PI3K/mTOR阻害剤が特定の子宮肉腫に有効な可能性

米国がん学会のClinical Cancer Research誌に発表された研究によると、タンパク質P-S6S240は、平滑筋肉腫と呼ばれる治療困難なタイプの子宮肉腫の患者の予後不良を示す指標として役立つ可能性があり、非臨床試験データは、このタンパク質を有する腫瘍患者がPI3K / mTOR阻害剤に反応する可能性があることを示唆する。

「子宮肉腫はまれなために、これまで全体的に研究が不十分でしたが、この腫瘍は活動性が高い特徴があり治療が困難であるため、高い臨床的ニーズがあります」と、 ベルギーのルーヴェン癌研究所およびアムステルダムのオランダ癌研究所の教授であるFrédéric Amant医学博士は語った。

「これらの患者の治療選択肢を増やす目的で、あらゆる種類の子宮肉腫で標的にできるタンパク質の存在を明確にしたいと思っていました」と、Amant氏は述べた。

同氏の研究チームはまた、標的となるタンパク質のうち、臨床的な効果を予測できるバイオマーカーとなるものがあるかどうかを調べた。

「新しい治療法は高価であり、患者選択の重要性が強調されているため、バイオマーカーの特定は極めて重要です」と、Amant氏は語った。

Amant氏およびAmant氏研究室の博士課程の学生Tine Cuppens氏をはじめとする研究チームは、288個の子宮肉腫の検体から、特定のタンパク質5種類を調べた。検体288個の内訳は、平滑筋肉腫157個、良性子宮間質性腫瘍52個、正常な子宮組織検体41個のほか、子宮内膜肉腫、腺肉腫、未分化子宮肉腫であった。

研究者らは、調べたタンパク質のうちの1つである、活性化されたS6リボソームタンパク質P-S6S240が、高悪性度腫瘍(32%)で、低悪性度腫瘍(9%)よりも高い割合で発現していることを見出した。 このタンパク質の存在は、平滑筋肉腫患者の無増悪生存期間および疾患特異的生存期間がより短くなることにも関連していた。

P-S6S240はPI3K / mTOR細胞内伝達経路(がん増殖を刺激する細胞プロセス)において役割を担っていると、Amant氏は説明した。

研究チームはマウスにヒト新鮮腫瘍断片を移植し、5種の平滑筋肉腫患者由来異種移植(PDX)モデルを作製した。 その後、それらを試験用PI3K / mTOR二重阻害剤で治療し、2つのモデルで腫瘍の縮小を、3つ目のモデルでは腫瘍の安定を、4つ目のモデルでは腫瘍増殖の減少をみとめた。 効果がなかったPDXモデルが、活性化S6タンパク質陰性であったのに対して、効果を示したすべてのモデルはこのタンパク質が陽性であったことから、活性化S6タンパク質が効果を予測するマーカーになる可能性を示唆した。

「このことは、活性化S6タンパク質を有する子宮平滑筋肉腫患者の再発がより速いという発見とあわせて、P-S6S240が予後予測マーカーとして役立つ可能性があることを示唆しています」と、Amant氏は述べた。

2種類の活性型mTOR複合体のうち1種類のみを標的とした旧世代のmTOR阻害剤は軽度の効果しか得られなかったが、子宮肉腫患者には重大な毒性を示したため、肉腫治療のFDA承認を得られなかったと、Amant氏は説明した。 「新世代のPI3K / mTOR二重阻害剤[BEZ235; dactolisib]を前臨床試験で使用して、その有効性にわれわれのほとんどが驚きました。 このような強い治療応答は、平滑筋肉腫ではほとんど見られません」と、同氏は付け加えた。 許容できる毒性プロファイルを有するこのクラスの薬剤の開発は重要である、と同氏は指摘した。

「平滑筋肉腫は、なおざりにされている分野ですが、われわれは今、この疾患に対するPI3K / mTOR阻害剤を検討する臨床試験の背景となる頑健なデータを有しています。 このような研究への患者の参加も強く期待しています」と、Amant氏は述べた。

米国国立がん研究所によると、子宮肉腫は子宮悪性腫瘍の約2〜5%を占め、平滑筋肉腫は子宮肉腫の30%を占める。 腫瘍が子宮に限局していた患者の5年生存率は約50%であり、転移性であれば10〜30%に低下すると、Amant氏は述べた。

この研究の制約は、異種移植されたマウスの免疫系が欠けているため、そのようなモデルを用いた免疫関連の治療反応や毒性の評価ができないことである、とAmant氏は述べた。

この研究は、欧州婦人科腫瘍学会(ESGO)の下で活動する、子宮内膜がんの個別化治療のための欧州ネットワーク(ENITEC)内での国際共同研究であった。 研究は、プラハのバイオバンク助成金プロジェクト、スウェーデン労働市場保険およびスウェーデン医療研究評議会、西ノルウェー地域保健医療当局(Helse Vest R.H.F.)、ノルウェーがん学会、ノルウェー研究審議会から助成金を受けた。 PDXを用いた実験は、KULeuven PDXプラットフォームであるTraceで実施した。 研究著者らは、利益相反はない宣言している。

翻訳担当者 有田香名美

監修 喜多川 亮(産婦人科/東北医科薬科大学病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

子宮がんに関連する記事

オラパリブ+デュルバルマブ追加で化学療法単独よりも子宮体がんの進行リスクが低下 -ESMO2023の画像

オラパリブ+デュルバルマブ追加で化学療法単独よりも子宮体がんの進行リスクが低下 -ESMO2023

MDアンダーソンがんセンターアブストラクト: LBA41

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らによると、抗PD-L1モノクローナル抗体デュルバルマブ(販売名:イミフィンジ)...
キャッチアップHPV検査が65歳以上の子宮頸がん予防に役立つ可能性の画像

キャッチアップHPV検査が65歳以上の子宮頸がん予防に役立つ可能性

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ発がん性ヒトパピローマウイルス(HPV)の有無を調べる検査は現在、子宮頸がん検診の標準的検査項目で、同時にパップテストを行うこともある(同時...
子宮体がんにセリネクソール維持療法は無増悪生存期間を延長の画像

子宮体がんにセリネクソール維持療法は無増悪生存期間を延長

米国臨床腫瘍学会(ASCO)ASCO専門家の見解「TP53野生型の子宮体がん腫瘍を評価した第3相SIENDO試験のサブセット解析から、パクリタキセルとカルボプラチンの併用療法の...
子宮頸部前がん病変をAIの活用で正確に検出―日本の研究発表の画像

子宮頸部前がん病変をAIの活用で正確に検出―日本の研究発表

米国臨床腫瘍学会(ASCO)ASCOの見解「子宮頸がん検診においてコルポスコピー((腟拡大鏡診)は重要な役割を果たしています。本研究は、がん検診に人工知能の力を活用することで、...