子宮頸がん検診の推奨グレード(USPSTF)[2018年8月更新・現在最新版]

* 米国予防医学専門委員会(USPSTF)は、米国医療研究・品質調査機構(AHRQ)の独立委員会で、検診や予防医療の研究レビューを行って米国政府の推奨グレードを作成します。米国予防医学専門委員会(USPSTF)は、米国政府とは独立した立場で推奨内容をまとめています。本推奨内容は米国医療研究・品質調査機構(AHRQ)や米国保健福祉省の公式見解と解釈されるべきではありません。

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子宮頸がん検診の推奨グレード(USPSTF)[2018年8月更新・現在最新版]
(*サイト注:日本で対策型検診として現在実施されているのはパパニコロウ擦過細胞診です。欧米ではHPV検査も実施されています)
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対象者  21~65歳の女性
推奨グレード(詳細は、推奨グレードの定義参照): A(強く推奨)
推奨内容:21~29歳の女性が3年毎に子宮頸部細胞診単独による子宮頸がん検診を受けることをUSPSTFは推奨する。30~65歳の女性については3年毎の子宮頸部細胞診単独、5年毎のハイリスク型ヒトパピローマウイルス(hrHPV)検査単独、または5年毎の細胞診とhrHPV検査との組み合わせ(併用検査)による検診を受けることをUSPSTFは推奨する。
21歳以上の女性に対する代替の検診方法の相対的利益と不利益については臨床上の見解を参照。
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対象者 : 65歳以上の女性
推奨グレード(詳細は、推奨グレードの定義参照): D(反対)
推奨内容:過去に適切に検診を受けていた、子宮頸がんリスクが高くない65歳以上の女性が子宮頸がん検診を受けることをUSPSTFは推奨しない。過去の検診の妥当性および65歳以降の検診を支持するリスク因子の考察については臨床上の見解を参照。
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対象者:  21歳未満の女性
推奨グレード(詳細は、推奨グレードの定義参照): D 
推奨内容: 21歳未満の女性が子宮頸がん検診を受けることをUSPSTFは推奨しない。
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対象者  子宮摘出術を受けた女性
推奨グレード(詳細は、推奨グレードの定義参照): D
推奨内容:子宮頸部の切除を含む子宮摘出術を受け、高悪性度の子宮頸部前がん病変(子宮頸部上皮内腫瘍[CIN]2または3)や子宮頸がんの病歴のない女性が子宮頸がん検診を受けることをUSPSTFは推奨しない。
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上段3つの推奨グレードは性交歴またはHPVワクチン接種の有無に関わらず子宮頸部を有する女性に適用され、高悪性度の子宮頸部前がん病変または子宮頸がんの診断を受けたことのある女性、ジエチルスチルベストロールの子宮内曝露を受けた女性、または免疫不全(例えばHIV感染者)の女性には適用されない。

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根拠
・重要性
子宮頸がん検診が幅広く実施されるようになって以降、米国で子宮頸がんによる死亡が劇的に減少しており、女性100,000人当たりの死亡数は2000年の2.8人から2015年の2.3人へと減少を続けている1。子宮頸がんは適切に検診を受けていない女性が発症する場合が多い2。すべての女性が適切な間隔で検診を受け、必要な経過観察を受けることを確実にするような目標の戦略により米国の子宮頸がん罹患率および死亡率が一層低下する可能性が高い。

・検出方法
子宮頸部細胞診単独による子宮頸がん検診、複数のハイリスク型HPVを調べる一次検査(hrHPV検査)単独による子宮頸がん検診、子宮頸部細胞診とhrHPV検査とを同時に実施する子宮頸がん検診(併用検査)は、高悪性度の子宮頸部前がん病変および子宮頸がんの発見につながる可能性があるという有力なエビデンスを米国予防医学専門委員会(USPSTF)は確認した。

・USPSTF評価
21~29歳の女性が3年毎に細胞診単独による検診を受けた場合、その利益が不利益を大幅に上回ることはきわめて確実であり、また30~65歳の女性については3年毎に細胞診単独、5年毎にhrHPV検査単独、または細胞診とhrHPV検査とを組み合わせた検診を受けた場合、その利益が不利益を上回ることはきわめて確実であるとUSPSTFは結論する。

過去に適切に検診を受けており、子宮頸がんのリスクも高くない65歳以上の女性が子宮頸がん検診を受けた場合、その利益が予想される不利益を上回らないことはある程度確実であるとUSPSTFは結論する。

21歳未満の女性が子宮頸がん検診を受けた場合、その不利益が利益を上回ることはある程度確実であるとUSPSTFは結論する。

高悪性度の子宮頸部前がん病変または子宮頸がん以外の症状により子宮頸部の切除を含む子宮摘出術を受けた女性が子宮頸がん検診を受けた場合、その不利益が利益を上回ることはきわめて確実であるとUSPSTFは結論する。

臨床上の見解
・対象の患者
本推奨グレードは性交歴に関わらず子宮頸部を有する無症状のすべての女性に適用され、高悪性度の子宮頸部前がん病変または子宮頸がんの診断を受けたことのある女性、ジエチルスチルベストロールの子宮内曝露を受けた女性または免疫不全(HIV陽性など)の女性には適用されない。

・リスク評価
ハイリスクヒトパピローマウイルス(hrHPV)感染は子宮頸がんのほぼすべての症例の原因となり、女性は性行為を通じてhrHPVに曝露される。HPV感染の大部分が自然消退するが、hrHPVに曝露される可能性が高いということは、子宮頸部前がん病変および子宮頸がんのリスクを有することを意味する。

HIV感染、免疫不全、ジエチルスチルベストロールの子宮内曝露および高悪性度子宮頸部前がん病変または子宮頸がんの治療歴など、特定のリスク因子により子宮頸がんのリスクが高くなる。このようなリスク因子のある女性は本推奨グレードの対象に含まれず、個々に応じた経過観察を受けるべきである。子宮頸部の切除を含む子宮摘出術を受け、高悪性度の子宮頸部前がん病変または子宮頸がんの病歴のない女性は、子宮頸がんのリスクが高くないため検診を受けるべきではない。臨床評価の一環として、臨床医は手術記録の見直しまたは直接検査により子宮頸部が切除されたことを確認すべきである。

・検診
液状検体細胞診と従来の細胞診との間には臨床的に問題となる差異のないことが最新のエビデンスで示されている。ハイリスク型HPV(hrHPV)を検出するさまざまなプラットフォームが使用されており、シグナル増幅法か核酸増幅法のいずれかを用いる場合が多い。hrHPV検査に関する試験が発表されており、子宮頸がんの原因となるHPV型の検査に、in situハイブリダイゼーション、ポリメラーゼ連鎖反応およびハイブリッドキャプチャー法が使用されていた。hrHPV検査は、一次検査、細胞診との併用検査および細胞診結果が陽性の場合の経過観察の検査(hrHPV反射検査)に利用されている。2

・検診の時期
21歳未満の女性
21歳未満の子宮頸がんはまれである。8 腟を介した性交渉とともに子宮頸部細胞がhrHPVに曝露されると子宮頸部のがん化につながる場合があるが、がん化のプロセスには複数の段階があり、消退することもあり、一般に進行速度は速くない。この年齢群は病気の進行が遅く、消退の可能性も高いため、性交歴にかかわらず21歳未満で検診を受けても不利益が利益を上回るというエビデンスがある。21歳未満の女性がCIN2またはCIN 3の治療を受けると妊娠に伴う合併症のリスクが高まる場合がある。2, 8

65歳以上の女性
米国がん協会(ACS:the American Cancer Society)、米国コルポスコピー子宮頸部病理学会(ASCCP:American Society for Colposcopy and Cervical Pathology)および米国臨床病理学会(ASCP:American Society for Clinical Pathology)の共同ガイドラインは、過去の検診結果が良好であったとする定義を、「最後に検診を受けてから5年を経過しておらず、検診をやめる前の10年以内に3回連続で細胞診の結果が陰性または2回連続で併用検査が陰性の場合」としている。本ガイドラインはさらに、自然消退または前がん病変の適切な治療後少なくとも20年間は、たとえ65歳以降の検診に延長することになったとしても定期検診を継続すべきであると記述している。いったん検診をやめた場合、65歳以上の女性はたとえ新しいセクシャルパートナーがいると報告したとしても検診を再開すべきでない。

過去に十分に検診を受けていなかった65歳以上の女性
過去の検診歴が不十分な、もしくは不明の高齢女性は臨床的に検診が必要な場合がある。45~64歳の女性の1/4が過去3年間子宮頸がん検診を受けていないことが最新のデータで示唆されている。9 特に、医療を受ける機会が限られている女性、人種的/民族的マイノリティの女性および検診が受けられない国出身の女性は、過去の検診歴が十分であるとする基準を満たす可能性が低い場合がある。いくつかの考察も、リスクの高い65歳以上の女性(例えば高悪性度の子宮頸部前がん病変または子宮頸がんの病歴がある、ジエチルスチルベストロールの子宮内曝露を有する、または免疫不全を有する女性)の検診を支持している。2

・検診の間隔
細胞診単独による3年毎の検診よりも頻回に検診を受けてもさらなる利益はほとんど得られず、追加の処置と評価および一過性病変に対する治療などの不利益が大幅に増加する。自然に消退すると思われる病変の治療は、それ自体が妊娠時の頸管無力症や早産の可能性など望ましくない有害事象に対する処置につながり得るため有害である。一次ハイリスク型HPV(hrHPV)検査単独または併用検査による検診の間隔を5年にすると利点と不利益のバランスが最良となるエビデンスがランダム化比較試験、観察研究およびモデル研究により示唆されている。一次hrHPV検査単独または併用検査による5年毎の検診よりも頻回に検診を受けても利点は大幅には改善せず、検診や子宮頸部拡大鏡検査の回数が有意に増える。

・治療
検診の目的は高悪性度の子宮頸部前がん病変を同定し、子宮頸がんへの進行を予防することである。高悪性度の子宮頸部前がん病変の治療は切除および焼灼療法となる場合がある。早期子宮頸がんの治療は外科手術(子宮摘出術)または化学療法となる場合がある。子宮頸部前がん病変の治療はがん治療と比較して低侵襲である。2

・人種/民族性、地理と子宮頸がん
特定集団において子宮頸がんの罹患率および死亡率は相対的に高いままである。アフリカ系アメリカ人女性の子宮頸がん全死亡率は女性100,000人あたり10.1人であり、10 年々差は縮小しているものの白人女性の死亡率の2倍以上(子宮摘出率で調整済み)である。死亡率は高齢のアフリカ系アメリカ人女性でさらに高い。アフリカ系アメリカ人女性は白人女性と同じ割合で子宮頸がんの検診を受けていること、そして検診後の対応や治療が適切でないことが重要な要因である可能性がいくつかの試験で明らかになっている。アフリカ系アメリカ人女性の死亡率がより高いのは、最もよくみられる種類の子宮頸がん(扁平上皮がん)よりも予後が不良な腺がんの平均発症率が高いことが一因である可能性もある。10-12

アメリカ先住民/アラスカ先住民の女性もまた、米国の平均と比較して子宮頸がんによる死亡率が高い(女性100,000人あたり3.2人)。10 このように死亡率が高い要因として、検診率が低いこと(2012年の行動リスク因子調査システム[Behavioral Risk Factor Surveillance System]ではアメリカ先住民/アラスカ先住民女性の16.5%がパパニコロウ擦過細胞診[Pap]検査を過去5年間未受診と報告)や経過観察が適切でない可能性が考えられる。ヒスパニック系の女性の子宮頸がん罹患率は有意に高く、また死亡率もやや高く(女性100,000人あたり2.6人[子宮摘出率による調整なし])、特にテキサスとメキシコの国境沿いに多い。全体的に白人女性は子宮頸がんによる死亡率が最も低いが、地理的に孤立した地域や医療が十分に整っていない地域(特にアパラチア地方)に住む白人女性の死亡率は米国の平均よりもはるかに高い。アジア系の女性、特に米国に移住してから年数があまり経っていない女性も検診率が低く、検診への言語的または文化的な障壁が考えられる。10

人種/民族性や地理に加えて、保険制度も子宮頸がん検診へのアクセスに重要な役割を果たす。保険未加入の女性の23.1%、検診担当医のいない女性の25.5%が過去5年間にPap検査を受けていないと報告され、これに対して一般集団は11.4%であった。保険の加入状況は、人種/民族性や年齢といった他の人口統計学的要因と相互作用し、格差を広げる可能性がある。13 加えて、障害を持った女性およびレズビアンまたはトランスジェンダーの女性については検診データがない。14-16

30~65歳の女性について、細胞診単独、ハイリスク型HPV(hrHPV)検査単独および細胞診とhrHPV検査の併用による検診の利益と不利益は適度に均衡しており、この年齢群の女性は自分に最適な検診戦略はどれかについて医療従事者と話し合うべきである。細胞診単独による検診は、hrHPV検査単独による検診と比較してCIN2およびCIN3の検出感度がやや低いことがランダム化比較試験(RCT)および意思決定モデル研究によるエビデンスで示唆されている。hrHPV検査単独または細胞診とhrHPV検査の併用による検診はCIN2およびCIN3の症例をより多く検出するが、この検診方法は結果として検出された各症例に対する診断的子宮頸部拡大鏡検査の回数を多くする。2-5

細胞診、hrHPV検査または併用検査による検診結果が異常を示した場合のトリアージ検査のプロトコルは多数ある。プロトコルが異なっていてもCIN2およびCIN3の検出率はほとんどの場合同じであると臨床試験によるエビデンスおよびモデル研究で示唆されているが、追加のトリアージ検査を実施せずにそのまま診断的子宮頸部拡大鏡検査を実施すると、他のトリアージ検査プロトコルを利用した場合と比較して子宮頸部拡大鏡検査の回数が大幅に増える。細胞診単独またはhrHPV検査単独による検診の利益と不利益の差益を維持するには、患者、臨床医、健康維持医療団体が現在推奨されている検査間隔、診断的子宮頸部拡大鏡検査および治療のプロトコルに従う必要がある。6, 7

子宮頸がんの罹患率および死亡率の低下に向けた進展は一様ではなかった。罹患率および死亡率の高さの原因となる最も重要な要因は、検診に対する経済的、地理的、および言語または文化的な要因からの検診への障壁、経過観察に対する障壁、不平等な治療およびがんの種類の違いであり、これらはすべて亜集団によって異なる。

・予防へのさらなるアプローチ
米国疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention)の予防接種に関する諮問委員会(Advisory Council on Immunization Practice)はHPVワクチン接種を定期的に受けることを推奨している。9~14歳で一連のワクチン接種を開始する女児および男児には2回投与スケジュールを推奨している。3回投与スケジュールについては、15~26歳で一連のワクチン接種を開始する女児および男児と免疫不全の女児および男児に対して推奨している。高悪性度の子宮頸部前がん病変と子宮頸がんに及ぼすHPVワクチン接種の全体的効果は現在不明である。最新の臨床試験から長期的有効性に関するデータは得られておらず、ワクチン接種が細胞診またはhrHPV検査による検診の必要性を減少させる可能性は確立されていない。このように不確定であっても、ワクチン接種を受けた女性はさらなるエビデンスが得られるまでは推奨されたとおり検診を継続すべきである。

・役に立つ資料
2012年ACS/ASCCP/ASCPガイドラインおよび2015年ASCCPおよび婦人科腫瘍学会(SGO:Society of Gynecologic Oncology)の暫定ガイドラインに検診結果に異常がみられた場合の経過観察のアルゴリズムが規定されている。

米国疾病対策予防センター、米国国立衛生研究所および米国感染症学会のHIV医学協会(HIV Medicine Association of the Infectious Diseases Society of America)がHIV陽性患者における子宮頸がんの検診および管理についての推奨事項を発表した。

米国国立がん研究所は、報告書「子宮頸がんの超過死亡:貧困地域における医療へのアクセスの少なさを示すマーカー(Excess Cervical Cancer Mortality: A Marker for Low Access to Health Care in Poor Communities)」に子宮頸がんの死亡率を減少させるための戦略を規定している。

翻訳担当者 松長 愛美

監修 喜多川 亮(産婦人科/東北医科薬科大学病院)

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