骨盤および傍大動脈拡大リンパ節郭清を中高リスク子宮内膜癌に推奨

キャンサーコンサルタンツ
2010年2月

中高リスクの子宮内膜癌女性の場合、骨盤リンパ節郭清のみの場合と比較して、骨盤および傍大動脈拡大リンパ節郭清を実施した方が生存率が高いと、日本の研究者が報告している。この研究の詳細は、2010年2月25日にLancet誌電子版で発表されている。[1]

第II-III期の子宮内膜癌患者は、骨盤リンパ節郭清を実施していない患者と比較して、骨盤リンパ節郭清によりベネフィットを受けられることが分かっている。しかし、子宮内膜癌患者にベネフィットを与えるリンパ節郭清の範囲は不明である。研究者の中には、骨盤および傍大動脈拡大リンパ節郭清の方が、骨盤リンパ節郭清だけの場合よりも好ましいと考えている者もいる。しかし、これは議論のある問題である。補助放射線療法や化学療法の価値についてもよくわかっているわけではないが、最近の研究では、補助放射線療法および化学療法が進行段階の子宮内膜癌に効果があることが示されている。

今回の後ろ向き研究では、子宮内膜癌を発症した女性を対象とし、その中の325人が骨盤リンパ節郭清による治療を受け、346人が骨盤および傍大動脈拡大リンパ節郭清による治療を受けている。研究者たちは次の観察を行った。

  • 全体の生存率は、骨盤および傍大動脈拡大リンパ節郭清による治療を受けた患者の方が良好であり、ハザード比(HR)は0.53であった。
  • 傍大動脈リンパ節郭清の生存効果は、中高リスク患者で観察されたが、低リスク患者では観察されなかった。
  • 傍大動脈リンパ節郭清を行ったグループでは、中高リスク患者の生存率のHRは0.44であった。
  • 骨盤および傍大動脈リンパ節郭清を受けた中高率の再発リスクのある患者において、補助放射線療法または化学療法は、独立した生存率向上の因子であった。

「再発リスクが中高率である子宮内膜癌患者の治療として、骨盤および傍大動脈拡大リンパ節郭清が推奨される。リンパ節郭清の治療効果を検証するために、前向きランダム化または比較コホート研究を計画する場合は、再発リスクが中高率である患者では、骨盤および傍大動脈拡大リンパ節郭清を含めるべきである」と、これらの研究者たちは結論付けている。

コメント:ランダム化試験が実施されていないために、中高リスクの子宮内膜癌患者の場合、骨盤および傍大動脈拡大リンパ節郭清を指示してもよいと思われる。しかし、補助放射線療法や化学療法と手術の間の相互作用は明らかでない。

参考文献:

[1] Todo Y, Kato H, Kaneuchi M, et al. Survival effect of para-aortic lymphadenectomy in endometrial cancer (SEPAL study ): a retrospective cohort comparison. Lancet [early online publication]. February 25, 2010.


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翻訳担当者 桝谷 哲

監修 原 文堅(乳腺科/四国がんセンター)

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