HPV検査陰性は子宮頸部細胞診陰性より鋭敏に子宮頸癌の低リスク女性を予測ー米国国立衛生研究所(NHI)

米国国立がん研究所(NCI)米国国立衛生研究所(NHI)プレスリリース

原文掲載日 :2014年7月18日

NIH研究班は100万人以上の女性を対象とした研究に基づき、ヒトパピローマウイルス(HPV)検査での陰性結果は、パップテスト(子宮頸部細胞診)陰性よりも将来の子宮頸癌発症リスクを安全または確実に予測できると判断した。つまり、HPV検査で陰性と診断された女性は、将来子宮頸癌に罹患する可能性が非常に低い。本研究結果は2014年7月18日、NIH傘下の組織であるNCIの研究者によって、JNCI (Journal of the National Cancer Institute)の電子版で発表された。

HPV検査はほぼ全ての子宮頸癌の原因と考えられているHPVの型のDNA(またはRNA)を検出する 。一方、子宮頸部細胞診は子宮頸癌への進行に関連する細胞の異常を検出する。 HPV検査と細胞診は共に子宮頸部から採取した細胞標本を用いて行う。

2003年以降、カイザーパーマネンテ北カルフォルニア・ヘルスケアシステムに登録した30歳から64歳までの女性がHPV検査と細胞診による併用検診を行った。この対象集団は、米国の通常診療に組み込んだ検診としてのHPV検査では、最も長期にわたるものとして知られている。 2011年、NCIの研究者とその共同研究者は同集団の約300,000人の女性の検査結果に基づく発見を発表した。このデータは、検診で正常と診断された場合、3年毎の細胞診(21歳から65歳の女性が対象)、または5年毎の併用検査(30歳から65歳の女性が対象)を推奨している米国予防医学専門委員会(US Preventive Services Task Force, USPSTF)のデータとともに、現 在の米国子宮頸癌検診ガイドラインで参照されている。

新たな研究では、2011年の解析対象に加え2012年12月31日までに検診を受けた女性を100万人以上に拡張した。 同研究では、HPVのみ陰性、細胞診のみ陰性、併用検査陰性に関して子宮頸癌発症リスクを推定している。 3年毎の細胞診と5年毎の併用検査を推奨するUSPSTFガイドラインに基づき、想定リスクを比較した。

研究者らは、HPV検査で陰性と診断された後、3年以内に子宮頸癌を発症する確率は、細胞診陰性との比較で約半数に止まることを明らかにした。 これは、併用検査で陰性と診断された後5年以内に発症するリスクと同等であった。 研究者らは各検査で陰性結果が出た後に子宮頸癌を発症する可能性を次のように推定している。

細胞診:10万人に20人が3年以内に発症

HPV検査:10万人に11人が3年以内に発症

併用検査:10万人に14人が5年以内に発症

本研究報告の筆頭著者でありNCI癌疫学・遺伝学部門リサーチ・フェローのJulia Gage博士は「我々の研究結果は、HPV検査の予測能力が細胞診に比べて非常に優れていることを示している。また、併用検査を推奨する現在のガイドラインを支持する根拠となると同時に、検診の代替法の一つとして最初からHPV検査のみを選択肢とできる可能性も示唆している」と述べている。

参考文献: Gage JC, et al. Reassurance against future risk of precancer and cancer conferred by a negative HPV test. JNCI. Online July 18, 2014.  DOI: 10.1093/jnci/dju153.

(図)子宮頸部に一度侵入したHPVは子宮頸部上皮細胞を攻撃し、HPV感染が続くと異常な細胞変化と子宮頸部異形成が生じる。

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 訳
 
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 原文

翻訳担当者 遠藤豊子 

監修 喜多川亮(産婦人科/NTT東日本関東病院)

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