BRCA1変異を有する女性は致死的な子宮体がんのリスクが高い

乳がんおよび卵巣がんのリスク因子であるBRCA1遺伝子変異を持つ女性は、致死的なタイプの子宮体がんに罹患するリスクが高いことが、デュークがん研究所の研究により明らかにされた。

今回の研究で、BRCA1遺伝子変異と、少ないながらも非常に活発な子宮体がんを発症する可能性が明らかに高まるとの確実な関連性が初めて示された。この新しく発見されたリスク因子は、今後の治療選択肢を検討する上で考慮すべき要素になるかもしれない。

現在、BRCA1遺伝子変異を持つ女性は、先行研究の結果をもとにがんのリスクが高まると言われている卵巣や卵管と同時に、しばしば予防的に両乳房の摘出を行っている。

「本研究は、これまで必要とされてきた研究である」と、筆頭著者であり、デュークがん研究所の臨床がん遺伝学プログラムのリーダーでもあるNoah D. Kauff医師は言う。「われわれの研究は、女性がこの遺伝子変異を持つ場合、卵巣および卵管の切除手術と同時に、子宮摘出について少なくとも自身の担当医と話し合うべきであるという非常に強固なエビデンスを示した」。

しかし、子宮摘出の必要性については相反するエビデンスも示されている。これまで小規模の研究によって遺伝子変異と子宮がんとの関連が示されているが、一方で臨床現場を変えるためには、多施設による多くの女性を対象にした大規模な研究により、さらに高いエビデンスを示すことが条件となる。6/30にJAMA Oncology電子版に掲載された今回の研究は、Kauff医師ら米国や英国にあるその他9つの施設の研究者らが、1,083人の女性のデータを解析した。これらの被験者は全てBRCA1やBRCA2遺伝子変異を持っており、すでに卵巣や卵管の切除を受けて5.1年間(中央値)経過観察された女性であった。

今回の研究ではBRCA遺伝子変異陽性の女性における子宮体がんの発生率と、アメリカにおけるSurveillance Epidemiology and End Results Program(SEERプログラム)からのデータをもとに予測された一般の母集団における発生率とが比較された。

BRCA遺伝子変異が陽性の女性の間では、研究期間中に8件の子宮体がんが報告された。この割合は一般的な割合より少し高かったが、有意な差ではなかった。

しかしながら、これら8件のがんのうち、5件は子宮内膜漿液性腺がんと呼ばれる子宮がんの中でも特にアグレッシブな特殊型であった。1件を除くすべての子宮内膜漿液性腺がんが、BRCA1遺伝子変異を持つ女性でみられた(1件はBRCA2遺伝子変異を持つ患者でみられた)。

女性一般の母集団におけるこのがんの発生率で計算すると、BRCA1遺伝子変異を持つ女性で予測される件数は今回の解析期間のあいだで0.18件のみしか発症しないはずであり、このことからBRCA1遺伝子変異をもつ女性に有意に高いリスクがあることが示された。

「データを見た時われわれは驚いた」とKauff医師は言う。「われわれの研究に参加したBRCA1遺伝子変異を持つ被験者600人以上の女性においても見られないないであろう事象である。これらの女性を25年間経過観察したとしても、子宮内膜漿液性腺がんはたった1件発見されるかだろう」

Kauff医師は、子宮内膜漿液性腺がんの死亡率は50%であり、また卵巣および卵管切除術を受けようとしている女性ではこの疾患を回避できるという点で、この発見は特に重要である、という。

「われわれの研究は、BRCA1遺伝子変異をもつ女性にとって、卵巣や卵管を切除する際に子宮も切除することを考慮することは重要であるかもしれない、ということを示している。一方で、まだ生殖補助医療によって子供を持ちたいと望んでいたり、あるいは別の医療的理由がある場合にはこの限りではない」とKauff医師は言う。

Kauff医師は、BRCA1遺伝子変異を持ち卵巣および卵管をすでに切除した女性については、今回の結果はまだ不明確であると警告する。

「今後、通常25年リスクが2.6%の子宮内膜漿液性腺がんが4.7%まで高くなっている対象に、二回目の手術を行うことでコスト的にも、合併症の可能性を鑑みた上でも必要であるかどうかを証明しなければならない」とKauff医師は述べている。

翻訳担当者 仲川涼子

監修 喜多川 亮(産婦人科/東北医科薬科大学病院)

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