がん予防というメッセージは、保護者とのHPVワクチン接種に関する話し合いにとって重要である

医療従事者はヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種予定の9~12歳の小児の保護者と話し合うとき、がん予防を強調して伝えるべきである。これは、米国内の様々な保護者を対象に、小児にワクチン接種を受けさせるときに最も説得力があると感じた動機は何かを質問した新規研究の結論である。

特定の型のHPVは事実上全ての子宮頸がんだけでなく、ほとんどの肛門がん、多数の中咽頭がん、膣がん、および外陰がん、ならびに一部の陰茎がんを引き起こす。

米国の疾病管理予防センター(CDC)は、11または12歳の男女に対してHPVワクチンの定期接種を始めるよう推奨する。しかし、2016年、米国内の思春期男女で、HPVワクチンの定期接種を受けたのは43%だけであった。多数の研究から、こうした低接種率は、HPVワクチン接種に関する医療従事者の話し方によることが示されている。

CDC、大統領府がん諮問委員会、および他の団体は、がん予防がHPVワクチン接種にとって最も重要な動機であることを、医療従事者から保護者に伝えるよう推奨する。しかし、「私が知る限り、本研究は、がん予防が最も重要なメッセージであるという科学的根拠を検証・提示した初めての研究です」とSarah Kobrin博士、公衆衛生学修士(NCIがん対策・統計部門、同研究には不参加)は述べた。

NCIが資金提供した同研究の結果は、Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention誌2018年7月号に掲載された。

この研究で様々なグループの保護者に対してアンケート調査を実施

Melissa Gilkey博士(ノースカロライナ大学チャペルヒル校)らは11~17歳の男女の保護者1,259人に対してインターネットアンケート調査を実施した。本研究への回答者は51%が女性で、49%が男性であった。また、いずれも米国の全地域出身で、教育水準や所得水準は様々であった。

「最善―最悪尺度法」という方法を使用して、Gilkey氏らは保護者に対し、12歳の小児がHPVワクチン接種を受けるために医師が伝える最も良いおよび最も悪い動機を11項目から選択するよう求めた。次に、この全11項目の動機の全ての順位を記入した保護者1,177人から集めた結果をまとめた。この調査には、思春期に受ける一般的なワクチン接種における保護者の信頼度を評価する質問も含まれた。

全保護者の間で、「一部のがんを予防できます」がHPVワクチン接種に関する最善の動機になった。

「これが断然最善の動機であると保護者は考えました。なお、この結果は多様な保護者に共通していました」とGilkey氏は述べた。

思春期に受けるワクチン接種への信頼度が低い保護者と高い保護者の両群とも、がん予防が最善の動機であると述べたことに注目すべきであろう。この2群は考えられる他の動機も全体的に同様の順位を付けた。これはGilkey氏らの予測と反していた。

保護者が上位に順位を付けた他の動機には、「頻度の高い感染症を予防できます」と「効果は持続します」が含まれた。

保護者が最悪と順位を付けた動機には、「子供はワクチン接種を受けることになっています」と「子供のためにワクチン接種を受けさせました」が含まれた。

「これらの動機は必ずしも不適切なメッセージではありませんが、概して保護者に対する説得力はないようです」とGilkey氏は述べた。

がんセンターはHPV ワクチン接種率の上昇という目標を推奨する

2018年6月1日、全米のNCI指定がんセンターの専門医は、HPVワクチン接種によるHPV関連がんの根絶、科学的根拠に基づくがん検診、および子宮頸部前がん病変の治療という目標を推奨する声明を発表した。

同声明は、医療従事者がHPVワクチン接種と子宮頸がん検診を明瞭かつ明確に勧めるよう要請した。「こうした検診は、毎年米国内の男女に発生する12,000例の子宮頸がんと約40,000例の他のHPV関連がんを予防する好機になります」と同声明に記載された。

保護者にワクチン接種を受けるように更に促すことは重要である

とはいえ、Gilkey氏らと外部の専門家の指摘通り、保護者に対して、HPVワクチン接種に関してどの動機が最善かを質問することと、実際に小児の担当医が保護者にワクチン接種を受けるように促す際にどのメッセージを発するかを決めることとは異なる。

「子供の担当医と話しているとき、信頼関係などが生じても、(この様な)調査では分かりません」とRebecca Perkins医師(ボストン大学医学部、HPVワクチンの研究者で、同研究には不参加)は指摘した。

「調査で示された選択肢と実際に起こっていることを区別することで、この研究でワクチン接種に対する信頼度が低い保護者と高い保護者の間の相違が現れなかった理由が明らかになるかもしれません」とKobrin氏は述べた。

Perkins氏らは最近、かかりつけ医、保護者、もしくは後見人と思春期男女の間の会話の音声記録を解析した研究を発表した。多数の保護者や後見人、特に事前にワクチン接種に関して決めかねている人にとって、「HPVワクチンは『接種を受けるべきです』または『必要です』」というかかりつけ医による一言が動機となることが分かった。

「保護者と話すときに、HPVワクチン接種と思春期に受ける他のワクチンは標準予防策ですと明瞭に伝えることが、第一歩になります」とGilkey氏は述べた。HPVワクチンに関して疑問がある、またはさらに話すことを望む保護者にとって、がん予防というメッセージの強調は特に有用な可能性がある。

「そうなると、私たちが行ったような研究の出番です」とGilkey氏は続けた。

研究者らは、HPVワクチン接種率の上昇を目的として実際に行う介入をデザインし評価したこのような研究で得た最も有用なメッセージに関する情報を生かすことができる。こうした介入には、訓練中の医療従事者がHPVワクチン接種についての話し合い方を改善するための対策も含まれる。

Perkins氏は、HPVワクチン接種率80%というHealthy People 2020プロジェクトの目標を達成するため、「私たちはこうした(予防という)メッセージをHPVワクチン適格小児の保護者とこうした小児の担当医に伝える方法に焦点を当てる必要があります」と述べた。

翻訳担当者 渡邊 岳

監修 太田真弓(精神科・児童精神科/クリニックおおた 院長)

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