キャッチアップHPV検査が65歳以上の子宮頸がん予防に役立つ可能性

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ

発がん性ヒトパピローマウイルス(HPV)の有無を調べる検査は現在、子宮頸がん検診の標準的検査項目で、同時にパップテストを行うこともある(同時検査)。しかし、子宮頸がん検診は多くの地域において65歳で中止するよう推奨され、かつ、さまざまな理由から、多くの高齢者がその年齢よりかなり前に子宮頸がん検診の受診をやめている。

しかし、デンマークで実施された集団ベースの研究(以下本研究)結果から、65~69歳の人の一部、すなわち、5年以上子宮頸がん検診を受けていない人に関しては、HPV検査を受ける価値がある可能性が示唆される。

本研究で、この「キャッチアップ」HPV検査を受けるよう勧められた女性(介入群)の約62%がその後1年以内に検査を受けた。キャッチアップHPV検査を勧められなかった女性(比較対照群)では、その後1年間にパップテストかHPV検査のいずれかを受けた女性はわずか約2%であった。

介入群女性で診断されたCIN2+病変の比率は、比較対照群女性よりも有意に高かった(それぞれ適格女性1,000人当たり3.9人対0.3人)。CIN2+病変は前がん病変と言われることが多いが、その理由はこうした病変ががん化する可能性があるためである。これらの病変を早期に発見することで、医師は進行する前に切除できる。
 
検診の定期的受診が最もできていない女性、すなわち、 50歳以降検診を1回しか受けていないか、まったく受けていない女性は、50歳以降検診を2回以上受けている女性と比較して、CIN2+病変の発生率が約2倍であることがわかった。

本研究結果は、PLOS Medicine誌7月6日号に発表された。

「高齢者における子宮頸がん検診を再評価する時期かもしれません。本研究のデータから、検診をあまり受けていない高齢女性に対して、(キャッチアップHPV検査の提供は)本当に有益である可能性が示されます」と主任研究員であるMette Tranberg博士(デンマーク、ランダース地域病院、がん検診大学研究クリニック)は述べた。

本研究結果は、検診結果が(複数回)陰性という履歴がある場合、65歳で検診受診をやめてよいとする、米国など一部の国々における推奨事項を支持しており、そうした場合にはその後、子宮頸がん発症につながる新規HPV感染のリスクは非常に低いとNicolas Wentzensen医学博士(NCIがん疫学・遺伝学部門(DCEG)、本研究には不参加)は述べている。

注意すべき点として、キャッチアップHPV検査には否定的側面もあり得るとTranberg氏は言う。

あらゆる検診法と同様、前がん病変や早期がんの発見の潜在的利益と潜在的不利益を比較することが重要であるとTranberg氏は述べた。こうした潜在的不利益には、生涯、がんにはならなかった可能性がある病変に対して治療を受けることも含まれる。

全体として、本研究は女性が高齢になっても子宮頸がん検診を受け続けることの重要性を補強するものであるとWentzensen氏は述べた。 

「本研究では、この特定集団における前がん病変有病率を評価できました。前がん病変有病率を明らかにすることは、どの年齢層においても検診に関する推奨事項を周知するうえで、一つの鍵となります。本研究は、65歳以上で前がん病変を有する可能性があること、さらに、 このような人々にHPV検査を行って、治療が必要と思われる人を特定することは有益と考えられることを明確に示しています」とWentzensen氏は述べた。

高齢者検診の課題

ほとんどすべての子宮頸がんは、高リスク型HPV、特に16型と18型の感染によって引き起こされる。ほとんどのHPV感染は自然治癒するが、人によっては感染が何年も持続し、異常子宮頸部細胞が子宮頸部病変を形成する可能性がある。こうした病変は未治療のままだと、子宮頸がんに進行することがある。

パップテスト(子宮頸部細胞検体における異常細胞を探す検査)と異なり、HPV検査は、高リスク型HPV由来遺伝物質(DNAまたはRNA)が細胞に存在するかどうかを確認するものである。

米国など多くの国々では、子宮頸がん検診の主要な手法としてHPV検査への移行が始まっている。HPV検査で陽性と判定された女性は、パップテストもしくはコルポスコピー(拡大鏡による子宮頸部の目視検査)、ならびに、細胞の異常度や子宮頸部組織がどの程度変化を受けているかをみる生検を受けることになる。

HPV検査はウイルス感染の検出において非常に優れている。しかし、こうした検査が利用できるようになったのはここ10年ほどのことなので、65歳以上の女性のほとんどは一度も受けたことがない。その代わり、ほとんどの高齢女性は、子宮頸がんの定期検診としてパップテストを受けている。

しかし、閉経後の生理的変化により、子宮頸部細胞の変化が通常始まる部位から医師が検体を採取することが難しくなるため、若年女性と比較して高齢女性ではパップテストの効果が低くなる。

子宮頸がんは多くのがんと比較して若年で診断される傾向がある(米国では診断年齢中央値は50歳)とはいえ、高齢女性も罹患する。

65歳以上の女性が子宮頸がんと診断され死亡する症例が後を絶たないため、こうした女性の子宮頸がん予防を目的とする新たな手法が必要と専門医は述べる。具体的には、米国では 65歳以上の女性が子宮頸がんの新規症例の20%以上を占め、この疾患による死亡例の約37%を占めている。

65歳以上の女性、特に検診を受けていない女性にキャッチアップHPV検査を実施することで、子宮頸がん予防におけるこの年齢層での較差を埋められるのではないかとTranberg氏らは考えた。

HPV検査受診の遅れを取り戻す

本研究で、デンマークのある地域の65~69歳の女性11,000人以上にHPV検査を受けるよう勧めた。検査方法として、担当医による子宮頸部検体採取、または、検査用に郵送される腟自己採取キット(自己検体採取)の使用のいずれかを選択できた。 

過去5.5年間に検診記録がない女性を対象とした。デンマークの残りの4地域に住む比較対照群の女性約33,400人には通常のケアが提供され、例えば、腟からの出血があった場合など、必要に応じたパップテストやHPV検査の受診が含まれた。

キャッチアップHPV検査を受けた女性のうち、約62%が12カ月以内にHPV検査を受けた。一方、比較対照群の女性では、同じ期間内にパップテストまたはHPV検査のいずれかを受けた女性はわずか2%であった。

研究者らはデンマークにおける中央データ ネットワークの患者記録を用いて、両群でCIN2+病変が診断された比率を比較した。キャッチアップHPV検査群の女性では、適格女性1,000人中3.9人にCIN2+病変が認められた。一方、比較対照群では適格女性1,000人中0.3人であった。

50歳代から60歳代前半にかけて、検診歴がほとんどまたはまったくない(「検診受診が不十分」な)女性は、同じ時期に少なくとも2回以上検診を受けている(「定期受診」)女性と比較して、CIN2+病変を有する可能性が2倍以上高かった。

全体として、キャッチアップHPV検査女性では、自己検体採取よりも臨床医による子宮頸部検体採取を選択した女性の方が多かった。しかし、検診が不十分な女性は、定期検診を受けている女性と比較して、自己検体採取を選択する傾向が非常に強かった。

自宅で自己検体採取した女性2,000人のうち、161人がHPV陽性であった。この集団のうち、1人を除く全員が、その後6カ月以内に担当医による追加検査を受けた。

本研究結果から、自己検体採取の機会提供は、医療機関で検診を受けたくない女性にとって魅力的であろうことが示唆されるとTranberg氏は述べた。

リスクと利益を比較する

本研究結果は、米国の子宮頸がん検診ガイドラインにある、65歳以上の女性には正常な結果が続くまで検診を続けるよう呼びかける勧告の重要性を強調するものであるとWentzensen氏は述べた。

「(この年齢層に)リスクがあることはわかっています。ですから、臨床医は患者と協力して、HPV検査の結果が数回連続して正常であることを確認する必要があります」 とWentzensen氏は述べ、「正常結果が連続して出なかった患者に対しては、検診を勧めるべきです」と言い添えた。

しかし、CIN2+病変の多くはがんに進行することはないので、CIN2+病変は子宮頸がんリスクの最良の指標ではないとWentzensen氏は警告する。より的確な指標はCIN3+病変で、これはがんに進行する可能性がはるかに高いと述べた。

CIN3+がより的確な主要評価基準であっただろうが、統計学的見地からは、さらに大規模な研究が必要であっただろうとTranberg氏は認めた。しかし、CIN3+の比率が比較対照群女性と比べ、キャッチアップHPV検診受診群女性で高いことがわかった。

最終的には、無害な異常とがんに進行する異常とを識別するために、より優れた検査とバイオマーカーが必要だとTranberg氏は言う。

過剰診断や過剰治療など、検診がもたらし得る弊害を考慮すると、キャッチアップHPV検査を受けることで最も利益を得られる人を見極めることが重要であることもTranberg氏は指摘した。

一つの手法は、検診受診が不十分な高齢女性のみにキャッチアップHPV検査を提供し、自己検体採取キットをより広く利用できるようにすることであろう。 HPV検査用自己検体採取キットは、デンマークを含む数カ国ですでに使用されており、米国ではFDAの審査を受けている。

一方、Wentzensen氏らは、子宮頸がん検診に関連するいくつかの共同作業に従事している。それらには、検診率が依然として低い地域での検診を改善する取り組みが含まれる(下記参照)。

「HPV検査を中心とする検診は現在、世界のほとんどの地域で望ましい手法となっています。今は、実行すること、そして、新たに開発されたものがそれを必要とする人々に確実に届くようにすることが重要です」とWentzensen氏は述べた。

子宮頸がん検診・予防の改善取り組みに対するNCIの協力

NCIがん疫学・遺伝学部門は、子宮頸がん検診ガイドラインを改善し、新たな検診手法の普及を促進するために他機関と協力している。

これらの取り組みには以下のものがある:

・「永続的合意による子宮頸がん検診・管理ガイドライン」は、医療従事者が最新の子宮頸がん検診ガイドラインに対応できるよう、新規技術や手法の分野を継続的に監視する共同作業である。

・がんムーンショット計画の一つである米連邦子宮頸がん共同作業は、検診受診率が特に低い地域で新規の臨床管理と検診ガイドラインの採用を促進するために、臨床医向けツールキットを開発した。患者向けツールキットも開発中である。

・米国がん協会(ACS)の子宮頸がんに関する全米円卓会議は、子宮頸がんの予防、検診、および、治療における格差に対処することを目的とした機関の連合体である。同会議は、米国におけるHPV一次検診への移行を促進するために、2年間にわたるACS子宮頸がん検診計画の後に設立された。
  • 監訳 斎藤 博(がん検診/青森県立中央病院)
  • 翻訳担当者 渡邊 岳
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  • 原文掲載日 2023/09/01

【この記事は、米国国立がん研究所 (NCI)の了承を得て翻訳を掲載していますが、NCIが翻訳の内容を保証するものではありません。NCI はいかなる翻訳をもサポートしていません。“The National Cancer Institute (NCI) does not endorse this translation and no endorsement by NCI should be inferred.”】

 

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