進行子宮頸がん化学療法にペムブロリズマブ追加で生存率が改善

米国臨床腫瘍学会(ASCO2023)

ASCOの見解

「本試験の結果は、進行、再発または転移子宮頸がん患者に対して、ベバシズマブ併用/非併用化学療法にペムブロリズマブを追加する治療法が、この疾患の初回標準治療として確固たるものであることを示した。PD-L1発現の有無にかかわらず、このアプローチで生存期間が有意に改善し、この疾患のすべての患者への使用をさらに裏付ける」と、ASCO専門家のMerry Jennifer Markham医師(FACP:米国内科学会フェロー、FASCO:ASCOフェロー)は述べている。 

免疫療法薬であるペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)を、ベバシズマブ(商品名:アバスチン)併用または非併用化学療法に追加することにより、PD-L1発現の有無にかかわらず、進行、再発または転移子宮頸がん患者における全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)が改善された。本研究は、米国臨床腫瘍学会年次総会2023(ASCO2023)で発表される。  

試験要旨

目的進行、再発または転移子宮頸がんに対する初回治療として、ベバシズマブを併用または非併用する化学療法にペムブロリズマブを追加する治療法を評価する
対象者全身化学療法による治療歴がなく、手術または放射線療法による根治的治療が不可能な進行、再発または転移子宮頸がん患者617人
結果・追跡期間中央値39.1カ月でのOSは以下のとおりであった。

 ・PD-L1複合陽性スコア1以上の場合:ペムブロリズマブ群28.6カ月、プラセボ群16.5カ月。

 ・PD-L1複合陽性スコアが10以上の場合:ペムブロリズマブ群29.6カ月、プラセボ群17.4カ月

 ・全例:ペムブロリズマブ群26.4カ月、プラセボ群16.8カ月

・全参加者のPFSは、ペムブロリズマブ群10.4カ月、プラセボ群8.2カ月であった。 

・ペムブロリズマブと化学療法の併用により、死亡リスクを37%減少させることができた。 
重要性これらの長期追跡結果は、この患者集団の初回治療における新たな標準治療の可能性として、ベバシズマブの有無にかかわらず、ペムブロリズマブと化学療法を併用することを支持している。

主な知見

試験参加者は、ペムブロリズマブと化学療法を併用する群とプラセボと化学療法を併用する群にランダムに割り付けられた(化学療法はベバシズマブ併用または非併用)。追跡調査期間中央値39.1カ月で、PD-L1発現やベバシズマブの投与の有無にかかわらず、ペムブロリズマブと化学療法の併用は、すべての参加者でOSとPFSの両方を改善した。これらの長期追跡結果は、本試験以前に得られた知見を裏付けるものである。

OSは、PD-L1複合陽性スコア1以上ではペムブロリズマブ群28.6カ月とプラセボ群16.5カ月、PD-L1複合陽性スコア10以上では29.6カ月と17.4カ月、全参加者では26.4カ月とプラセボ群16.8カ月であった。PFSは、全参加者において、ペムブロリズマブ群10.4カ月とプラセボ群8.2カ月であった。ペムブロリズマブと化学療法の併用により、死亡リスクはPD-L1複合陽性スコア1以上の患者で40%、PD-L1複合陽性スコア10以上の患者で42%、全患者で37%減少した。

グレード3以上の有害事象はペムブロリズマブ群で多くみられ、82.4%の参加者が経験したのに対し、プラセボ群では75.4%の参加者が経験した。ペムブロリズマブ群とプラセボ群で特に多かったグレード3以上の有害事象は、貧血(30.3%と27.8%)、好中球減少(12.4%と9.7%)および高血圧(10.4%と11.7%)であった。

「KEYNOTE-826試験以前は、この診断を受けた患者に対して、プラチナベースのパクリタキセル化学療法とベバシズマブ治療の併用または非併用が標準治療であった」と、筆頭著者であるクレイトン大学医学部婦人科腫瘍部門教授、アリゾナ州フェニックスに位置するHonorHealth Research InstituteのBradley J. Monk医師は述べた。「本研究は、免疫療法薬を早期に投与することで、二次治療と比較して実質的な全生存期間の延長が可能であることを実証している。また、われわれの結果は、ベバシズマブの適応とならない患者におけるペムブロリズマブの生存期間改善を示しており、アンメットニーズの高いこの患者集団に治療選択肢を提供する」。

米国では、子宮頸がん患者の約16%に転移があると診断されている。米国における転移子宮頸がん患者の5年相対生存率は17%である。世界的に、子宮頸がんは女性のがんの中で4番目に多く診断されており、女性のがん死亡原因第4位である。

ペムブロリズマブは、免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる免疫療法薬の一種で、T細胞の表面に存在するPD-1タンパクを標的とすることで効果を発揮する。PD-1は免疫系ががん細胞を破壊するのを阻止するため、PD-1を標的とすることで、免疫系ががんをより破壊できるようになる。一部のがん細胞はPD-L1タンパクを発現しており、これがT細胞上のPD-1タンパクと結合する。

ペムブロリズマブは現在、PD-L1を発現している進行、再発または転移子宮頸がんの治療薬として、ベバシズマブを併用または非併用する化学療法との併用で米国食品医薬品局から承認されている。本試験は、化学療法にペムブロリズマブを追加することで、がんがPD-L1を発現しているかどうかにかかわらず、この診断を受けた患者にとって有効な初回治療となる可能性を示している。

試験について

国際共同第3相臨床試験KEYNOTE-826は、全身化学療法による治療歴がなく、手術や放射線療法による根治的治療の対象とならない、進行、再発または転移子宮頸がん患者617人を対象とした。放射線増感剤による前治療は許可された。

患者は、ペムブロリズマブと化学療法(ベバシズマブの併用または非併用)を併用する308人と、プラセボと化学療法(ベバシズマブの併用または非併用)を併用する309人のいずれかにランダムに割り当てられ、最大35サイクルまで治療を受けた。参加者のうち、88.8%はPD-L1複合陽性スコア1以上、51.4%はPD-L1複合陽性スコア10以上であった。本試験の2つの主要評価項目はOSとPFSであった。

次のステップ

研究者らは、別途進行中の第3相臨床試験で研究されている局所進行子宮頸がんに対するペムブロリズマブの役割がさらに明らかになることを期待している。

  • 監訳 勝俣範之(腫瘍内科/日本医科大学武蔵小杉病院)
  • 翻訳担当者 河合加奈
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  • 原文掲載日 2023/05/25

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