈しているか
「最初にHPV検査を行う方が子宮頸部の新生物を細胞診よりも早く正確に検出する。また、HPV検査はより多くのCIN3+とCIN2+を初回検査時に検出し、48カ月後のCIN3+とCIN2+の発生率を有意に減少させた」と研究者らは試験結果から述べている。
また、この検診モデルへの移行がもたらす経済的結果を評価するためにはさらなる研究が必要である、と研究者らは警告している。
結論
本研究の結果は有望であり、HPV検査は子宮頸部細胞診に代わり一次検査として機能する可能性があることが示唆されたが、浸潤性子宮頸がん患者数やそれによる死亡者数の減少に実際に影響があるかを示す長期的な結果は得られていない。
したがって、Mail Online紙による「何百人もの女性ががんを免れるだろう」という主張が正しいかは明らかではない。
しかし、子宮頸がんを早期に発見することで治療が容易になることは明らかなため、それを可能にする検査は歓迎される可能性がある。現時点で不明なのは、コルポスコピーなどの追加検査を必要とする女性が増えるか否かということである。
現在、少女や若い女性にはHPVに対する予防接種が提供されているが、これが子宮頸がんの大多数を予防するまでにはしばらく時間がかかる。予防接種を受けたかどうかにかかわらず、女性は子宮頸がん検診を引き続き受ける必要がある。
NHS子宮頸がんスクリーニングプログラムの詳細についてはこちらを参照のこと。
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【*監訳者コメント】
より早く子宮頸部新生物を発見することでより早くより容易な治療を受けられる、という記載があります。しかし、実際には細胞診異常が見つかってからでも子宮頸がんに至るには数年を要することが知られています。よって、CIN2やCIN3を早期にHPVテストで検出しても行われるのは子宮頸部円錐切除術に変わりはないと推測します。
しかし、48ヶ月、つまり4年という長期間で円錐切除が早く行われてしまうデメリットが実はあります。子宮頸部上皮内腫瘍は20~40歳代という若年女性、つまり今から妊娠しようとしている女性に圧倒的に多いわけですが、円錐切除術は流産・切迫早産や破水などの妊娠合併症を増加させます。そのコメントが全くないことはこの記事の最大の欠点と考えます。
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